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89話
そう言いながらも、精霊はお守りを折って口に入れていく作業を止めようとはせず、遂には全て食べ尽くしてしまった。
満足そうな顔をした精霊はソルトの顔を見上げて、軽く首を傾げてみせる。
『それで、その女の子をさがせばいいのかな?』
「うん。協力してほしい」
彼の即答を受けてしばらくあごに手を当てていた精霊だが、やがて納得がいったのかしきりに頷き、朗らかな笑みを顔に浮かべた。
『ことばだけで案内するのもむずかしいから、わたしがついてってあげるよ』
「! 場所が分かるの?」
『残り香はきえてないから、それをおっていけばよゆうだよ』
胸を反らせて威張る精霊の姿を見て、ソルトは僅かに不安と疑心を抱いたが、他に手がかりのない状況であると思い出し、その提案をありがたく受けることにした。
『うんうん、素直なのはいいことだね。あなたのお名前はなんていうの?』
「ソルト」
『私はフラットだよ。ソルト、みじかい付き合いだけどよろしくね』




