26話
「ソルトくん、魔物がどこに向かったか分かる?」
「……んー、死体の状態から考えて結構経ってるっぽいからなぁ」
あちこちを熱心に写していた彼は焼写機を袋に仕舞い込み、熊の死体の周りをぐるりと歩き回って、そして痕跡を見出した。
その痕跡とは、熊の死体にも見られた魔力の残滓である。
残滓は地面に痕として残ってはいなかったが、微かながらも空気中に、澱み濁った色として映っているとソルトは言う。
熊を屠る際の攻撃に、或いは防御において、魔力を込めて筋力を強化したのであろう。
恐らくは外皮、そして四肢にも魔力による強化を施したがために、これだけ時間が経っても残滓が漂っているのだと推察された。
そしてその残滓は、山の頂の方へと、森の奥へと続いていると彼は言う。
「これを追うのは、止めた方が良いだろうと僕でも思うね。まず間違いなく、殺されるから」
「でも、放っておくことはできないよ。村に被害が出るかも知れないからね」
「……どうするつもりだい?」
「とりあえず、一旦村に戻ろうか。この件は一刻も早く村長に伝えなきゃならない脅威だからね。
もし、ソルトくんの想像通りだとするなら、冒険者ギルドに応援を要請してもらう必要も出てくるしさ」




