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プロローグ-終わりの始まりを始めよう-

季節は夏。

日中だけでなく、放課後までもその暑さは猛威を振るう。

そんな時期の学校の放課後。

窓から差し込む夕日は教室を茜色に染めていた。

そこには男女2人が立っていた。


1人は、明るくてザ陽キャな女子。

もう1人は、先ほどの女子とは不釣り合いなほど弱々しく、見た目が酷い。何がって。まぁ。。青くなくて未来のロボットでもない狸というか。ビックマムならぬビックダディ的な?ただ、ビックなのは身長ではなく、その豊満な溢れんばかりのトロである。

要するには、贅肉だ。


見た目から想像の通り、体臭も最悪だ。

それは当時の自分自身も認めて諦めていた程だ。

顔も10代では考えられないほど老けていて、ほっぺはパンパンマン。髪は汗で湿ってツヤってる。ジェル塗りたくったかってほどに。


本題に入ろうか。


俺はこの日告白した。


緊張と分かりきっている返事、何よりもこれから気まずくなりそう(主に俺が)と言うのを理解しているからこそ、口が思ったように動かない。

でもこの日の俺の覚悟は、人生で2番目くらいには本物だったはずだ。


意を決して言う。


好きです。付き合って下さいと。


俺は大き過ぎず、小さ過ぎない声で言ったはずだ。

はず。と言うのは俺の普段の声が小さ過ぎるのと滑舌が悪いから、実際どうなのか自分では判断できないからだ。


俺の目線は、毎日掃除している教室の床にホコリが結構あるのがわかるくらいの時間落とした。


返事がない。


本来ならここで、いや、もっと前から気付いておくべきだった。


いくら待っても返事がなかった為、よく分からない恐怖心を無視して顔を上げた。


そこには笑いを堪えるのに必死な姿があった。


その表情はまるで某笑ってはいけない24の某まつー。。


コホン。まぁ彼の表情を想像してくれ。


当時の俺は緊張とかで、全く訳がわからんかった。

けど、次に来る言葉で俺は。。。


「あんたガチィ?w」「超ムリw」


こんなのはハローと同義だ。


「てか、あんた毎日鏡見てるw?」「ただでさえ顔があれなのにw見た目もあれでw」「しかも臭いし」「あんた良くそれで学校来れるよねアタシら、クラスというか全校生徒教師含めて迷惑してんの!」「てかさ、それだけならまだしも、何?アタシと付き合いたい?これ以上笑わせないで!」「テメェなんかが学校来れてるだけ、みんなに感謝しろっつーの!」「まぁ、告らせるよう仕向けたのはアタシだけどねw」「何か期待してたのかも知んないけど、諦めなwあんたと恋愛とか誰1人無理でしょw」


もう話しかけて来ないでね。

そう言って去って行った。


言われたい放題だった。


で、当時の俺が、これだけ言われて抱いた感想は。


所詮3次元なんてこんなもんか。


それだけ。

悔しいとか。

涙が出て云々とか。

見返してやる!とか。

そんなのはラノベのざまぁ系で間に合っている。


ただ、悲劇はその日の23時に起きた。


帰宅後、推しの彼女(ここでの彼女は She ではない方)に(物理的に)囲まれながら、俺の半身と言っても良いスマホで本人公認の切り抜き師の切り抜き動画を見ていた。因みにこれを見終わったら、元動画も見る。

二度美味しいとはこの事。

途中晩飯や入浴を挟み、23時になった。


この時間は推しであり、彼女(自称)の赤花アポロの配信時間である。今日は何故か疲れた為、癒しをいつも以上に求めていた。


焦らしてくる待機画面。

ちな、Twitterも同時にチェックする。

何かトラブルがあればすぐ分かるからだ!


しかし、ただ大人しく待つ訳でもない!

チャット欄。

ここでアポロを推す同志やこれから推すかもしれない御新規さんが気兼ねなく話す事ができる。


けど、偶にスラムと化す事もある。


アポロに対してのライン越えな絡みもそうだが、視聴者同士での言い争いにマウント合戦。。


他にもあるが。


何が言いたいかと言えば、彼氏(痛いまでの自称)である俺がそれを未然に防がねばならん。因みに、同志やネットではそれなりに有名(痛いガチ恋勢として)。何よりも、アポロ自身に認知されていると言う。。まぁ要するに破滅願望宜しく自滅特攻を常習的にやった男の末路である。配信ではそれを笑いに変えてくれる辺り、優しいと思うが。


そんな。お前誰に語ってるの?って言われるような事を脳内で繰り広げていると、画面が切り替わり、配信が始まる。

画面の向こうには、ピンク色のショートボブの美少女がそこにいた。服は架空の高校の制服。季節なのか流行なのかセーターを上に着ているのも良き!

