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アザラシと共におやすみ  作者: 曇天に泳ぐ魚
3/3

涙のぬくもり

その日、私は床でクッション代わりにしていたセサミ君を抱きしめて、早々に布団の中へ潜った。これ以上何も考えたくなかった、もう朝の事を思い出したくなかった。

何も考えたくなかった私は、布団の中に入った事はいいけど、タブレットで動画を見ながらぼんやり過ごす事にした。何故ならその時はまだ夜の八時。いつも十時くらいに寝ている私が、こんな早くに眠れるわけない



・・・・・・・と思っていた。



気がつくと私は、深い眠りから目覚めていた。タブレットで現在時刻を確認すると、もう翌日の五時頃になっていた。つまり私は、昨日の八時から翌日の五時まで、ずっと眠り続けていた事になる。

しかも、目覚めはとても快調だった。最近精神科のお医者さんから出された薬が日に日に減っているから、ここ最近は眠りが浅く、短時間しか眠る事ができずに、少し困っていた。

じっくり眠れた時に感じる爽快感が久しぶりにだったから、私はベッドから飛び起きてしまう。そして私の足の下では、セサミ君がちゃんと足を支えてくれていた。

私はすぐにセサミ君を抱きしめて、心の中でお礼の言葉を言い続けた。私にはこの快眠が、セサミ君がもたらしてくれた事であると、何となくだけど分かった。

眠りが浅いと、心が落ち着かなかったり、仕事に集中できなかったりと、日常生活が不安定になってしまう。また精神科のお医者さんに薬を増やしてもらおうかと考えていた矢先、私を助けてくれたのは薬なんかじゃなく、今まで大切にしていたセサミ君だった。


その後もベッドでセサミ君と一緒に眠ると、その眠りはいつも深くなり、夢まで見るようになった。ぬいぐるみと一緒に眠る事は子供じみているとは思うけど、セサミ君によって得られる日常のゆとりは、決してお金では買えないくらい、貴重で大切なもの。

逆に、私がまだ浅い眠りに悩まされているとしたら、私はこんなに有意義な生活は送れていない。あの時の母の言動に憤ったのも、睡眠不足が影響しているんじゃないかと思う。

最近は夢中になって眠りすぎて、ヨダレで枕が濡れてしまう事もしばしば。今度枕カバーにタオルでも巻こうか考えている。

私はこれからも、セサミ君を大切に使い続ける事を決めた。そして、ぬいぐるみであるセサミ君の体が破けた時には、現役引退という事で、明るく見送るつもりだ。でもその後、セサミ君2代目を買うかどうかは、少し悩んでいる。

ちなみに、私に心無い言葉を言った母は、後々になって後悔したのか、色々と私に気を使うようになった。そして、もう私の部屋にケチをつけるような事はしていない。

でも、決断の強さと記憶は薄れていくもの。再び何か言われた時、私は今度こそ母に反論しようと思っている。一体どんな言葉が向かって来るのか全く見当はつかないけど、これだけは言える。


「人から言われて嫌な言葉も分からない?

 分からないんだったら、『母』としても『人』としても恥ずかしい」



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