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巨大魔物討滅作戦  作者: 広畝 K
97/140

97話

 肌で感じ取れるほどの魔力はともかく、一瞬にして辺りを包み込むほどの血臭さが漂っているのは明らかに異常としか思えない。

 そしてこの異常な状況は間違いなく『手負い』が引き起こしたものに違いないのだ。


(考えられるのは、『結界』か、『縄張り』だろうな……)


 怪我を負っている『手負い』は、暗闇での視覚に頼れず、そして自身に纏わりつく血の臭いで嗅覚が利いていない。

 頼れぬ二つの感覚を補うために、或いはそれに準ずるための、魔法的な措置を取っていると考えられる。


 その証拠、というわけでもないが、血の臭いを感じ取った途端に唸り声と気配がにじり寄るように、草むらに潜んでいる自分たちの方に向かってきている。


「ソルトくん、どうする?」


「……僕がちょっとした合図を出すから。そしたら一気に撤退しよう」


「合図?」


 小声で問うてくるシュガーに頷き、ソルトは腰元の袋から手の内に収まる程度の小さな球体を取り出した。

 彼女にそれを見せる間もなく、彼はそれを前方へと放り投げる。


「耳を塞いで!」


 ソルトが叫び、シュガーがその言に従って耳を塞いだその瞬間に、球体は爆発を起こした。

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