17話
そういった背景が一般的な常識として深く浸透しているために、彼は面接において華々しいエピソードもアピールもできずにいた。
魔道具関連の知識や技術を持っていることを重視されることもなく、口下手と対応の拙さばかりを面接官から指摘され、冷ややかな態度でもって落とされ続けたのである。
けれども、主席の友人たるノイルはそんなソルトのことを高く買っていて、
「まだ、今の時代の人々は魔道具の知識や技術を持つことの意味と重要性に気がついてないんだよ。
時代が遅れてるのさ。でも、じきに気付いて追いついてくるはずだよ」
と、ソルトのような魔道具の専門家が認められる時代が到来するだろうことを見通している。
だが、その時代がいつ到来するのかは、ノイルにもソルトにも分からなかった。
けれども、分からないからと言って、座して時代が追いついてくるのを待っているのは癪ではないか、と。
彼らは、特にソルトは強く思っていたのである。
どうせ田舎に帰るなら、田舎で魔道具を扱う店を開いてみるのも有りではないか。
もしかしたらその店の有用性や可能性に気付く者が一人でも現れるのではないかと、そうした淡い期待を彼が内心に持っていたとしても非難されることではないだろう。
「村では魔道具が壊れた場合、すぐに買うことも修理することもできないだろうし……。
魔道具の修理と、その間の貸し出しをすれば良いと思ってるんだけど……」
「ふむふむ、良いんじゃないかな?」
彼の考えを肯定したのは親たちではなく、姉貴分のシュガーであった。
彼女自身、今使っている魔道具に関して不備や不満があるわけではないが、メンテナンスの知識などは無い。
ガタが見えてきたら使うのを中止して、代わりになるものを使い、麓の町からくる行商人が売りに来るのを待たねばならなかった。
安く魔道具が手に入るとはいえ、ここは流通の中心から大きく外れた田舎である。
手に入る頻度というものは、流石に限られているから、近場で魔道具が手に入るのならば大いに便利だと言えるのだ。
さらに、新たな魔道具を購入するのではなく、くたびれるたびに修理できるのだとしたら、これほど助かることはない。
そのように、狩人として魔道銃をこよなく愛しているシュガーとしては思うのだ。
使い慣れた道具に愛着を持つのは、別に彼女だけの話でもないであろうし。
「少なくとも、私は結構利用させてもらうかな。
畑を耕してる魔道機械だって、メンテナンスが必要なのは当然だろうしね。
新しく買うとしたら、それなりにお金も掛かるし。
修理で済むならそれに越したことはないよ。そうでしょ?」




