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巨大魔物討滅作戦  作者: 広畝 K
37/140

37話

 ギルドマスターと立ち位置を交換したペッパーは、端整な顔立ちに精悍さを保たせたまま、村人に対して丁寧に答えた。


「明日の朝より早速、魔物の討伐に入ります。

 痕跡から後を辿っていき、すぐに発見できれば最短の一日で終えることができるでしょう。

 逆に発見できなければ、それだけ日数が掛かるということになります。

 しかし、この山は小さいと伺っていますので、三日以内に発見・討伐することも十分に可能であると考えてもらって構いません」


 その後、幾度かの質疑応答を終えた後、村人たちは解散して集会所から帰路に着いた。


 集会所に残ったのは、冒険者たちとギルドマスター、そして村人の中から選抜された狩人である。

 彼らは魔物を討伐するための実行部隊であり、作戦の具体策を受け取るため、この場に残るよう伝えられていた。

 そこには、村長の娘であるシュガーの姿もある。


「では、これより討伐作戦の概要を説明する」


 空気を切り裂くような声音で発言したのは、ギルドマスターの女性であった。

 その場の誰もが彼女に視線を向けて、真剣な態度でもって言葉の続きを促す。


 冒険者ギルドのマスターという職分は、冒険者たちの信用を一心に受けるほどに重い立場であると言って良い。

 数多くの武勲を獲得し、名声と信頼を勝ち得ている冒険者の一握りしかギルドマスターになれないと言われている。


 どんなに小さな出張所のギルドマスターであっても、そこに至る過程には少なくない武勲を得なければならない。

 数多の冒険者による推薦票を得られなければ、着任できないのだ。

 それこそ、武勇を示す二つ名すら付与されない冒険者などでは、到底望み得ない職域なのである。


 ギルドマスターとはその名の通り、冒険者ギルドの冒険者を率いることのできる器を持った者しかできない、特殊な職業だと言えるのだ。


 ゆえに、冒険者たちは優れた先達であるギルドマスターに対して敬意を払い、確かな信頼を置くのである。


「討伐目標は先に言った通り、成体のブラックグリズリーだと思われる。

 焼写紙に写っている樹木の爪痕と熊の死体から判断するに、体長はおよそ四から五メートルほどだろう」


 ギルドマスターが討伐目標についての情報を改めてさらったところで、一人の冒険者が手を挙げた。

 それは冒険者チームの中でもなお若く、少女といった風貌であった。


「すみません、質問をしても?」


「もちろんだとも。疑問を残しては作戦に支障をきたすからな。

 作戦に関する疑問があれば、何でも聞いておくが良い」


 快諾の笑みを見せたギルドマスターに従い、少女は自身の疑問を場に呈した。

 それは、成体のブラックグリズリーに現在の戦力で勝てるのか、もしかしたら勝てないのではないか、といった不安の心情の吐露である。


「貴女の不安は、もっともです」


 不安の問いに答えたのはギルドマスターではなく、【巨人殺し】の二つ名を持つ上級冒険者のペッパーであった。

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