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第二十一話 予想外の遭遇

 再び目を開ければ、最後に魔法書に記録した宿にいた。

 ホームズはすぐに行動を開始する。

 カルマの凱旋式では彼に見つかりやすいように手を振り、次は未来を知らせるためにゼロと遭遇しなければならない。

 わざとらしく前回遭遇したスカーズを尾行して裏路地に誘い込み、相手が上から襲い掛かってきたところでホームズは封印を解き一瞬で敵を制圧する。


「ほぅ、尾行にわざと気づかせて人通りがないところに敵を誘い込み制圧する。見事だ」

「それどころじゃありません。敵の狙いがわかりました。奴らはカルマを殺すつもりです」

「なに? まさかお前戻ったのか?」


 敵に聞かれぬようホームズは先に敵を締め落とす。

 そしてホームズはうなずいた。前の時間軸で起きたことをすべて話し、ゼロは考え込む。


「そんなことがあったのか。よくやった」

「このままでは両国は戦争し崩壊します。中止しますか?」

「いや、敵の策を知っているこちらは今有利な状況だ。この機にスカーズをせん滅する」

「危険では?」


 前の時間軸のこともありホームズはゼロの作戦に怪訝な顔をする。

 もし失敗すれば大勢が死ぬからだ。今も未来が変わり、どこかで白面が見ていれば作戦を変えている可能性がある。

 しかしこれがチャンスだというのはホームズも理解しているつもりだ。


「危険でもこれはチャンスだ。ここを逃せば次いつ白面を捕まえることができるかわからない。理解しろ」

「わかりました。僕はどうすればいいですか?」

「お前は今すぐ城に向かいカルマ様と合流しろ。お前の話では彼は城を抜けるらしいから簡単に会えるだろう」


 ゼロの指示にうなずきホームズは城に向かう。確かにゼロと会ったあと、すぐにカルマと出会った。ここで城内に入ることができれば、犯人へと一気に近づくことが可能だろう。

 前回の行動パターンと同じように動いていると肩をたたかれる。


「やっと会えた。カル、マ? え?」


 振り返った人物は確かにローブをまとっていた。カルマと思って振り返るがそれは違った。

 銀色の縦ロールがわずかに見えて、金色の瞳にはホームズが映っている。性別も女性で身長も高く、ローブの上からでもわかるスタイルの良さだ。

 ホームズは慌てて彼女の手を引き路地裏の広めの物置に連れていく。


「きみはこんなところで何をしてるんだ?」

「あなたを探してたの。よかった。簡単に見つかって」


 女性はフードをとる。長い銀髪がなびき女性でも見惚れてしまう美貌だ。だがその背中には彼女に似合わない布に包まれた巨大な何かを背負っている。

 黒い柄だけが見えて、彼女が前の時間軸で何を振るっていたかをホームズは思い出す。

 おそらく宝剣ライヘンだろう。ムサシの宝刀ムゲンと同じ無限の魔力を生み出す剣だ。

 そんな剣を使えるのはハロイドにただ一人、ハロイド王国の姫ベラミー・ハロイドだ。同時に前の時間軸でカルマ暗殺の濡れ衣を着せられ、大勢を殺した人でもある。

 彼女は安心したようにほっと息をつきホームズの手をぎゅっと握る。ちなみにホームズの秘密を知る人であり、同じ剣術学校を卒業した親友でもある。

 だがホームズはベラミーのハイライトが消えた瞳を見て冷や汗を流す。


「ねぇ、さっきカルマって言ったけどどういうこと? なんで間違えたの? もしかして前の仕事でムサシに行ったとき何かあった? 私の親友に手を出したなら――」

「落ち着くんだ。そういう関係じゃない、よ……」


  ベラミーは次期国王で周囲の重圧に囲まれながら育った。王族ゆえ弱みを見せれず、王族に取り入ろうとする者たちや、畏れる者たちのわかりやすい態度に彼女は人間不信になっていった。

