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巨大魔物討滅作戦  作者: 広畝 K
56/140

56話

 その頃、討伐作戦第一部隊の面々は老狩人の先導によって山頂に到着していた。

 山頂とはいうものの、木々が密集しているのは道中と変わらず、見晴らしなど望むべくもない。

 板を張り合わせて作られたような簡素な山小屋が建っている他には、別段目新しいものはなかった。


 その山小屋の中で、狩人を含めた第一部隊の男たちは他部隊のバックアップを確かなものにすべく、通信魔道具とその補助魔道具の組み立てを行っていた。


 第一部隊の運んでいた通信魔道具は他部隊が持っている小さな携帯型ではなく、成人男性が背負うほどに大型の精密魔道具であった。

 それは遠距離においても精度の高い通信を可能とするものであり、今作戦における重要な魔道具とされている。

 その精密魔道具を高度な通信設備とするための必要な補助として、通信線を確保するためだけに用意された箱型魔道具が数個、動力源となる増幅炉が一個、万全を期するために用意されている。


 面々は武具を小屋の壁に立て掛け、完全に通信専用員としての役割を果たすため、頭に各種受信機を装着していた。

 他部隊が持っている通信機から常時発信されている信号を捉え、それぞれの現在地を把握するのが任務であるためだ。


「しかし、魔物退治にここまでやるとは思いませんでしたね」


「ああ、これほどの魔道具を用意できるとは思わなかったよ。

 よほどの軍隊でもなければ、これほどの充実した設備は用意できまいよ……」


 地図を睨み、第二・第三部隊の現在地を把握しながら、二人は使用している魔道具の性能に舌を巻いていた。


 村長が渡してきた機材は、通信だけでなく相手の位置を把握もできる、広範な行動把握装置だったのである。

 これらの魔道具はソルトが改造・製作したものであるが、当然、そのことを彼らは知る由もない。


 村人である老狩人は脳裏に思い当たる節があったが、それを言葉として出す前に、第二部隊からの通信が入った。


 その内容は、討伐対象には人間との交戦経験を有している可能性があるというものであった。

 だからこそ縄張りから追われて、この山に新たな縄張りを構築するために逃げてきたのだろうと第二部隊の彼女たちは言うのである。


「……シャルル、どう思う?」


「一概に切り捨てられる考えとは言えないでしょうね」


「問題は、人間との戦闘経験がある魔物の行動に変化が起きないか、ということでしょうな」


「なるほどな。第三部隊に注意しておく必要はありそうだ。ペリーニ、頼む」


「了解」


「魔物の行動に変化とは、どういうことです?」

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