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2-2.ホントにちょろい

遅い時間の投稿。修正に時間がかかった、、。

 =・~・=・~・=


 「マリさん、ごちそうさまでした」

 「いや、いいんだよ。それよりこれから修行だろ? 頑張っといで!」

 「ははは……できる限り頑張ってみます」


 結局ファミレスの中ではたいして会話できなかった。

 ってかそれはおかしいか。あの人から話しかけるべきじゃん? 普通は。


 「そうだよ、早いとこ田舎の両親とこに帰して差し上げないとね」

 「そんな大げさな、っとすいません。噂をすれば、です」

 「お、やっぱり心配だよねぇ。ここは大都会じゃないとはいえ――」


 「え――」

 マリさん、すいません。言葉が入ってこないのを許してください。

 「別れたい、ってなんで!? 私、クリスマスだってあんなに頑張って……」


 そうだ、いくらここで言っても意味ないよね。

 早く電話しないと。


 「こっちには何とか言っとくから。あんたは早く電話しな」

 「はい、ありがとうございます」


 マリさんがあの人には上手く伝えてくれるようだ。

 確かに修行も大事だけど、今この状態ではとてもじゃないけど集中できそうもない。



 =・~・=・~・=


 「……電話にも出ないし」

 メッセージを送っても返事なし。

 

 ホントに私、こんなにあっさり捨てられちゃったの?

 だってまだ1月も終わらないうちに……。そんなことってある?


 本当なら今すぐにでも帰って会って話したいんだけど、結局会えない気がしてる。

 向こうの普通の学校だって既に退学済みだし。


 「はあ……こんなんじゃ、ホントにただのあばずれじゃん」

 クリスマスだけ人が欲しかっただけの。

 実際そんなとこがなかったかといえばうそになる。

 別に誰でもよかったわけじゃないんだけどなー。


 「……しゃーない。気持ち切り替えよ! じゃないと私」

 冷静に今の状況を見ると。

 「彼氏にフラれて、学校も退学して、次の学校には編入できない。それだけじゃなくて」

 そうだ、そうだよ。

 「もっと都会に出て行って楽しく暮らすんだ、って計画も……水の泡」

 ……ちょっと考えただけでぞっとする。


 「あの人のことは気に入らないけど」

 いきなりあばずれ言うし。

 「何とか利用して、早いとこ力、取り戻さないとね」


 じゃないと私、何にもなくなっちゃうじゃん――。



 =・~・=・~・=


 「お、来たね? ……大丈夫だったのかい?」

 遠くから手招きしてくれていたマリさんから温かい言葉をかけられる。


 「はいっ! 私早いとこ復活して、編入して、それで一人でも生きていける系女子になりますっ!」


 気持ちが変わらないうちに宣言しておく。これで自分から後戻りできないよね。


 「……わかった。今日の夕ご飯はごちそうだよ? 早いとこすませて帰ってきておくれ」

 「はいっ! ありがとうございます!」

 大きくお辞儀をする。本当にいい人だ、マリさん。

 

 ちょっと泣きそうな顔を隠すように、寒さのせいにしながら鼻をすする。

 ……あったかい人で良かった。



 顔をあげると、マリさんがあの人に耳打ちしている。

 ……軽く事情を話しているのだろう。

 あの私の態度であの後の結果はマリさんには大筋では伝わっているだろうから、大変に助かる。


 「もういいのかい?」

 「……はい! 今日からよろしくお願いします! お二人とも!」

 もう一度、今度は誠意をこめてお辞儀する。


 「じゃ、私はごちそうの準備をするからね。……あんまりきつくしてやらんでね?」

 「わかってますって」


 マリさんはひらひらと手を振りながら去っていった。


 

 

 「……で、今日から具体的に何をすればいいんですか?」

 早い所終わらせてしまおう。出来るだけ早く。


 「今日の所は、すぐに治るかどうかの実験」

 「実験!?」

 ちょっと何言ってるかわからないんですけど。


 「ちょっとそこに立ってて」

 指でその場を動かないように指示される。

 ……なんでそんなに偉そうなの?


 「じゃ、やってみるから」

 「は、はいっ」


 ちょっと考え事している間にもう準備ができたらしい。


 「動かないでね」

 「……何にもしないよね?」

 「黙れあばずれ」

 「はあ!?」

 「そうその場を動かないで……いきます」


 さっきまでの口調とは違う。何かいきなり真面目じゃん。

 差し出された右手の手のひらには、特に変わった様子はない。

 ……? 心なしか気持ちが軽くなったような?


 「あの……一体何をやってるんで?」

 こっちまで口調が丁寧になってしまう。


 「……ふーっ。やっぱりだめか」

 「えっと、何がどうダメだったのでしょうか?」

 「そんな簡単にコアは治らない、ってこと。ま、しゃーないか。気長にやりますか」


 こっちを見てるのか見ていないのか、視線をさまよわせながら彼は私にそう告げる。


 「いや、そんな説明ではいそうですか、って納得できるわけないじゃないですか。バカにしてます?」

 「そんなつもりはないんだけどな……」

 その態度すら私をイラつかせるためにわざとやってるんじゃない、っていう態度。

 

 今の私は苛立っててすぐにでも――ってあれ、そんなでもない?

 ホントに心が軽くなってるの?