 そこに現れたのはホームズだ。純粋にベラミーの剣術を評価してくれる彼女は、ベラミーにとっては希少な存在で、歳も同じなためすぐに仲良くなった。

 だが唯一の親友ということもあり、ベラミーのホームズへ向ける想いはかなり重かった。

 前の時間軸でカルマに告白されたことを思い出したホームズは顔を赤くする。

 それを見てベラミーは手を離して笑顔を向ける。だが言いようもない嫌な予感をホームズは感じていた。


「私の唯一の親友にあの男は手を出したんだ。ふーん、試してくるね」

「やめるんだ! 彼とはそんな関係じゃない!」


 ムサシの最強が誰かと言われたら刀神ヨシツネと誰もが答える。逆にハロイドの最強と聞かれたら誰もがベラミーの名前を挙げる。それほど彼女は強かった。

 そんな人がカルマとぶつかりあえば大惨事になる。

 ホームズが必死にベラミーの腕を引っ張る。だが彼女は女性とは思えない力でホームズすら引きずり、路地から出ようとする。

 このままではここは戦場になる。何かないかと考えていると。


「そ、そういえばきみはなんで僕を探してたんだ? 何か話したいことがあったんだろ」


 ホームズの言葉を聞いて何かを思い出したベラミーはようやく止まる。

 ほっとしたホームズの前にベラミーは手紙を出した。


「今日ここについて私に与えられた部屋に行ったら手紙があったの。読んでみて」


 さっきの様子とは一転してベラミーの目は恐怖が浮かんでいる。ホームズは言われた通り中の手紙を読む。その内容は。


『本日は宝剣の儀式への任命おめでとうございます。ささやかながら血の晩餐をご用意いたしましたので心よりお楽しみください』


 差出人の名前はどこにもない。

 血の晩餐とは前の時間軸で起きたことを示唆しているのだろう。つまりこれは脅迫文だ。


「これって誰かに見せた?」

「父に見せたけど本気でとりあってくれなかったわ。私も半信半疑だし」

「いやこれは本物だ。筆跡でばれぬようタイプライターで書かれている。しかも指紋をふき取ったあともある」

「そんな……! 私どうしたらいいのホームズ?」


 ベラミーは泣きそうな顔をしてホームズを見る。おそらく前の時間軸でもホームズに相談しようとしたのだろう。

 だが運が悪く遭遇できず、彼女は一人でこの悩みを抱えたまま事件が起きた。

 この時間軸ではそんなことは起こしてはならない。そして心配そうな顔をするベラミーを見上げてホームズは優しい笑みを浮かべる。


「大丈夫。僕が絶対に血の晩餐なんて起こさせないから安心して」

「ありがとう。大好きだよホームズ!」

「ちょっ! 苦しいってば!」


 感極まって抱きしめられたホームズはベラミーの胸に顔を埋める。大きな胸により顔をふさがれ、息ができずホームズは苦しそうな声を出す。


「あぁ、やっぱりホームズは小さくてかわいいわね。いいにおいもするし」


 なぜか抱きしめる力が強くなり、ホームズの耳にはベラミーの心音が早くなるのが聞こえる。さすがに限界なのでホームズは無理やり拘束から逃れて大きく息を吸う。

 名残惜しそうなベラミーをよそにホームズは次の行動を考える。

 この脅迫文をゼロに知らせる必要もある。さらにカルマと合流もしなければならない。

 カルマのことを考えているとまた告白されたことを思い出し、ホームズは顔を赤くする。


「うがぁぁぁぁぁぁぁ! 忘れろ忘れろ忘れろ! 今は事件のことに集中しろホームズ!」


 恥ずかしさを紛らわすためにホームズは頭を抱えて叫ぶ。

 その叫び声は周囲に響いていて周辺の人が窓から路地裏をのぞく。ベラミーは慌ててフードをかぶり直す。自身の行いに気づいたホームは、はっとして恥ずかしそうに帽子を深くかぶる。


「どこの馬鹿が叫んでるのかと思ったらお前かよ」

「は? 馬鹿? ホームズのことを馬鹿にする奴は許さないわよ」


 ホームズを馬鹿にされたベラミーから怒気が漏れる。だがホームズは聞いたことがある声に振り返った。

 そこには前の時間軸と同じようにフードをかぶったカルマがいた。

 彼の顔を見てホームズは心音が早くなるのを感じて顔が熱くなる。 

 その横顔を見て何かを察したベラミーは背中の大剣を問答無用で抜く。


「やっぱり私のホームズに手を出したのね」

「「え?」」


 ホームズとカルマはそろって素っ頓狂な声を出す。

 ベラミーのほうを見れば瞳のハイライトが消えていて、理性がない狂戦士のようだった。

 ホームズが声をかけるよりも早くベラミーはカルマに切りかかる。

 カルマも慌てて背中にある棒を構える。布がほどかれ姿を現したそれは、漆黒の長い刀身が特徴の大太刀ムゲンだ。それで彼女の一撃を止める。

 無限の魔力を含んだ宝剣と宝刀同士のぶつかり合いにより周囲に風が吹き荒れる。

 帽子が飛ばないようにホームズはそれを抑える。そして目の前に広がる光景を見て言葉を失った。

 ベラミーが強いのは知っていたが、カルマは彼女の剣についていっていたのだ。二人とも剣筋が見えない速度で切り結んでいる。


「ベラミー、これはどういうことだ?」

「ホームズにふさわしい男かためしたいだけよ」

「そうか。じゃあ負けるわけにはいかねぇな」


 最初は戸惑っていたカルマは大太刀に加え、腰に下げた妖刀を鞘に入れた状態で抜く。長さが違うのに器用に扱いベラミーを追い詰めていく。


「さすがは刀神の息子ね。でも私も剣聖の娘なのよ!」


 ベラミーは片手で重い大剣を軽々と振るう。攻撃を受けても前に進む様は剣聖というより、狂戦士のようだった。

 一撃一撃が重いベラミーに対し、カルマは手数で攻める。

 どれだけ傷を負っても戦闘を止めないベラミーに、次第に傷が少ないカルマの方が苦しそうな顔をする。互いに息切れして一度攻撃を止めて距離を離す。


「まだ満足しないのか?」

「するわけないじゃない。ホームズはね、私にとって唯一の親友なの。あんたなんかにとられたくない!」


 息を切らしながら問うカルマに、泣きそうな声音でベラミーは答える。

 しかしカルマにもベラミーと同じ譲れない想いがある。


「俺たちだってホームズに救われた。あいつの隣は誰にも譲る気はない」


 互いに決着をつけようと二人は踏み出す。

 常人が間に踏み込めばけがでは済まされない空間だ。だが戦いの余波でこのままでは大勢が集まる。

 どこにスカーズの構成員がいるかわからないのに、ホームズがカルマたちと接触したと情報が漏れるのは避けたかった。

 だからホームズはリボンをほどき封印を解く。そして二人の間に割り込んだ。

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