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腕相撲しようぜ

《》カッコ内は筆者の心の声。

「そういえば、回復魔法が出来るって言ってたよな、ちょっとやってみてくれないか、もうトレーニングは終わってダイブマシンから出るだけだし、ちょうどいい青痣が沢山ある」

「良いですけど、地味ですよ」

「回復魔法持ちは、未踏破区域の探索に連れてかれちまうんで、見たことが無いんだ」

「あれ?笹川教官って、あの有名な『チーム朱鷺』の一員だったって聞いたことありますけど」



《  『チーム朱鷺』、筆者による、たった今出来た、日本のダンジョン探索トップチームという設定  》



「あん時はまだ、回復魔法持ちが潤沢じゃなくてな、ダンジョンを一度出ちまえば、全部元通りだろう、だから文字通り死んで覚えろって言われてたんだよ」

「ひゃあ、厳しいですね」

「おかげさまで、だいぶ強くなった気はするが、幻肢痛を訴えるような奴や死んだまま戻って来ない奴が出始めて、今じゃあんな無茶は出来ないがな」

「それじゃ、やりますよ」

左腕を出し、斜めについた青痣をよく見せる。

右手をかざし、強く回復魔法の実行をイメージする。すると手から淡い光が放たれ、傷口を覆うように包み込む。

そして、すぐに光は消えていった。

「おぉ、これが回復魔法か」

「こんなもんです」

「よし、お前ら全員で腕相撲しろ」

「えぇ!?」



《  ぅえ!?  》



突然の提案に驚きながら、笹川教官の目を見るとこれは本気の目だ。間違いない。

「はい」

「はい」

「はい」

「はい」

「はい」

「はい」

「はい」

「はい」

「はい」

「はい」

「はい」

「はい」

どっから集まってきたのか、総勢12名、みんな腕相撲が好きなのか。防具や武器などが置かれていたテーブルがズラリと並べられる。



《  とりんさまご乱心!?「腕相撲」好きなんですか!? 》



よく分からないが、こう見えて私はチビっ子腕相撲大会三連覇を果たした猛者。

半分より上くらいには行きたいところ。

「で、何を賭けます?1位になってもなんにもなしじゃつまらないでしょう?」

「そうだな、そしたら一位には、今日の晩飯奢ってやる」



《  意外と普通ですね。満を持して振ってみたんですが  》



「マジですか!」

みんなやる気のようだ、どんな晩飯なんだろう、気になる。いい大人でしかも全員が国家公務員、結構給料もらってるハズだ。

その全員が、こんなテンションを上げている晩飯。是非とも、ご相伴に預かりたい。

「負けたらどうするんですか?」

「ん~……、一ヶ月俺の言う事聞くとかでいいんじゃないか」

「わかりました」

笹川教官は教官だから、普通では?家に帰れないのだし。

何やら盛り上がっているのに水をさすのも申し訳ない。

教官が対戦相手同士を指名していく、私はこの何やらこの太めの若者が相手のようだ。

手を組み合うと、こちらの体格を見てフンッと笑う。

よし、決めたキミはポン太君だ。ポン太君と呼んでやろう心のなかで。

笑ってられるのも今のうちだ、ポン太くん某動画サイトで覚えたこのクンフーを超えられるかな。

「レディーッ……ゴッ」

あっ、ズルい、ズルっこだ。

ズルいぞ、ポン太、仕切り直しを要求するっ、ゴッ、って言う前に力入ってた。絶対。

もはや手の甲がテーブルまで10センチほどしかない。

体勢はまだ、それほど崩れてないが。

絶対絶命だ、いや、今こそ唸れクンフー。グッと力を入れ、手を押す。

ぐぬぅー、と押し返してくる。

くそぉ、さっきは不意打ちだったんだ。

今度は負けない! グッと力を込め、一気に押そうとすると、ふっと力が抜ける。

あぁ、負けたなという諦観が、よぎる。

というか、手首を脱臼した気がする。もうダメだ。

「はい、そこまで」

パンと乾いた音が響き渡る。

「勝者、小鳥遊」

小鳥遊っていうのかポン太。

とても小鳥が遊んでいる感じはしないが。

素朴な木こりって、考えるととりが止まっててもおかしくないな。



《  ポン太は小鳥遊っていうんですね、とりんさま 》



「やったぜ!」

小学生みたいな喜び方だ、こんなやつに負けたのか。

ちょっと情けない気分になった。

「はわぁ」

思わず声が出る。

「お前ら、今、勝ったって思ったろ」

「えっ違うのか、教官っ」

えっ負けたでしょ、間違いなく。

普段こんなに手首に力かかること無いから、ビックリしただけで、脱臼なんてして無かった。

「それで、一体どういうことなんですか?」

「ああ、あれな、今のはただの手加減だ」

いやいや、手加減してませんて、全力の結果ですから、ズルされたから手加減したので負けてないって、めっちゃ恰好悪くないですか。

「そんなこと無いですよ、負けは負けです」

「フンッまぁ、お前がそういうなら良いだろう」

「それより、教官の決勝が始まっちゃいますよ」

