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巨大魔物討滅作戦  作者: 広畝 K
73/140

73話

 夕闇が音もなく宵の指先を方々へと伸ばし始めている頃、村の集会所はざわめいた雰囲気に包まれていた。


 熱気と呼べるほどの快活ではなく、むしろ焦燥を火種とした危機感と余裕の無さが、この場に戻った冒険者たちの表情や態度に色濃く出ている。


 誰もが沈重を失うまいとして理性を働かせているのは確かなものの、かといって落ち着いていられないという感情を持て余し、ちぐはぐな印象を互い互いに抱き合い、それがまた彼らの冷静を奪ってゆくのである。


 そんな彼らの動揺を収めたのは、村長の自若な態度とギルドマスターの一喝、そして今回の作戦行動における切り札、上級冒険者のリーダーたるペッパーの極めて冷静な声音であった。


「まずは、情報を整理しましょう。

 慌てるのは、それからでも遅くはないはずです」


 冒険者たちは互いに視線を交わし合い、彼の言葉に同意を示して冷静を取り繕った。

 内心は如何に荒れていようとも、表面上は冷静に、そして的確に最善の行動を模索してゆけるのである。

 こうした冷然なる判断と行動を貫くあり方こそ、冒険者が荒事のプロとして畏敬を受ける所以であった。


 皆の瞳に力が戻ったところでペッパーは頷き、始めの確認を開始した。


 その確認とは、当初の作戦行動における成否である。

 作戦行動の目的であったブラックグリズリーの討伐、この作戦目的は達せられたのか。

 それとも否か。

 その確認に答えたのは、第一部隊の隊長を務めたバランであった。


「第二部隊から討伐完了の連絡が入ったことを考えると、当初の目的は達成されたとみて間違いはないだろう。

 その通信に関しては記録も録ってあるから、確認してほしい。ただ――」


「ありがとうございます、バランさん。そこまでで良いですよ」


 手を上げてまで言葉を遮ったペッパーの意図を、バランは黙して受け取った。

 喋りかけた言葉の先にある残酷な現実について、まだこの場で言うべきことではないだろうと、彼はバランにそう言い含めたのである。


 その判断はもっともなものであると、バランも納得した。

 落ち着いた場を無暗に混乱させるよりも、今はやるべきことがあるのだから。

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