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02 初依頼。水晶の谷へと鑑定用の水晶を取りに行きます。

 学校は楽しい。知らないことをいろいろ教えてくれる。

 途中からの入学なので、遡って先生が放課後や休憩時間にいろいろ教えてくれる。

 同じクラスの皆に追いつくまでに、半月も掛かって、ようやく横並びになった。


 学校から帰ると、宿題をして、予習と復習をして、魔力込めをする。

 お風呂に入って洗濯をして、ベランダに干して、眠りにつく。


 毎日同じことを繰り返して、僕は学校を卒業する年になった。

 魔力込めだけで僕はかなりの貯金が出来ていた。

 当然、部屋代や食費もちゃんと引いてもらっている。

 学校を卒業する少し前に支部長に「何処かに部屋を借りるか?」と聞かれたが「今の部屋をかしていてもらえるなら、今のままでお願いします」と僕からお願いした。


 支部長は快く了解してくれて、魔力込めは毎日続けていた。

 支部長が「依頼したい仕事がある」と言った。

「水晶の谷へ行って、これと同じ水晶を探してきてほしいんだ」

 と登録の時に使った水晶を僕の目の前に出して、真剣な顔で言った。


「水晶の谷へ行って帰ってきたのは最近ではユアックだけなんだ」

「そうなんですか?!」

「ああ。場所も解らないしな」

「そうですね。僕も迷子になりながら行きました」

「もう一度行けそうか?」

「正直解りません」


「だよな。だから失敗は失敗にはならないから気楽に受けてくれないか?十日経っても見つけられなかったら、帰ってきてくれてかまわないから」

「解りました」


「十日というのも、決まりごとの一つだから、もう一日くらいと、先に進むのは禁止だ」

「はい。だた、水晶の谷へ行けても、水晶が見つけられるかは解りません。僕は僕の水晶を見つけるだけで、五日位掛かりましたから・・・」


「いや、これと同じ水晶は簡単に見つかるはずだ」

「そうなんですか?」

「ああ、検査用だから、選ぶ必要はないはずなんだ」

 僕は首を傾げて「同じ水晶は二つとしてなかったんですが・・・」というと「それは自分の水晶を探しに行ったからだと思う」と言われた。


「鑑定用の水晶が欲しいと思って行ったら、鑑定用しかないはずなんだ」

「へぇ・・・そうなんですか。知りませんでした」

「これも予想だからな、よく解っていないことが多いんだ」


「鑑定用の水晶があるってことは、水晶の谷へ行ったことがある人はいるってことですよね?」

「何百年も前の人達だがな」

 何百年?!僕は驚いて「そうなんですか?!」「ああ、水晶の谷から生きて帰ってきたのは、ここ最近ではほんとにお前しかいないんだ」


「・・・解りました。頑張ります!!何個くらいとって帰ってくればいいんですか?」

 袋を渡され、「入るだけ入れて帰ってきてくれ」

「解りました!!」


 学校を卒業した翌日、僕は水晶の谷へと向かって出発した。

 街から離れて、入らずの森の入口まで来ると、水晶の谷をイメージして転移した。


「本当だ・・・鑑定用の水晶ばっかりだ・・・」

 僕は入らずの森の向こう側へ向かって歩き出し、入らずの森の向こうの国へと到達した。

 いつか他所の国への依頼もあるかもしれないから、転移できるように足を伸ばした。


 時間切れなので、水晶の谷へ戻り、鑑定用の水晶を袋に一杯に詰め込んで、狩猟の森の入口へと転移して、水晶を担いで、えっちらおっちらと歩いた。


 魔法ギルドに戻ると、支部長はホッとしていて、リリッカさんは涙を浮かべていた。

「ただいま戻りました」


 支部長の部屋に案内されて、水晶を支部長に渡すと「こんなに持ち帰ることが出来たのか?!」と喜んでくれた。

「鑑定用が欲しいと思っていくと、本当に鑑定用の水晶しかありませんでした。驚きました」


「そうか。今日は久しぶりにお風呂に入って、ゆっくりとするといい。ギルドカードをこっちに」と言われたので、カードを渡して、僕はいそいそとお風呂へと入りに行った。

 前は毎日お風呂に入ることも面倒だと思っていたのに、今ではお風呂に入らないなんて考えられないようになっていた。


 ザブザブと洗濯をして、自分の体と頭を綺麗にする。

 お風呂から上がって、コーヒー牛乳を飲もうとして、カードを渡したままだったことを思い出して、受付へ行き、カードを受け取った。そこに入金されている金額を見て、目が飛び出るかと思った。


「支部長・・・」

「正当な報酬だから受け取りなさい」

 僕はもう仕事をしなくても暮らしていけるんじゃないかと思うほどの金額だった。

「ギルドの寮を出たら、二〜三年しか暮らせない金額だよ」

 人が暮らしていくのって凄くお金がかかるんだと初めて知った日だった。



 コーヒー牛乳を飲むことなどすっかり忘れて、部屋へ戻って入金された金額を見る(ぜろ)が八個並んでいた。

 支部長はあんなふうに言っていたけど僕、やっぱりもう一生働かなくてもいいんじゃないかな?

