24話
彼女は不意に足を止め、地面に伏せてあった罠の端末を手に取ると、それをソルトに手渡した。
薄い端末のパネルには特に何も映っておらず、それはどうやら魔道具による罠が仕掛けられてからこれまで、罠に反応した獣がいなかったということを示すらしい。
「仕掛けて初日なら、まあこういうこともあるんだけど。
これは仕掛けてから六日ほど経ってるんだよ」
「六日間、獣が罠に掛からなかったってこと?
それくらい、あるんじゃないの?」
「罠に掛かってないだけなら、そういうこともあるよ。
でもね、これが示してるのは六日間、獣が村の周囲に近寄ってすらいないってことなんだ。
明らかに、これは異常だよ。何かが森の中で起こっている可能性が高いと思うね、私は」
「何かって、例えば?」
「さあ? それをこれから確認しにいくのさ!」
その蒼い目に好奇心を滾らせながら、シュガーは森の奥へと足を向ける。
その後を遅れないようついていくソルトは、何事かを諦めた表情を浮かべていた。
彼は経験上、こうなったシュガーは言葉によって立ち止まるような性格ではないことを知っている。
さらには、野性的とも呼べる直感力に優れた彼女が、何らかの異常を見つけずに一日を無事終えたということを知らないのである。
そしてソルトは、彼女の見つけた異常に必ず巻き込まれるという幼少を送ってきたのであり、今回においても、幼少からの経験は彼の想像を裏切らないのであった。




