Do episode-002・・・履けなくなったスカートの存在
季節は春へと向かっていた。明里はクローゼットの奥からお気に入りの花柄のスカートを引っ張り出してみた。
(久しぶりに履こうかな。忘れていたんだよね・・・)
ウエストに手をかけぐっと引き上げる。けど、途中までしか上がらない。
「えっ・・っ、うそでしょぉーーー・・・」
ウエストが大きくなっている事実に間違いはない。二年前は確かに履けたはずのお気に入りのスカート。
スカートが明里に反を向けているように感じた。
バタンとクローゼット閉めた。うっすら、もしかして・・・という、気持ちもあったけど、信じたくなかった。目の前で事実を受け止めることが、どうしようもなく、切なく、悲しみに包まれ、同時に、『痩せなきゃ』と言う思いが強くなった。
すっきりしない、もやもや感を持参しバイトに向かった。休憩時間また、あの話題が耳に運ばれてきた。
「好恵更に痩せたんじゃないのぉ~ 顔もちっちゃくなって、小顔女子じゃん すごい効果だね」
和美は驚きながら言った。
「そう1カ月で5㎏減ったわ・・・」好恵は嬉しそうに笑った。
「すごーい、やっぱり、あの・あの薬?」
「うん、そうだよ、でもね、副作用があるのよ、実は・・・さっ、だから、和美にはお勧めはできないかなぁ~」
「えぇーーーっ、副作用ってどんなの?」
和美は恐る恐る尋ねると、好恵は少し顔をしかめて、
「吐き気、頭痛、めまい、倦怠感、無気力、気分の不安定、自律神経の乱れ、不眠、あと、私は味覚がかわったり、自分が自分じゃないようなときを感じることがあるのよね・・・」
声がとても不安げに聞こえた明里だった。
(自分が自分じゃない…って、二重人格・・・???)
思わず明里は手を止めた。
その時ふと好恵と目があった。いつも明るい彼女の瞳の奥はどこか影のようなものが見え隠れしているように感じた。