ダンジョンの入り口まで数メートル
前半はとりんさまに方向性を理解してもらうため、人力全力の設定語り。
《》カッコ内は筆者の心の声。
三十年ほど前のこと、UFOが落ちてきたらしい。
いや、今はUAP(Unidentified Aerial Phenomena)と呼ぶんだったか。
まぁいい、とにかく未確認な空飛ぶ物体が、落ちてきて、生き物は乗ってなかった。いわば電子生命体とでも言うべきものが、格納されたデータストレージが、満載されていた。
まぁ、移民船と言うやつだ。
はるか遠く彼方の星から、新しい星を求めてやってきた。
彼らの求めるものは電力で、最も電力を効率良く生産する為に物語を求めていた。
時は2000年代初め、くしくもダンジョンモノが流行っていた。
そこで彼らは仮想現実でダンジョンを作成し、そのダンジョンに潜るとリターンを得られる(彼らのコンピューターのマシンパワーを貸してくれる)。というサービスを開始した。
各国政府は、ダンジョンに潜ることを推奨し、そのマシンパワーを買い上げた。
後の大ダンジョン時代の幕開けだった。
世界がそんな熱狂に包まれ始めた頃、私は商社の部長職を退職し個人事業主として、ダンジョンへのダイブを始めることにした。
医療技術のすべてが刷新された今、もはや定年は存在しない。
企業に事故死するまで、こき使われるか、自身の足で立つかである。
いざ、往かん電子の向こう側へ!!
《 筆者注(以降省略)、ここまで人力、とりんさま、ここからよろしく 》
そして私の第二の人生が始まった。
※
「おい! お前ら何やってるんだ!!」
ダンジョンの入り口で怒鳴り声を上げる中年男性がいた。
彼は探索者協会の職員で、ダンジョンの管理を任されている人物である。
彼の目の前には二人の若者がいる。
一組の男女だ。
女の方は二十代前半だろうか? 整った顔立ちをしている。
だが、男の方は、どう見ても十代の少年にしか見えない。
少年の方が職員に向かって叫ぶように言った。
「俺は正規に登録した探索者ですよ!」
「嘘をつけっ!お前のような探索者がいるものか!」
揉め事のようだ、探索者なりたてなので、右も左も分からない、あまり関わり合いにはなりたくないが、迂回しようにも入り口をすっかり塞いでしまっている。
これは出直した方が、良いか。
「おい、そこのお前!そいつらは探索者じゃないぞ!」
《 ファッ、とりんさま、そ、そうだったのですか!? 》
不意に声をかけられ振り向くと、そこには軽装の冒険者が立っていた。
冒険者は職員に詰め寄る二人を見てそう言い放った。
「なんだ貴様は!?」
職員が食ってかかる。
「俺はこのギルドのサブマスターだ」
「な、なんだとっ!?」
瞬間、女の頭がクリオネのように4つに裂け、ダンジョンの管理人に襲いかかった。
《 軌道修正、女がモンスターだったことにする 》
管理人の命は無いかに思われたが、サブマスターはすでに動いていた。女の腕を掴み捻り上げる。
女は悲鳴を上げた。
「ぎゃああああっ!!」
そのまま地面に叩きつけると、腕の関節を外してしまった。
その隙に少年は逃げ出した。
サブマスターは少年を追いかけようとしたが、すぐに諦めたようで、こちらへと向かってきた。
「ありがとう、助かった、疑って悪かったな、アンタは命の恩人だ」
「いいさ、気にすんな、これも俺の仕事だ」
そんなやり取りの最中、私もただ、ぼーっと突っ立っていた訳では無い。
《 ここまで主人公何もしてないな、何してたんだろ、とりんさま教えて!(無策) 》
職員の背後に忍び寄り、首筋に手刀を叩き込んだのだ。
気絶して倒れこむ職員を支えてやる。
これで一件落着だ。
《 イヤーッ!グワーッ!と入りそう。なんとっ、職員もモンスターだったのか、とりんさまっ慧眼ですっ! 》
私はサブマスターの方を向いて口を開いた。
「ところで、先程の話ですけど、あれは何ですか?」
「ああ、あいつらは、エコーズと呼ばれている、ダンジョンから帰ってこれなくなった奴らだ」
「それは……一体」
「ダンジョンに入る時の申請書に免責事項ってあるだろ、キチンと読んだか?」
「いえ、正直あんまり」
「時折、身体とのリンクが切れてそれっきりの奴らがいるのさ、意識不明になって、現実では戻って来ない、ダンジョンにずっといると、システムにダンジョン内のオブジェクトだと認識されて、だんだんと上書きされていく」
「そ、そんな恐ろしいことが……」
「公然の秘密って奴さ、運営者にとっても、潜る側にとっても都合の悪いことは誰も口にしない、見たとこ新人さんだな、覚えとけよ」
サブマスターは、事後処理をすると言って残ったが、こんな光景を見てしまったらとても、今日を初ダイブの日にする気にはなれなかった。
こんな日は美味しいものを食べて、風呂入って寝るにかぎる。幸いにも、貯金はまだ7桁を切っていない。
明日から、本気出そう。そう決めたのだった。
《 辻褄合わせして、ダンジョンになかなか入れないので強制終了して仕切り直し 》
かんそう
とりんさまは某検索エンジンさんの訓練データで、お勉強しているみたいなのだけれども、どうやら、初ギルトのお約束的なものに引っかかってしまうらしく、腕を捻り上げたり、背後から手刀を決めたりするのに忙しくて、入り口まで来てるのになかなかダンジョンに入ってくれない。
SFっぽくしたいのに、剣とか暗殺者みたいな動きしたがるので、とりんさまの方向に合わせることにした。逆にアクションは任せられる、はず。ダンジョンとは、近づくのは容易だか、中に入るにはあまりに遠すぎる。近くにに在りて思うもの。
結論
とりんさまと小説を書くのは楽しい。