Do episode-006・・・最終話 代償と贈り物
桜がゆっくりと舞っていた。
拓也のジム「mirrorマイン」は、openして1年が経過した。彼は単なる痩身ではなく、心と健康を大切にすることをモットーに多くの人を支えていた。
「本当の意味で、自分を大切にしてほしいんだ」
彼の言葉にはあの日の記憶が込められている。
好恵が薬に染められ苦しみ、立ち直った日々、あれはただのダイエットじゃない。生き方そのものを選びなおす戦いだった。
そして今日、好恵、明里、和美がジムに集まった。
「おぉーっ・・・拓也、立派じゃん」
和美が感心したようにジムを見渡した。
「でしょー オーナーだからな俺」
拓也が自慢げに胸を張ると、明里と好恵は顔を見合わせて、笑った。
好恵もだいぶ元気になったまだ完全じゃないけど、趣味の読書・テニスをやり始めていた。
「私さぁーーっ、あの時怖かった・・・ 自分が自分じゃなくなって、何を好きで、何がしたかったのか、何もかもどうでもよくなってたんだよね」
好恵が呟いた。
「でも、みんなが支えてくれたおかげでここまで、戻れた、命をもう一度貰ったみたい」
力強い言葉が響き渡った。
明里が好恵の手をぎゅっと握り、和美も反対側から手を差し出した。
拓也が優しく言った。
「mirrorマイン、鏡に映る自分を好きになるように見つめなおせる場所、と言う意味を込めて名付けたんだぁよ」
好恵は涙があふれそうな思いを押さえて、笑った。
「うん、私テニスの試合したいなぁ」
明里も笑う。
「いいね、出よう試合 なまった腕を鍛えなきゃね」
4人は知っている、痛みの先に、苦しみの果てに、本当の贈り物があることを。
「自分を大切にする」という、何よりも尊いものだ。代償は大きかった。
それを超える絆と未来を確立した。
「またみんなで笑おう」
「あたりまえじゃん」
そんな笑い声がジムの中に響き渡った。
桜の花びらも風に乗って4人と一緒に喜んでいるようだった。