準備が整い、アポロが開幕チャット欄の同志と息を合わせていつもの挨拶を言い放つ。ラグは勿論あるが、それは指摘しないのが同志達とアポロの約束事である。


「べ、別にアンタ達の為に来てあげた訳じゃないんだからね!!」


2dの立ち絵の表情は頬を赤らめ、目は鋭い。

だけどそこが良い。


今日の雑談配信の内容はどうやら恋バナ系らしい。

珍しいなぁ。と思いつつも、節度を持って揶揄うチャット欄に百面相をしているアポロがこれまた可愛いのなんの。


だが、俺はエンジェルフォールの如く流れるチャット欄の中に一つだけ、何故か胸がズキリと痛むものがあった。

内容はなんて事ない。普通の『好きなタイプを教えて下さい』と言う、恐らく新規の視聴者からのコメントだった。


ただ俺も含めた古参の視聴者は、意外にもアポロの好きなタイプなど聞いたことがなかった。


だからだろうか。


チャット欄が騒がしい気がする。


緊張する。偶に、現実を見ろと言わんばかりに、アプリが重いからか、スマホの画面が暗くなって、俺の顔が映る。

すぐにタップすれば落ちる事なく無事に配信画面に戻ることができる。ただ、変な恐怖心がチクチクと何かを訴えてくる。なんなのだろうか。


そして俺は、彼女の言葉に我を失う。


『好きなタイプ?そうねぇ〜。まぁ見た目で言えば、スマートって言うか、腹筋は割れてて、ほんのり筋肉質ではあって欲しいはねぇ〜。後は、匂いとか身だしなみよね!みんな清潔感意識しなさいよね!どーせ、アンタらイベント以外家に篭ってるとか、学生や社会人でも身だしなみそっちの気で生活してるのが大半でしょ!特に男子!』


凛として、それでいて可愛いらしい声がイヤホンから放たれ、脳が震える。失礼、鼓膜だ。


『それに』とまだ彼女の話しは続く。


『コメントにあったけど、清潔感だけありゃ良いってもんじゃないんだからね!特に、俺腹が出てるけど何とかなるとか思ってるそこのアンタ!差別がなんだ!多様性がなんだ!それでも敢えて言うわ!私と恋愛するならまず、デブはお断りよ!』


俺は思わず叫びそうになる。が、何とかして呑み込んだ。

俺は頭を抑えて考える。

かなりのショックだった。だがしかし、舐めるな!これしきの事など想定外である筈がない!何年彼氏(自称)をやってきたんだ!落ち着け俺。俺はやればできる!多分。。


努力して身につけられたのは、アニメ系や特撮系だ。


ダイエット。


経験はある。結果は出た事ない。

そもそも結果が出るまで続かなかった。


「俺は。。」


その続きは出なかった。

ふとチャット欄を見ると俺と似たような反応の奴が多かった。アンチやらなんやらで荒れると思ったが今は大丈夫そうで安心した。けど、と疑問に思う


何故、そんなリスクを冒してまで言ったのか。

わからない。


わからないが、俺はここで大義名分のようなものを見つけた。まぁ大それたもんじゃないけど。


アポロはリスクを冒してまで言った。

誰に?大きなお友達(色んな意味で)に。


なら俺は悩む暇も考える暇もない。


だって、彼女(自称)が炎上覚悟で言ったんだ!

彼氏(いい加減痛い)である俺がそれに応えるのが当然だ!

男、夕坂湊人はここに誓おう!


俺は慌ててコメントを打つ!

同志達が狼狽えている中俺は高らかに宣誓する!


『アポロがそこまでして言うなのなら、デブスと呼ばれた俺が、シックスパックと清潔感を手に入れてみせる!』


ちな勿論赤スパな?


するとどうだろうか。

俺の赤スパを読み上げたアポロは、ツンは残しつつも声はすごい嬉しそうだったのだ。


それと同時に始まる赤スパ祭り。

さながらケイリッドで行われる某フェスティバルだ!

ちな俺は挑戦を受けて立つ側な?


狼狽えていた同志達は文字列からも分かる程にやる気が漲っていた。そこに男女の差はない。


そして、次に次に増える赤スパの札束に狼狽えてるアポロは物凄い事になっていた。


めっちゃ可愛い。


それと同時に俺の赤スパの金額はどんどん越されていくのもわかった。まぁ中坊だし。と言い訳はできるが。

それでも気分は良かった。


まるでアルゴノゥトになった気分だ。


まぁ全然違うけど。

分かってるから!

ファンの皆様振り上げた拳はお納め下さい!!!!!!


そして配信は終わった。

ちな終わりの挨拶もちゃんとやった。


それから俺は、直ぐに調べた。

何を?

勿論、シックスパックを手に入れる為の勉強だ。

先生は勿論、ダイエットもデブエットもプロな!

ボディービルダー大先生だ!


俺にはもう、お願いマッスルしかないのだ。


ダンベルよりも女子の手が握りたい先生!

お願いしまーす!!!!!!


今日から俺は、こうして自分の体と向き合うことになった。


だが俺は翌日、フラれたことが学年中に知れ渡り、覚えの無い罪までおまけに頂いた。


が、どうってことない。


俺には友達がいない。

慕ってくれる後輩もいない。

心配してくれる先生もいない。


入学してから2年間、私語を交えた会話などしたことない。

俺は帰宅部だから後輩と関わった事がない。

教師と会話など面談以外ない。


最近だと好きな子もいない。

いなくなった。盛大にフラれたからな。

そう。俺には失う物がない。


というかそんなことよりも、こっちはシックスパックで忙しい!!


こうして俺は茨の道を進んだ。


全ては俺の彼女(自称)!!


アポロの為に!!!!!!



読んで頂きありがとうございます!


感想やアドバイス等なんでも言ってください。


誤字等も教えて頂けると幸いです。



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