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96話
「いやー、怖かったよ! もう駄目かと思ったね!
ソルトくんが来てくれて助かった!」
「……その割には元気そうに見えるけどね」
はしゃぐような声色のシュガーに、ソルトは虚脱する思いであった。
無事で良かったという安堵と、これなら自分は来なくても大丈夫だったのではないか、という拍子抜けの思いが、彼の心を満たしつつあったからである。
「まあ、とりあえず帰ろうか。皆、心配してるし」
「んー……そうだね。
第二部隊の皆が心配だけど、今の私たちじゃ足手纏いだろうし」
二人は服についた落ち葉を払い落としつつ立ち上がったが、すぐに再びその場に伏せて、息を潜めて気配を殺した。
濃厚な血の臭いが鼻腔に張り付き、身の毛もよだつ気味の悪い魔力が視界の端に入り込み、地鳴りのような唸り声が耳朶の奥にある恐怖を叩いたからである。
「ソルトくん……この状況、ちょっとまずくない?」
「かなりまずい……」




