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03 最年少のランクアップ

 Aランクの依頼は滞っているようで、高位魔物の討伐が多かった。

 一応、張り出されたものは全て覚えて、僕はそれぞれの目撃場所へ行って、魔物の気配を辿った。

 狩人や冒険者ではどうにもならない大型害獣を風魔法で倒していき、六件目の害獣を倒した時に、そろそろ帰る時間になった。


 冒険者ギルドに戻ると、倒したものの依頼書を剥がして、受付に持っていき、既に倒してきたことを伝えると「ありえない」と言われてしまったので、その死骸を出してみせた。

「受け付けてもらえます?」

 そう聞くと、コクコクと頷いて、依頼完了の支払いが行われた。


 魔法ギルドに戻ると、若手の人達が魔力込めを終えて出てくるところで、僕は丁寧に挨拶をした。

 若手の子と言っても、僕よりは年上の人ばかりなのだ。


 魔力がこもっている石が一つ残っていたので、慌てて呼び止めて「忘れてます」と追い掛けて、一人の女の子に渡した。

「何故私が込めたって思うの?」

「込められた魔力はそれぞれ違うので・・・」

「私には解らないわ・・・」

「意識して見るようにすれば、解るようになってくると思いますよ」

「そうなのね。ありがとう」


 僕は残された石に一瞬で魔力を込めて、終わらせた。


「冒険者ギルドで活躍したそうね」

 僕と同じ年で学校を卒業してから受付になったレイラはすぐに僕に絡みたがる。

 リリッカさん曰く「男として、求められているのよ」ということだった。

 同じ学校にいたはずなのに、僕はレイラのことは全く知らなかった。


「そうでもないです。何件か依頼をこなしただけです」

 リリッカさんにカードを渡すと、カードと僕を何度も見比べていた。

 けれど、何も言わずに手続きをして、カードを返してくれた。

 そしていつものように「お風呂に入りなさいよ!」と言って笑っていた。


 翌日も、害獣を倒してから、依頼書を剥がして、死骸と一緒に渡した。

 ただ、一匹だけ、目撃場所から離れている所にいたので、この依頼書の害獣かどうか解らないと、報告をした。

 明日、目撃証言のあった辺りをもう一度探してみる。と伝えた。

 それで了承された。


 A、Sランクの依頼をすべて片付けると、Sランクへと昇格した。

「最年少のSランクだね。おめでとう」

「ありがとうございます」


 魔法ギルドに帰って、魔力込めをしてギルドカードを渡すと、Sランクになっていることが知れて、魔法ギルドは大騒ぎになった。

「魔法ギルドでも最年少でのSランクだよ!!凄いわっ!おめでとうっ!!」


 リリッカさんに褒められて、照れている隙きに支部長に背後から持ち上げられて、絞め殺されるかと思うほど強く抱きしめられた。

 割と淡白な付き合いの魔法ギルドなのに、顔見知りの人は皆集まって、飲み屋へ初めて行った。

 いっぱい食べて、僕はジュースを飲んで、大騒ぎして、翌日、皆が頭を抱えていたので、回復魔法を掛けてあげた。


 人生で嬉しかった日は少しだけあるけど、昨日ほど楽しかった日はなかったと思う程に楽しかった。


 支部長に呼び出され、王都の魔法ギルドの本部へと行って欲しいと頼まれた。

 僕が首を傾げていると「魔法ギルドでSランクに上がった者が久しぶりだから、その表彰と、王都で解決できていないSランク系の依頼を片付けてほしんだ」

 支部長の言い分に納得できたので「行きます」と答えたものの「王都まで行き着けません・・・」と情けなく思いながら伝えた。


 支部長は笑って「王都へ連れて行ってくれる人達と一緒に行くように手配するから気にするな」と言われ、僕は支部長に感謝した。


 出発は一週間後、ハリーさんとべスリーさんとコリアンさんが連れて行ってくれることになった。

 ハリーさん達は今回の旅で、大きな仕事からは退くのだそうだ。

 魔力込めでもぼちぼちやることにすると笑って言っている。


「冒険者は動けなくなったら即、死活問題になるけど、魔法が使えると魔石に魔力込めの仕事なんかの小さな仕事があるから、魔法が使えて本当に良かったと思うよ」

「そうですね。僕もそう思って水晶の谷を探しに行きました」


 水晶の谷の話になって、どうして水晶の谷に行こうと思ったのか等の話をぽつぽつと話した。

 三人には僕の過去を知っても態度は変わらず、逆に「苦労したんだな」ともみくちゃにされた。

 少し嬉しくて、少し恥ずかしくて、ちょっと困った。


 魔物がポツポツ現れたけど、僕の風魔法で遠距離から一撃で倒していると、ハリーさん達に驚かれた。

「一撃かよっ!」

「危なげもないよね」

「水晶の谷で手に入れた力は銀貨一枚とは違うと聞いていたが、本当なんだな」


「えっ?それ、僕初耳です」

「噂だからな、本当かどうかも解らないことなんだが、自分の水晶を見つけた場合と、鑑定用の水晶では魔力の質や魔力量がまったく違うらしい。と言われているんだ」


「僕は銀貨一枚を払ったことがないので、どんなふうにするのか知らないのですが・・・」

「水晶の前に立って、手をかざすと、自分が使える色に光って、その光が、体の中に入って来るって感じだよ」


「自分の水晶を見つけたときはどうなるんだ?」

