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巨大魔物討滅作戦  作者: 広畝 K
53/140

53話

 シュガーの先導する第二部隊は、熊の遺体が放置されている広場に着いた。

 深緑の濃い空気に混じって、僅かな異臭が漂っている。

 それは熊の遺体から湧き出る腐臭であり、前日にも増して腐敗と溶解が進んでいることを物語っていた。


「うひゃー、これは酷いぞ」


「虫食いが多すぎる。魔力の痕跡も微かだし……」


 二人の仲間が表情を歪めて熊の遺体を検分している間にリーダーは通信機からアンテナを伸ばし、耳元に本体を当てながら、別働隊へと連絡を取り始める。

 相互に密なる連絡を取り合うことこそが未知の土地における作戦行動を支える基盤であると、確かな理解を得ているためだ。


「こちら二部。応答されたし」


『こちら一部。通信精度極めて良好』


「二部了解。第一地点に到着。繰り返す、第一地点に到着」


 微かな雑音も入ることなく、明瞭な声音が通信機から響いてくる。

 第一部隊はまだ山頂まで至っていないであろうにも関わらず、通信精度の水準が非常に高い。

 これはおよそ、一般に普及している魔道具では考えられないほどの、質の高さと言って良かった。


(これだけ質の高い魔道具の補助があるなら……結構楽できるわね)


 第二部隊のリーダーは胸中で任務の達成を確信しつつも、しかし油断は厳禁だと自身に戒め、目の前の報告に注力する。

 この小さな通信機が第三部隊においても問題なく稼働するならば、通信に関する問題はほぼ解消されるためだ。


 一つひとつの不安を消して、確実に任務を遂行していく。

 それこそが冒険者としての、仕事におけるプロ意識というものだと彼女は知っている。


『一部了解。二部の第一地点到着を認定する。一部より三部へ通達後、追跡を開始されたし』


「二部了解。一部より通達後、追跡を開始する」


『一部了解。再度通達を待たれたし』


 通信を終えたリーダーは軽い満足の息を吐き、小型で手軽なその通信機を腰のベルトに差し込んだ。

 アンテナも、忘れずに畳んで通信機本体へと収納する。

 その頃合いを見計らってか、あまり間を置くこともなく、メンバーのロアがリーダーへと近づいてきた。


「お疲れ様、キーリ。通信は問題無さそうですね」


「ええ、これは使えそうよ。後は耐久性に問題が無ければ、買い取りも検討したいくらいね」


 腰元の通信機を軽く叩いて、第二部隊リーダーのキーリはロアに感嘆の語調で応えた。

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