Do episode-003・・・小さな衝突
バイトの帰り明里は好恵に声をかけた。
「ねぇ、好恵・・・薬って、怖いと感じないの???」
好恵は少し驚いた様子で明里を見て、微笑んだ。
「怖いよぉ、でも変わりたい気持ちが強くて勝つのよ・・・」
その言葉に明里は何も返せず言葉を呑み込んだ。
好恵は確かにきれいになっていた。誰の目にも判るほどに・・・。
だけど、その笑顔にはどこか、ベールがかけられたようにも感じた。
数日後・・・。
バイト先で好恵と明里は些細なことで言い合いになる。
「そんな細かいこと、気にしなくていいじゃん」
「気にしないとだめよ、お店のルールなんだから」
売り場の整理について意見が反発した。以前の好恵は明里の意見を受け止めていた。とげとげしい言葉を返してくる。
和美が間に入り、なんとかその場は、収まったが、明里の心の中は胸騒ぎが大きく暴れていた。
(好恵の思考まで変わってしまったのかなぁ・・・薬のせい?)
その夜明里はネットで調べて知る。
痩身用の注射には、脳に作用する成分が含まれていること。個人差はあるけど、性格変化、幻覚・不眠・味覚障害など、深刻な副作用を引き起こす場合もあること。症状が出たときは直ちに使用を止めることが望ましい。
とあった。
(こんなの、知らなかった。でも受信するときは説明があるはずよね)
明里はスマホを持つ左手の震えを右手で押さえながら・・・しばらく呆然とした。
私、同じようにあの薬を投与していたら…想像するだけで鳥肌を呼び寄せた。
翌朝、明里はバイトに向かう足を止めた。
自分の容姿に関しては、冷静に向き合おう。小さく心に誓った。
同時に、"好恵を救わなきゃ"手遅れになる前に・・・
と思ったのだ。