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巨大魔物討滅作戦  作者: 広畝 K
74/140

74話

「バランさんの言った通り、目標のブラックグリズリーは確かに討伐されたと判断して良いでしょう。

 しかし、未だ山には強大な魔物が存在している……そうですね?」


「……ああ、その通りだ」


 次に答えたのは、第三部隊の隊長を務めたファイであった。


 彼もまた中級冒険者としてはひとかどの人物であり、その目立たぬ風貌からは想像をし得ぬほどの判断力を有している。

 しかし現在、彼の顔は血の気が抜けたように白く、日頃の飄々とした雰囲気は微塵もない。


 ファイは整えられていたであろう自身の灰髪を鬱陶しそうに引っ掻き回しながら、頭の中の記憶を一つひとつ取り出すかのように語り始めた。


「俺たちは、討伐目標が逃げ込むのに不都合の無い穴倉を回って感知器を撒いていた。

 確か、第一部隊の通信機材で位置が確認できる型の魔道具だったはず、だよな」


「ああ、合っている」


「……で、四つか五つの洞窟を回ったときに、そいつがいたんだ。熊型の巨大な魔物だよ」


「ちょっと待ってくれ。熊型の巨大な魔物ってのは、ブラックグリズリーとは違うのかい?」


 他の冒険者からの質問に対して、ファイは僅かに髪を引っ掻き回す手を止めて考える仕草を見せた。

 が、しかし、すぐに答えが出たようで、首を弱々しく左右に振った。


「すまない……分からないんだ。

 黒い毛並みと大きな体は、ブラックグリズリーとよく似ていたことは間違いない。

 だが、俺たちがそいつをブラックグリズリーじゃないと判断したのは、眼の色が違っていたからなんだ」


「違う? 眼の色が?」


「ああ。ブラックグリズリーの眼の色は黄金色だろ? 

 でも、俺たちが見たのは固まりかけた血液のような、赤黒い色の目玉だったよ」


 一瞬、その場が静まり返った。

 不気味な静謐は妙な緊張感を漂わせ、言い知れぬ不安を具象化したように重苦しく感じられた。

 しかしそれもすぐに掻き消え、けれども不安感だけを漂わせたまま、問答が続いてゆく。

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