第十八話 黒鉄城城下町連続殺人事件 閉幕
センシとの戦いを終えてカルマは刀を鞘に戻す。その瞬間、闇夜に不釣り合いな銃声が鳴り響き、カルマの頬をかすめてセンシの額に穴が開く。そのまま彼は後ろ向きに倒れた。
「狙撃や! 物陰に隠れぇ!」
「あそこだ! あそこに狙撃手がいる!」
瞬時に狙撃場所を特定しホームズが指さす。そこはカルマの部屋だ。
ゼニガタが部下に指示を出し追跡の指示を出す。長距離からの狙撃で現場に行っても何も残っていないかもしれない。
それでもホームズは狙われる危険を無視してまっすぐと狙撃場所に向かう。
廊下を走り、階段を駆け上がり、狙撃地点と思われる場所につく。
ゼニガタに指で襖を開けるように指示を出し、ホームズはいつでも撃てるように銃の引き金に指をかける。
襖が開け放たれた瞬間、ホームズたちは部屋に流れ込み、銃を構える。
「動くな!」
しかし部屋の中にはもう誰もいなかった。
「くそっ……! センシは駒だったか」
やっと両親を殺した奴を捕えることができたと思っていたのに、その犯人はただの駒だった。しかも捕まえるどころか口封じに殺された。
なんの成果も得られなかったホームズは悔しそうに歯を食いしばり、拳で壁を殴る。
それから一夜が明けた。あれから狙撃はなかったが、城下まで捜索範囲を広げても犯人を捕らえることはできなかった。
城内にいた侍がなぜ狙撃手に気づかなかったのかというと、気絶させられていたようだ。
しかしセンシが死んだことで辻斬り事件はぱったりと止んだ。
ホームズは一応事件を解決したため帰国しなければならなかった。城の外までの見送りにカルマとトモエが来ている。
「世話になったね。色々助かったよ」
「礼をいうのはこっちのほうだ。お前のおかげで辻斬りを止めることができたからな」
「私も助けてくれて本当にありがとうございました」
「アカメの探偵として当然のことをしたまでだよ。それに僕はまだまだだ」
ホームズは暗い雰囲気をまとって大きなため息をつく。事件を止められたとはいえ、犯人を捕らえることができなかったことを引きずっているようだ。
「ご先祖様ならもっとうまくやってたさ」
「過去の英雄となんて比べんな。少なくとも俺たちや国民にとっては名探偵で勇者だったぜ。俺の疑いもはらしてくれたしな」
「そ、そういわれるとなんか照れるね」
ホームズは恥ずかしそうに目線を二人からそらして頬をかく。
少し自信を取り戻したホームズを見てカルマは内心ほっとする。
「そういえばお姉さまは来週の宝剣祭にはいくのですか?」
「ん? ああ、もちろんさ。いろんな美味しいものを格安で食べれるからね」
「相変わらず食い意地がはってるな。でも最後の締めはしっかり見て行けよ。今年の宝剣の交換は俺がやるからな」
「それってやっぱり将軍がまだ目を覚まさないから?」
宝剣の交換は去年までヨシツネがしていた。しかし彼はセンシに負わされた傷が原因で、今なお眠り続けている。そのためカルマがするしかないのだ。
悲しそうに聞くホームズにカルマはずっと持っていた袋を突き出す。
「どうせ今年からやる予定だったんだ。気にすんな。ほら、これやるから帰りに食っとけ」
袋の中にはみたらし団子がある。美味しそうな匂いにホームズの頬が自然とほころぶ。
「ありがとう。じゃあまた会おうね」
「ああ、またな名探偵」
こうして事件はいったん幕を閉じ、ホームズはムサシを去る。
帰りの竜車でホームズはゼニガタにもらった写真を見る。
昨日の狙撃場所を撮ったものだ。空になった薬莢が手すりに置かれ、その横には手すりの木を彫った十字傷がある。その場所からは昨日ホームズたちがいた場所が見渡せた。
やろうと思えばセンシだけでなくカルマやトモエも狙えただろう。
もちろんホームズを撃つことも可能で、強制的にやり直しをさせることもできたはずだ。それをしなかったのは、狙撃手にとってセンシは使い捨ててもいい駒だったという意味だ。
そしてこの十字傷をホームズは見間違えるわけがなかった。大きさや角度、傷の大きさ。そのすべてが因縁深い十字傷に一致している。
まるでこちらを挑発するやり方にホームズは悔しそうに拳を握りしめる。
「次は絶対に逃がさない……!」
燃え滾る怒りを胸にホームズは竜車の窓から見える空を見る。