「よく似たような感じではあるんですが、根本的なことが違います。ただ、話してもいいのか判断がつかないので・・・」

「そうだよな・・・」


「間違って水晶の谷へ行くやつが増えたら、生きて帰ってこれるかも解らないからなぁ、知られない方がいいだろうな」


「入らずの森はそんなに危険なところではなかったですよ?」

「いや、本当に危険なところだから」

「俺も入ろうとしたことあったけど、森に拒否された気がして、進んでも進んでも入らずの森には入れなかった」


「そうなんですか?」

「ああ」

「僕の時は、獣の声もなく、シーンとしていて、怖かったのは今でも覚えていますが、簡単に入らずの森に入れました」

「もしかすると、既に銀貨一枚払って能力を持っている人は入れないのかもしれないな」

「なるほどですね!!」


「水晶の谷ってどんなところだったんだ?」

「大小様々な水晶が何万、何十万と転がっていて、自分の水晶を探すだけで、何日も掛かります。自分の水晶が呼び寄せられるとか言うのは嘘でした」

「へーそうなんだ」


「僕は諦めて、もうこのまま死んじゃうんじゃないかと思った時、空を見たくて寝転がったんですが、木が邪魔で、木の枝しか見えなくて、それにまた絶望して、横を向いたら、自分の水晶だと思う水晶が転がっていました」


「やっぱり、水晶が呼び寄せられているんじゃないか?」

「そうなんでしょうか?」

「今までなかったものがそこにあるんだから、呼び寄せられているよりか呼び寄せている?のかな?」

「う〜〜ん・・・そう言われればそうかも知れませんね」


 王都まで後一日という頃になると、魔物と大型害獣に出くわすことが多くなった。

「しばらく王都に来ていなかったけど、かなり荒れているみたいだな」

 僕が魔物と害獣を倒すと、マジックパックにハリーさん達が収納していってくれた。


「疲れてませんか?休憩にしますか?」

「休憩はしたいところだが、ここで休憩できない・・・」

 とべスリーさんが言うので、僕は結界を張って、皆さんに休憩してもらった。

 甘いお菓子を皆で分けて、コリアンさんがお茶を入れてくれた。

 

 結界の外には魔物と害獣がよだれを垂らしてこちらを見ているが、僕は気にしなかったけれど、ベイリーさんが「結界解除したら、俺達死ぬんじゃない?」と心配していたので、僕は結界の中から風魔法で魔物と害獣を倒していった。

 周囲に動くものがなくなり、外の景色さえ見なければ、穏やかな午後のお茶の時間だった。


 結界を解除して、魔物達をマジックパックに収納して、先を進む。

 休憩中にあらかたやっつけられたのか、襲ってくる害獣は少なかった。


 王都の城壁は閉じられていて、どうやって入ればいいのか僕には解らなかった。

 門を、石を使ってコンコンコンと叩くと、城壁の上から声がかかり「どうやってここまで来たんだ!!」と聞かれ「魔物を倒しながら来ました」と答え、人一人がようやく通れるくらいの幅で門が開けられて、一人ずつ順番に入っていった。殿(しんがり)は僕だ。


 ハリーさんが最初に魔法ギルドに行くと言って、魔法ギルドへ真っ直ぐ向かった。僕はハリーさん達の後ろを付いていくだけだ。


 ハリーさん達は知り合いが多いのか、魔法ギルドの中で色んな人に声を掛けられていた。

 本部長という人がやってきて「どうやって王都に入ってきたんだ」と聞かれ「魔物を倒して」と答えると、信じられないという顔をされて、そして笑われた。


 ハリーさんに呼ばれて行くと、ギルドカードを出すように言われ、ギルドカードを見せると「信じられない」とか「うそでしょう」何かの声が漏れ聞こえた。

 僕が知らない間に冒険者ギルドに行くことになっていて、べスリーさんに引っ張られ冒険者ギルドへと向かった。


 ハリーさんが倒した魔物と害獣の依頼書を剥がして、ハリーさんが忘れている分をコリアンさんが剥がすと、依頼書は半分ほどに減った。

 僕達は北門からやってきたけど、南門にも魔物と害獣がのさばっていて、出入りができない状況下にあるということだった。


 魔物達の死骸を取り出し、そこで本当に魔物を倒してきたのだと信じられ、僕のSランクが信じてもらえた。


 今日一日ゆっくりしたら、南の方の魔物と害獣を倒して欲しいと頼まれ、僕は軽く了承した。

 ハリーが「魔物を回収する役に二十人ほど連れて行った方がいい」と言ったが、話半分にしか聞いてもらえず、王都の冒険者五人と、ハリーさん達三人が一緒に行くことになった。

 出された食事は、僕達が倒してきた魔物や害獣ばかりで、食べ物の余裕がないのだと言っていた。


 僕が倒した魔物や害獣で食べ物の配給が行われ、街が賑っていたけれど、スラムの人達にまで配給は回わっていなくて、僕は冒険者ギルドに依頼した。

 僕が今まで貯めていた肉や野菜を出して、それで食事を作ってもらって、スラム街へと配給してもらった。

 たとえ一人でも多く生き残れるようにと願いながら。


 翌朝、まだ早い時間から南門から出て、魔物を狩って狩って狩り尽くした。

 昼の時間になって、冒険者の一人が、冒険者ギルドへ帰っていって、マジックバックを持った冒険者が十三人が新たに連れてこられた。

 ハリーさんが「だから言ったろ!?」と言ってガッハハハハハッと笑っていた。

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