 

 仕事に出ていた間に空の魔石が貯まっていることは予想していたので、魔力込めをすべて終わらせてから眠りについた。

 カードを渡すと、魔力込めの報酬が入金された。


「僕が受けれる仕事がありますか?」

 リリッカさんは一枚の用紙を僕に差し出した。

「この依頼を見て、受けれそうだと思ったら受けてほしいんだけど」


 依頼の内容を読むと、狩人の森に魔物が住み着いていて、それを倒して欲しいと言うものだった。

 住処の大凡(おおよそ)の見当はついているということだった。


「やれるかどうか解りませんが、頑張ってみます」

 と返事して、僕はその魔物の棲家と思える場所へ行く準備を整えた。

「では行ってきますね」

「気をつけてね!!」


 魔物の住処に転移すると、ちょうど魔物が獲物を捕まえて食事しているところで、僕は風の魔法で首を切り落とした。

 魔物の血抜きをして血は炎で燃やし尽くして、帰路に就くにはまだ早かったので、狩猟の森で、大型の魔物を選んで、倒していった。


 貯まったお金で買ったということになっている、自分で作ったマジックバックに魔物と大型の獣を収納して、帰路へと就いた。


 魔物と、大型の獣の肉を一匹分出すと、それからは大騒ぎになって、魔物はすぐに本部に送られ、魔物の生態を研究すると言っていた。


「一刀両断か?何の魔法だ?」

「支部長!!使ったのは風魔法でした。ちょうど獲物に夢中だったので、風下からそっと首を落としました」

「そうかっ!!」

 僕の肩をバンバン叩き「魔力込めもよろしくたのむな」と頼まれた。


 お風呂に入る前にさっと魔力込めをして、鼻歌交じりにお風呂へと入った。



 毎日その日を生きることで精一杯だった僕は、明日を夢見られるようになって、明日のことを考えるようになった。

 僕はもう、この場所を離れるべき時が来ているのかもしれない。

 魔力込めをするべき僕よりも小さい子達もいるだろうと思った。

 

 その事を支部長に相談すると、笑って、若いのが魔力込めをして、間に合わないものをユアックがしているんだと言った。

「だからここから出ていきたいなら出ていけばいいが、つまらないことは気にするな」

 そう笑っていた。


 支部長だけでは信用ならなかったので、リリッカさんにも聞くと同じ返事が帰ってきた。

「ユアックくんも恋をするお年頃になっているんだから、色々考えて、決断するといいよ」と笑顔で言われた。

 リリッカさんは三年前に、中堅の魔法師さんと結婚していた。


 寮からいなくなったことは寂しかったけれど、弟のように未だに可愛がってくれている。

 待望の赤ん坊が出来て大きなお腹をしていた。

「大きなお腹で苦しくないのですか?」

「実を言うとちょっと重たい」

 嬉しそうに言うので、重たくてもうれしいということなのだろうと思った。


 魔石に魔力を込めて、その日はのんびりとすることにした。

 

 魔法を心いくまで堪能しようと思ったら、部屋を借りた方がいいんだと思う。転移し易いし、色々と人の目を気にしなくて済む。

 でも、僕は料理は全く出来ないんだよね・・・。

 夜営で食べれるような、火で炙って、食べるくらいしか出来ない。

 今の美味しいご飯をあきらめられなくて、寮を出ることは諦めた。



 部屋のベッドに寝転んで、水晶の谷へと転移していた。

 同じものは二つとない、自分だけの水晶を探しに。

 僕のものはもうないはずだけど、もしかしたら見つかるかも知れない。

 僕の足りない能力を足してくれる水晶がまだあるかも知れないと思ったのだ。

 僕の水晶は虹色だったけど、光と闇の魔法が使えない。この二つが使えるようになると、出来ることがもっと増える。はず。


 水晶の谷を見渡して、自分の水晶がないか探す。

 闇と光の水晶があるはず。

 黒っぽいものがあるところを重点的に探してみる。

 やはり見つからない。

 見つかるような気がしていたのは気の所為だったのだろうか?

 もうそろそろ寝る時間だ。

 明日に響くような事はできない。


 水晶の上で胡座(あぐら)をかいて座っていると、なにかに引っ張られた気がした。

 そちらを向くと黒と闇と白金と白色の四色の水晶があり、そのその四つ全てが自分のものだと解った。

 一つずつ両手に握ると、いつの間にか消えて無くなり、それを四度繰り返すと、また魔法を放出することになった。

 今までよりも魔力が強くなり、足りない部分が全て埋まったような感じがした。

 

 ベッドの上に転移して戻り、僕は満足の眠りについた。


「魔法ギルドだけじゃなくて、冒険者ギルドにも登録しようかと思っているのですが、どう思いますか?」

 支部長に尋ねると、「魔力込めをちゃんとしてくれるなら、こっちは文句を言えないな」

「そうですか。だったら冒険者ギルドにも登録してみようかな」

「死ぬなよ」

「気をつけます」


 冒険者ギルドへ行き「新規登録で」というと、身分を証明するものはあるかと聞かれ、魔法ギルドのカードを渡した。


 冒険者ギルドの受付がザワっとして、冒険者登録が済んだ。

「カードは両方のギルドで同じように使えます。依頼はボードに張ってあります。ユアック様は魔法ギルドで既にAランクになっておられますので、冒険者ギルドでも、Aランク、Sランクの依頼が受けられます。勿論、Aランクより下位のものも受けられます」


「解りました」

「A、Sランクのボードはあちらになります」

 と、右側の人だかりがあるボードの前ではなく、左側のボードが差し示された。

「ありがとう」

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