絶対純潔少女
ねえ、神様
今日も鳥のさえずりで目を覚ましたわ
姉様たちとせっせと準備をして
聖歌を歌って、掃除をするの。
なんだか世界が光って見えて
虫や鳥でさえ神様に作ってもらったことを思うと
私も神様に愛されてるんだなって思えたの。
ああ、神様
世界ってこんなにも優しいのね。
あなたってこんなにも暖かいのね。
ねえ、神様
私、好きな人ができたわ。
その人のことを考えると、一人なのにニコニコしてしまうの。
その人のことを考えるときは胸がキューッとしまって少し苦しいの。
でもねその人が日曜の礼拝に来たときに、私は入り口で復活祭の卵を渡してたの。
彼が来るまでずぅっと胸が痛かったのに
彼の顔を見たときパアッと笑顔になれたの。
痛みなんてどこかに吹き飛んで
心の底から喜びが吹き出してね
彼の指と触れたときは口から心臓が飛び出るんじゃないかと思うぐらいドキンとしたわ。
ああ、神様
人生はこんなに美しいのね。
人生はこんなに楽しいのね。
ねえ、神様
今日、姉様が言ってたわ。
私達は純血でなければ、祝福を受けれないって。
こんなのってないわ、私は彼と今すぐハグをしたいのに。
そしてね、私知ったの。
ハグよりもすごいことを。
それはね子どもの作り方よ。
私は彼との子どもがほしいわ。
こんなことを考えることっていけないことなのかしら。
結婚したなら大丈夫だよね。
きゃあ、結婚だなんて。
また心が跳ねたわ。
でもね、こんなに心が喜ぶんだもの。
きっと神様も許してくれるわ。
ああ、神様
人生はこんなに素晴らしいのね。
人生はこんなに満ちているのね。
ねえ、神様
今日、知ってしまったわ。
彼にはガールフレンドがいるのよ。
たまたまクリスマスの町で見かけたの。
相手は私と違って背が高くて
へその出たはしたない服を着ていたわ
私はそれを見たとき、彼女を消してやりたいと思ったわ。
初めての感情にとても戸惑ったわ。
これが嫉妬と言うやつなのかしら。
牧師様が言ってたわ。
ルシフェルという美しい天使が
神様に嫉妬して悪魔になったと。
今ならルシフェルの気持ちがよくわかるわ。
私も、あの女の子のような感じなら
彼に会いしてもらえるのかしら
ああ、神様
人生はこんなに苦しいのね。
人生はこんなに悲しいのね。
ねえ、神様
私、彼と繋がったわ。
教会の裏に彼を呼び出して、やや強引にだけど。
初めての感覚で戸惑ったけど
私の身体を貪るように舐めていた彼は、赤ん坊みたいでとても可愛かったわ。
私は純潔を失ったけど、きっと許してくれるよね
だってこんなに気持ちいいんですもの。
神様はきっと知らないのね。
嫉妬される側の人ですもの。
私は彼を手に入れたわ。
神様、あなたでも知らないことを私は知っている。
私はあなたの言う事なんてもう聞かない。
これが自由、これが享楽、これが性愛
ああ、神様
あなたはとっても愚かね
あなたはとってもうるさいわね。
ねえ、神様
こうして祈るのは久しぶりかしら
最近、別の人がいいなと思い始めたんだけど
やっぱり彼は浮気をしてたわけでしょ?
別の女の子と関係を持ちながら、私を抱いてたわけだから。
だから私も彼と関係を持ちながら他の人を探し始めたの。
今は教会を抜けて毎日が楽しいわ。
男の人ってすぐに愛してくれるから。
最近は町工場のおじ様がいいと思うの。
だっておじ様は何でも買ってくれるのよ。
確かに性事は少し強引だけど
おじ様が買ってくれた物を見るたびに愛を実感するわ。
でも最近、おじ様の秘書とも関係をもったの。
やっぱり男も若いほうがいいのねと心から思えたわ。
ああ、色んな男を選び放題。
まったく、あのまま教会にいたらと思うとゾッとするわ。
ああ、神様。
あなたはいないんでしょ
あなたって嘘なんでしょ
ねえ、神様
最近、みんなが冷たいの。
お前はアバズレだとか
よくもレディに対して言えるわねって感じ。
私ってなんて可哀想なの。
私はただ愛してるだけなのに
誰も私を愛してくれない。
ってこんなこと
こんな偶像に祈っても無駄だよね。
私は愚かじゃない。
本当を見つめて、強く生きている。
あんな虚像を見つめて生きる教会の奴らと違う。
ああ、なんだかイライラする。
人生って面倒くさい。
人生ってつまらない。
ねえ、神様
大きな病気が見つかったわ。
お医者様の話によると余命は長くて一年だって。
でもそんなことどうでもいいの。
一番悲しかったのは
誰も私のお見舞いに来てくれないの。
なによこれ、私の何がいけなかったのよ。
私は私の好きなように生きただけじゃない。
私はこのまま誰にも愛されず信じていくのね。
許さない、許さないから。
私にこんな苦しみを与えたあなたを許せないから。
ねえ、一度でいいから返事をちょうだいよ。
私は死んだらどうなるの。
何もなくなるの?
お医者様は教えてくれなかったわ。
怖い、恐いわ。
無ってどんな感覚なのかしら。
今、気づいたわ。
私みたいに気持ちいいことに従っていきた人間は腐るほどいるわね。
私はそいつらの二番煎じってことなの。
ああ、神様
どうか助けて
私の人生をどうか許して
ねえ、神様
私はついに立てなくなっちゃった。
顔にはイボイボができて、自分で鏡を見るのも嫌になったわ。
今日、いつぶりかあなたの言葉を読んだわ。
ページを開くたびに温かいスープを飲むような。
とても安心した気持ちになった。
ああ、なんて愚かだったんだろう。
これまで生きてきて、最後にたどり着く答えが教会にいた頃と同じなんて。
でも知ったわ。
あなたは私を許してくださった。
自分勝手で愚かな私を。
ねえ、神様。
どうか向こうの世界で…私を…愛して。