 「はぁー……。もう一回動かないで」


 もう一度同じ構えをする。私から怒りが取り除かれていく感じがする。

 「そう、やっぱり怒りをとってるよね、これ」

 「ああ……結構溜まってるのな」

 「せっかく褒めたのに、その言い方キモすぎなんですけど」

 「……は? …………意識しすぎじゃね?」

 「っ!」


 この人本当にそんな意図なかったみたい。こっちが恥ずかしいやつじゃん。


 「まあいいや。えーっと、これからの方針なんだけど」

 彼は少し真面目な顔で語りだす。

 「何? いくつかあるの? やり方」


 「1つ、素早く穴だけふさぐ。これならまあ見た所? 数日かな」

 「それはダメなんでしょ? さっきの感じからして。他は?」

 私は次を急かす。この案には彼もあまり乗り気ではないように見えたからだ。


 「2つ、穴をふさぎつつ強化する。恐らくマリさ、ばーちゃんが言ってたのはこっち」

 「何で言い直したの?」

 「いやなんとなく」

 本人居ないのにちょっと照れてるの何なの……。


 「で? 3つ目は?」

 「……何であるのわかったの?」

 「話し方的に? で、何なの」


 彼は少し考え込むそぶりを見せる。そんなに難しいことなのかな……。


 「この方法を普通にやるとしたら年単位の時間がかかるから」

 「じゃあ普通じゃない方法でやってよ! もったいぶらないでさぁ!」

 さすがにちょっとイラっと来てしまって、つい言葉が強くなってしまう。


 「いやでもな……俺の推測だしな……」


 はっ!


 「いやらしいこと考えてるでしょ、気持ち悪い。つけ入るなんてサイテーよ。元はといえばあなたがやったんだからね!」

 

 そうよ! この人が私のコアを壊したからこうなったっていうのに。なんで遠慮しないといけないの? 私が。

 そんなのおかしいじゃない! この男にきちんと治してもらわないと!


 「……分かった。全部話すよ。俺が君に使う力は「憶いを奇跡に変える力」……だと思う」

 「いや、だと思う、って何なの? 全部話すんじゃないの?」


 「実は俺もよくわかってないんだ。恐らく、ってな感じで」

 「……誰かほかの人に使ったことは?」

 「今のところは1人だけ」

 「成功したの?」

 「……一応は」


 「なんだ。だったら大丈夫じゃない。……ん? ”思い”? ……やっぱりいやらしいことしようと――」

 「俺の方じゃなくて、君の方。君から俺への憶いの総量」


 は?

 「何言ってるの? そんな魔法聞いたことない。あるわけないじゃない」

 「そう、だからばーちゃんは俺にしか治せないと判断した、んだと思う」

 

 まあ、確かにそれなら辻褄は合うか。

 マリさんが私を陥れようとしてる可能性は昨日ならあったかもだけど、今ならその可能性は除外できる。


 だとしたらこの人の言ってることにも嘘は、少なくとも2人が知っている範囲では、ないってことね。

 「わかった。要するに仲良くしましょう、ってことね。それで? 年単位を縮める方法、他にないの?」

 「……わかった。話す」


 やっぱりまだ隠してること、あったんだ。

 この人、やっぱり信用できない。


 「使用後に少し、記憶があいまいになるかもしれない。それだけ」

 「……本当にあいまい程度?」

 「ああ。1人目はそうだった」


 まだまだ怪しさ満点だけど。それでも頼るしかない、この人を。

 「……わかった。ただし! 記憶があいまいになるからって変なこと、しないでよね!」

 「しつこい。俺はそんなことはしない」

 「ホントかなぁ? ……ま、いいわ。じゃあ交友の証、ね?」


 私は右手を差し出す。

 「え、ちょ、何?」

 いくらなんでも動揺しすぎでしょ。経験なさすぎなのバレバレじゃん。


 「握手。これでともだち、ってこと」

 「ともだちね……了解」


 彼も右手を差し出す。

 「……何」

 「いやこっちから握りに行くのは遠慮するっていうか」

 「キモ。いいからっ! はい、握手!」


 こんなのいつまでたっても終わらない!

 私は距離を詰めて強引に握手をすませる。


 「あ……ありがとう」

 「ち・が・う! よろしく! 何お礼言ってんのよ……」

 「よろしくお願いします!」

 深くお辞儀するこの人。


 「何かそれも違うんだけど……まあいいや。よろしく」

 ホント、調子狂うなぁ。


 「それで? 今日は他に何するの? ……まさかホントに仲良しになるだけなんて言わないよね?」

 「まあ一応。そっちはばーちゃんが見てくれるから」

 「ホントにそれだけなの? だったら昨日会場で使った奴と、私に使った奴。それが何なのか教えなさいよね」

 「ああそれくらいなら」


 あれ、なんだか拍子抜け。こんな形でノア様がああなった原因が分かるなんて。

 「あれは俺にためられた痛みを移し替えてるだけ」


 そんな簡単に言ってますけども。

 「それだけでいきなり意識を失うものなの?」

 「まあ送り込む場所と量をね」

 「そうなると私の時は相当多かったってことね。なるほど?」

 「いやあれは誰かが後ろから君を操ろうとしてたから」

 「ふーん……ほんとかなぁ?」


 私の返答にまたあたふたしちゃって。

 この人私の言うことホントに信じちゃってるのかな?

 ホントにちょろいなんてもんじゃないくらいちょろいんですけど……。


 でも、私からの思いがいるんだよね。

 何とか全部向こう持ちでできたりしないかな?

 だったら明日にでもできそうなんだけどなー。

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