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巨大魔物討滅作戦  作者: 広畝 K
47/140

47話

「工具や魔道具には触らないようにしてね」

 とバニラに注意を促したソルトは、作業台の上にある部品を少しずつ組み立ててゆく。


 その手際と雰囲気は熟練の技術者というよりは、おもちゃをいじる少年のそれである。

 にも関わらず、魔道具の部品は彼の手によって次々と組み合わされ、乱れも停滞も見せることなく完成品へと近づいてゆく。


 その光景を異常であると明快に断じたのは、つい先ほどまで嬉々として工房内を見回していたバニラであった。

 今やその顔に喜色などなく、表情は能面のように色を無くし、目は鋼糸のように鋭く細められ、ソルトの手元を貫かんばかりに注視している。


(魔道具に魔力を込める速さが尋常ではない! 魔法陣の書き換えも……!)


 魔道具は多数の魔法陣と精密な魔力制御による芸術であるとバニラは認識している。


 それに加えて、魔道具には魔法の性能を正確に引き出すための素材が使われていることが多い。

 素材の性質は繊細で、少しでも魔力の制御が疎かであったり、魔法陣による魔法の出力が不安定であったりすれば、素材はすぐに摩耗・消滅して、魔道具としての体を為さないのだ。


 最悪の場合には魔法の暴発も十分に有り得るため、危険度という点では未熟な魔法使いよりもよほど魔道具職人の方が高いと言える。


 僅かな瑕疵も許さぬ繊細な内部機構こそが魔道具を製作する上の困難さであり、大量生産を行う魔道具に背を預けざるを得ない理由である。

 魔力を操作することに慣れていない常人には、到底不可能と言われる所以であった。


 しかし、バニラの目の前にいる少年は既存の価値観を打ち破るほどの手際の良さで、魔道具を完璧に組み上げている。

 描かれる魔法陣に歪みはなく、注がれる魔力の量も、魔石の配分も機械に劣らぬ精密さと言って良い。


 驚嘆するバニラが見ている中で、ソルトはそれほど時間も掛けずに魔道具の改良を終えてしまった。

 時間にして、数分といったところであろう。

 彼女が知る限り、これほどの速さで分解された魔道具を組み立てられる人間はいない。


「魔力洩れ無し……出力も安定……大丈夫かな」


 組み上げた魔道具の点検を他の魔道具によって簡潔に終わらせると、ソルトは魔道具を壁際の箱へと収納する。

 休憩を挟む素振りも見せず、次の作業に移るべく軽く肩を回したソルトは、未改造の魔道具を別の箱から取り出したところで、不意に声を掛けられた。

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