円
「うああ」
現世で死んだら昨今もなお旺盛を振るっている感じで異世界に転生した。所謂なろう系と称されるやつ。それにしてはタイトルは長くなくて申し訳ないんだけど。あと連載でもないし。
「わ、わー」
私が目を覚ましたのは平地。マジックだったら白。で、そこでまず、まあよくある感じでゴブリン的なのに襲われた。マジックで言ったら赤。白赤デッキかな?
「きいいい!きいいいいい!」
襲ってきたのは群れゴブリンだった。で、もしもこれがいやらしいやつだったら、そら当然いやらしい事されるだろうなあと思う。だってゴブリンだもん。ゴブリンってそういうもんでしょう?でも、これはミットナイトではないし、ノクターンでもない。無かった。幸いなことに。まして薄い本でも無かった。だから私はかろうじてそういう目には合わなかった。
「うわあああ!」
ゴブリンが持ってるあのバットみたいな棒が私の脳天をかち割る直前、後一秒も無く私は脳天から血を噴水のように噴き出すのか、あるいは三階から落としたスイカみたいになる直前、
「はあ!」
とか言って横に払うみたいな剣先が目の前を通過して、まあ、それだって怖かったけど。超怖かったけど。頻尿だったら漏らしてると思うけど。
「大丈夫か?」
とにかくなんやかんやで私は戦士とかそういう外見の人達に助けられた。鎧とか着てたから戦士だろう多分。
その後、その人たちと少し話をして、しかし当然のことながら世界線ごとに設定やら世界観が違う訳で、だから埒あかねえってなってとにかく街に連れていかれて、さらにその街のギルドかなんかに連れていかれてそこで私が異世界から来たみたいなので騒ぎになって、あれよあれよと大変なことになった。
正直しんどかった。まず人混みが苦手というのがある。あと、
「マジか。異世界から来たら勇者にされちゃうのかな?」
重たいそういうの。耐えられないと思う。そういうメンタル作りもしてなかったし。私。子供の頃から帰宅部だったし。
で、なんだかなんだで流されるままに適性チェックみたいなのをされて、芸能人格付けチェックみたいなのされて、その結果映す価値無しまで落ちたけども。
「しかし、ここの数値がなんかありますね」
って、なんかの魔法の適性があるっていう診断結果が下された。
「うそうそ」
そんな訳ねえって。どうせあれだって。せいぜい薄い本で慰み者になるくらいしかねえって私なんて。モブだって。モブ好きの人にしか好まれないタイプだって私なんて。NPCだって。
「いいから、とにかくこれを読んでみろ」
そう言って渡された魔術書だって読めなかったし。ちんぷんかんぷんだったし。ハングル文字みたいだったし。っていうかそもそも自分にMPの類があるとは思えないよね。MPあったらもっとあれだったと思うな。ヒールとかうまかったと思う。自己メンタルケア。セルフメディケーションとかうまかったと思うよ私。それすらド下手の私が。何故何かしら才能があると思われないといけないのか。余所でやれそういうのは。せめて長いタイトルだよ、じゃあ。
「・・・」
で、とにかくその日は眠りについた。しこたま眠たかったし、うん。こっちに来てから寝てなかったし。だからそれはもう泥くらい寝た。三月四月の環境の変化の感じでそれはもう疲れていたし。すっかり疲れてたし。異世界だし、襲われたし、歩いたし、映す価値無しまで落ちたし、でも期待されたし、なんか読めもしない本を押し付けられたし。
だから、とにかく疲れていた。あと生まれてこの方徹夜とかしたことないタイプだから私。寝ないとダメなタイプだから。何にも考えられなくなるから。
だから、とにかくあてがってもらったベットで寝た。粗末なベットだったけど、そんなの全然気にならなかった。
しかし自分の適性分野はなんていってたっけ?
「なんだったか・・・」
相手の状態を操るとかって言ってたか・・・。
相手の状態ってなんだろ。
ああ、ダメだ。
考えられない。
眠い。
今無理だ。
ねむい。
「ふあああああ」
目を覚ますと、それはもうすっきりしていた。
「魔法ねえ」
ベットから起き上がり窓の外を眺めながら考えた。いい天気だ。街を歩いている人達も皆元気そうだ。私がいた現代とは違うなあ。あっちに居た時はみんな深刻そうな顔をしてたけどなあ。日々何かしらのストレスに苛まれている人たちがたくさんいた。それに比べるとこっちはどうだ。皆の顔よ。まるで市の財源になるほど活気のある漁師町の市場みたいな。
「あ、」
それで思い当たった。
ステータス異常じゃない?
相手の状態を操るって。
「毒とか、マヒとか」
ポケモンとかでもよくあるやつ。
でも、そういうのだったら特定できるよなあ。こっちの世界にもとっくにあるだろうし。
「じゃあ」
逆流性食道炎。
びらん性食道炎。
内さまの健康診断企画で毎回のように出る。
これかも。
試しにギルドに行ってなんか魔法を試しうち出来る施設に案内してもらって、そこで心の赴くままに、願望を放射するように、なろうで短い話を書き散らすように地面に座ってエアキーボードしてみると、
「いだだだだ」
ある瞬間突然、相手方に立ってくれた人が腹痛を訴えた。
これだ!
それだった。
それだった。
現代病と生活習慣病を唱えられる奴だった私。
その後魔法陣グルグルみたいに円を書いてその中に文字を書けば願った相手に魔法が射出されるのも発見した。毎回キーボードを打つのも面倒だったから良かった。グルグルありがとう。
それからはもうあれだ。
敵方っていうの。魔王軍っていうのかな?
そういう手合いを次から次に鬱病とか、燃え尽き症候群にしてる。
不眠症とか、自律神経失調症にもしてる。
で、その方が、話も通じるっていうか。躍起になってこっちの話聞く耳持たない相手でも体調悪くしたりすると、話が通じる。で、殺さなくても済む分こっちも助かる。あとワンピースみたいだ。
という訳で、魔王城に向かってます。今。私。
あと、私はこの話もうこれでいいかなって思ってるから終わるけど、もし誰かこの設定を使いたいという方、現代病、生活習慣病の類。いましたらご連絡ください。で、ぜひ長編を書いて、なんかの賞をとってください。それで、参考でも協力でもいいから私の名前をどこか端っこでいいから書いてください。有名になってください。よろしくお願いします。タイトルも長いのにしていいから。全然いいから。