36話
村人たちの誰もが恐怖に顔を青くしながらも、それでも震えずに、表面上は冷静に振る舞っていた。
この場に落ち着いたように座っていられたのは、援軍としてやってきた冒険者たちの強さを肌で感じ取っていたからである。
冒険者たちの力量が合わさるならば、魔物を退治できると信じられたからである。
ギルドマスターは村人たちを見回し、話を続けた。
「村の者たちは基本、退治が終わるまでは村の中で過ごしてもらいたい。
たとえ僅かな時間であろうと、村の外に出てはいけない。下山も駄目だ。
こいつが山に迷い込んできたことにより、獣たちが凶暴化している可能性が高い。
数日の間は村の中で過ごしていただくことになる」
「数日と仰るが、どれくらいになりましょうか」
村人の一人が質問し、ふむ、とギルドマスターは頷いた。
推定することは可能だが、それでは彼らは納得しないであろう。
明瞭で説得力のある答えが必要とされる場面であると彼女は理解する。
そうでなければ、村人たちをいたずらに惑わせることとなるからだ。
そこまで考えた彼女は村人から目を離し、複数の冒険者チームを率いてきたペッパーに視線を転じた。
実際に現場を取り仕切る彼らの代表であるならば、その質問に答えることも可能であろうとの判断である。
ペッパーは真面目な表情のまま、ギルドマスターに頷いた。
「退治の期間については、冒険者の方から説明がある。ペッパー殿、こちらへ」




