1話
「一条先輩またです。」
「どう言うことだ?報告によれば怪異のレベルは3だったはずだ。10分やそこらで倒されるなんてあり得ないぞ。」
そう男は言う。
彼は一条誠。私たちの部隊の隊長であり、五行で司る属性は金だ。
私たちは陰陽寮に所属する陰陽師であり怪異に対処するために作られた怪異対策部隊、通称◯怪である。
そんな◯怪に10分前に怪異の出現情報が出て5人の討伐部隊が現場に到着したがそこには灰が残っているだけで怪異は影も形もなかった。怪異のレベルは1から5で数字が大きくなるほど怪異の強さも上昇する。レベル3の怪異といえ5人で対処しても30分はかかる相手なのだ。
「怪異を倒してくれるのは別に構わないけど誰なのかは気になるわね。」
そう女が呟く。
彼女は三守雫。頼れるお姉さんで、司る属性は水。
「まあ仕事が減るのは楽でいいんじゃないですか?」
「だよな。楽でいいわ」
彼らは藤木樹と日野太陽、司る属性はそれぞれ木と火である。
「野良の陰陽師でしょうか?」
「そうなら陰陽寮に是非とも欲しいわね。」
雫さんが言った。
「陰陽術って雰囲気じゃないんだよな。形跡からして。」
そう誠が言う。
「外国の人間ってことですか?」
「だとしても霊力を照合してもヒットしないんだよな。」
と誠が言う。
「未登録の陰陽師か密入国の外国人魔術師ねえ。そう聞くとちょっと胡散臭いわね。」
雫がそう言う。
怪異出現の報告を受けてから現場に向かうと灰のみが残っている現象が今月に入ってからもう3回目になる。先輩たちの言う通り怪異を倒してくれるのは別にいいのだが、そんな実力を持った人物が陰陽寮に所属していないことに驚く。陰陽寮は政府直属の組織であり陰陽師であるなら所属するメリットは十分にあるはずだ。外国人だとしても入国の際に魔術師ならば霊力を登録されるはず。
「調べてみるか?」
そう誠が言うと全員が頷いた。
「本当に父さまの魔術は便利でし。」
ネリがそう言う。
「まあね、伊達に長く生きてないよ。」
魔術で空間を歪めてワープをする。
結構難しい技術なんだけどね。
「それでここはどこでし?」
目の前にあるのはかなり大きい屋敷である。
その屋敷の裏門をくぐって庭に入っていく。
「勝手に入っていいんでしか?」
「いいんだよ、どうせわかってんだから。」
「彼女の言う通りだよ。親しき中にも礼儀ありっていうだろ?」
声がした方向を向くと青年が縁側に座っていた。
「出たな狸め。」
「この人は誰でし?」
「初めてまして。人造生命体のお嬢さん。僕は晴明。安倍晴明だよ。」
「父さまとはどんな関係でし?」
「長生き仲間ってところかな?」
晴明がそう答える。
「私とお前とは種類が違うけどな。」
そう私は答える。
「ふふ。そう卑屈になるな。」
晴明が言う。
「長生きってことは父さまと同じくらいの生きてるってことでしか?」
ネリが質ねる。
「こいつは私より長く生きている古狸だ。」
「そうだね。元号ができるちょっと前からだからざっと1400年くらいかな?」
晴明がそう答えた。
「1400年でしか?そんなに生きてて辛くないでしか?」
再度ネリが質ねる。
「そうだね。僕は目標も終わりもあるからね。君の父さま程辛くはないかもね。」
「そんな話をするために私を呼んだのか?」
「あー、違う違う。ちょっと用事があってね。」
晴明はそう言って懐から何か取り出した。
「ちょっと高校に行ってくれない?」