決勝へ向かう教官の背を見送った。漢の背中だった。

決勝での教官の相手だが、これがイケメン風中華仕立てといったところか。

長髪のポニーテールを揺らしながら腕を組んでいる。

彼はチャオ先生と仮に呼ぼう。美青年っぷりと、中華っぽさからだ。

さて、笹川教官とチャオ先生がガッチリと組み合った。中々強そうだ、視界に映るポニーテールがチラチラと癪にさわる。

「レディー……ゴッ」

お、おぉっ、拮抗してるぞ。

笹川教官がテーブルの端を掴み直したその瞬間にチャオ先生が仕掛けたっ。

勢いよく腕を引きつけ、肘を叩きつけるように振り下ろす。

凄まじい音と共に、机が揺れる。

しかし、そこにはすでに教官の姿は無かった。

一瞬で間合いを詰めていたのだ。

そして、その流れのまま首筋に手刀を振り下ろした。

「そこまでだっ」



《  急展開、そして!!、これはとりさまのアクションが光りますね、いまいち脳内でイメージできない状況ですが 》



気付けば、周りを取り囲まれていた。

こ、この流れはまさか、エコーズ。

よくよく見れば、腕が蛇の様になった者、下半身が犬の首から下のようになっている者、明らかに探索者ではない奴らだ。

くっ、笹川教官が急に腕相撲とか言ったり、みんなの様子がおかしかったのはこのことに気付きつつあったからか。

私には検討もつかないが、手合わせれば、笹川教官にはエコーズかどうかわかるのだろう。

向こう側でメインで話をしていたのは、例の高官の孫、拘束されているはずではなかったのか。チャオ先生の背後で、腕を振り上げたまま笹川教官は止まっている。

エコーズ、一体何が目的だ?

「どうだね、君たち、ここは一つ我々に任せてくれないか」

「はい?」

「我々はエコーズの日本支部である」

「えっと、それはつまり……」

「エコーズはダンジョンのモンスターを使役できる。我々の目的は人類の救済であり、人類同士の争いではない」

「それは話し合いに応じるということですか、話し合いで解決出来るなら、我々もそうしたい、まずは分かりあうことが必要そうですね、大層な目的を掲げているようですが、何から人類を救済するつもりですか?」

中根指導員は流石の落ち着きだ、私なんて、机の下でぶるぶる震えていることしか出来ないのに。

「ふむ、確かに君たちの言う通りだ、我々の目的は、世界平和だ」

「えぇー」



《  ええー、質問には答えてくれないんですか、まぁ、悪いやつですし、そう簡単には白状しないってことですね  》



思わず声が出てしまった。

「いやいや、そんな顔されても困るんだが、これは本当だよ」

「あっ、すみません、失礼しました、つい驚いてしまって」

「では、ちょうどいい、笹川教官が夕食を奢ってくれるという話だったんです、こちらに食料を運ばせましょう、同じテーブルを囲む、これは世界平和の第一歩では?」

ちょっと待ってよ、あんなライオンの口が首から生えてる人とか、体の半分がスライム状になってる人とかとご飯食べたって、食事が喉を通るわけがない。

「あぁ、構わんぞ」

笹川教官が了承してしまった。

「じゃあ、私は、ちょっとトイレに行ってきます」

小鳥遊が立ち上がった。

「んっ、お前は残れ」

「えっ、僕ですか?」

「ああ、お前だ」

そうかポン太、お前の献身は胸に刻んでおくよ。



《  ポン太は居残りね、とりんさまの指示だから、仕方ない  》



「私はどうしましょう?食事を運ぶにせよ誰か一度戻った方が良いと思うんですが」

勇気を出して、発言する。

願わくば、私は戻りたい。率先して発言したことを評価してくれ。

「そうだな、では、俺とこいつで行こう、お前らはここで待機していてくれ」

「わかりました、よろしくお願いします」

中根指導員は残るようだ。

大変世話になったが、背に腹は代えられない。

自分の命がやっぱり一番大切なんだ。すまない。



《  中根指導員が居なくなるのか、便利説明キャラだったのに、今後の進行に若干の不安  》


かんそう


とりんさまご乱心の回、腕相撲の「はい」の下りは、延々と「はい」が出力されてしまって、急にホラー始まったかと思った。

途中で切って、すでに出力してしまった「はい」の数を数えて12人。

ポン太は、少し前から続けていたあだ名をつけて拾ってくれるかのテストだったが、やっととりんさまのOKが出た。

勝敗のところでとりんさまが妙なことを言い出したので、決勝へ強制誘導。

とりんさまの勢いといい、物語的な進行といい今回は言いたいことがたくさんあるけれど、あんまり独白を入れると、それはそれで元々悪いテンポがさらに悪くなるので難しい。

書いたときは、こんな形で公開することを全く考えていなかったので、途中から急に主人公くんが作者の胸の内を代弁し始めたりしている。



結論

とりんさま(ぼうそう!!)と小説を書くのは楽しい!


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