村の変化、少女との出会い
リーナ達が戻って来てから特に大きな変化は無かった。
俺はいつも通り両親と畑仕事をして過ごしている。
ただ、村は徐々に変化しつつある。
まず村に国から支援金が出た。
勇者と聖女出身の村、という事で村の整備をするように、という理由だ。
これから相談して何に使うか決めるらしい、と父さんから聞いた。
そして、村に騎士とシスターが派遣されてきた。
騎士はアレンさんと言ってニコルの指導役+村の警備兵として派遣されたそうだ。
生まれは男爵家だけど貴族らしくはない気さくな人ですぐに村に馴染んだ。
シスターはサーヤさんと言って、リーナの指導役として派遣された。
見た目優しそうな女性だけど自分の事は余り語りたがらない人でなんとも不思議な空気を漂わせている。
新たな住人も加わり賑やかになりつつある中、俺は村の近くの森へとやって来た。
「う〜ん、なかなか見つからないなぁ……」
俺はこの時期に出るキノコを採りに来ていた。
鍋に入れたり焼いたりしたら抜群に美味いごちそうだ。
「今年は雨が降らなかったし少ないのかな……、ん?」
諦めて森から出ようとした時、馬車が通る音がしたので僕は思わず身を草むらに隠した。
暫くすると馬車が道の真ん中で止まり中から大きい麻袋がドサッという音と共に投げ出された。
麻袋を置いて馬車は元来た道を戻って行った。
「んーーっ!! んーーっ!!」
(えっ!? 人のうめき声っ!?)
思わず麻袋に近づいた。
麻袋はモゾモゾと動いている。
俺は恐る恐る麻袋を開けた。
「本気か……」
麻袋に入っていたのは口を塞がれ手足を結ばれ涙目で俺を見ている同い年の少女だった。
……もしかして誘拐?
でも、誘拐だったらこんな所に捨てないよな。
とりあえず俺は少女の口を塞いでいる布を解いた。
「大丈夫? 俺はこの近くの村に住んでいるイナヤて言うんだ」
「あ、ありがとうございます……、私ユリアナ・フィールと言います」
これが追い出された公爵令嬢との出会いだった。