34話
相手は言葉による即答を避け、懐から一枚のカードを取り出した。
それは、冒険者ギルドが公式に発行している身分とランクを証明する魔道具だ。
カードに登録されている魔力の波長が持ち主と合致しているとき、裏側にギルドの紋章が現れる仕様になっている。
そしてゾイドの目の前で、相手はカードの裏側に浮いているギルドの紋章をしっかりと確認させた後、表側に書いてある情報を見せながら名を名乗った。
「俺はこの臨時冒険者チームのリーダーを務めている、ペッパーという者です。
この村の村長殿から指名の依頼を受け、魔物を討伐するべく参上しました」
その名を聞いて、ゾイドは思わず目を瞠った。
「まさか……【巨人殺し】のペッパーか?
村長から助っ人が来るという話は聞いてたが……あんたほどの男が呼ばれるとは思わなかったな」
「村長殿には、昔からお世話になっておりまして。
そのお世話になった分を少しでも返そうと、こうして参った次第です」
ペッパーは眼光を和らげ、人好きのする表情を浮かべて微笑みかけた。
その笑みは、どこか子どもの持つ無垢にも似た愛嬌に満ちていて、ゾイドも釣られて相好を崩したほどである。
他人の心の障壁を和らげるほどの暖かさが、ペッパーの笑みにはあった。
「ゾイドさん、参りましょうか。
時間を掛ければ掛けるほど、ここが危険になってしまう」
「ああ、そうだな」




