03話 絶望告げる美しきエルフ
「♪あーあ。あーあ。♪あーーあーーーあーーーあーーー。
♬どうしてあなたの目は金色なの? どうしてそんなに眩しく光っているの」
ああ、うぜぇ~~~~!!! 歌にしてディスってるよ一馬(?)は!
見た目本当に一馬かどうかは疑問だが、俺の真実を見抜く【竜眼】が間違いなく一馬本人だと見抜いている。
俺の隣にいるのはウザイ残念イケメンの一馬ではなく、絶世の美女エルフ。
それがやたら綺麗に響く歌声で、俺のマヌケをあざ笑っている。
ムカつくのに歌が素敵すぎて聞き惚れてしまうんだよ、悲しいことに!
なんなのコイツ!? なんでこんな危機的状況で、こんなアホやって遊んでいる奴にからかわれなきゃなんないの!?
「俺のことはとりあえずいい。で、いったいそれは何だ? まさかそれで『確定』とかしたんじゃないよな?」
「オホホホホ。まさかまさか。スキルに【性転換】があったのを発見したのさ。コストは15」
ここまで完璧に女体化できるのか。完璧に別人だ。確実に【魅力UP】も上げているな。竜眼で見ているから一馬本人だとわかるが。
「その瞬間だ。このキャラメイ使えば『リアルに究極アイドルが作れる!』と天啓を受けた。【魅力UP】を可能な限り上げて、芸事の才能もつけた。
さらに種族も【エルフ】にし、異世界最強アイドル誕生だ!
どうだ素晴らしいだろう。キサマは今、奇跡を見ているのだ!」
確かにちょっと圧倒されるほどの美貌だ。
こんな写真かテレビか舞台でしか見れないようなレアな美女だ。いや、エルフだからそれもない。
それがこんな近くにいるなんて………いやいやいや違う!
それは天啓じゃない。悪魔のワナだ!
「一馬、お前がさっき言ったセリフを言ってやろうか。『面白そうなスキルもあるが、手をだすなよ』だと!? 全力で手を出してんじゃねぇか! よくここまで自分の言ったセリフを裏切れるよ!」
美女エルフ一馬は「チッチッチ」とカッコよく指をゆらした。
くそっ! いつものそれも、エルフ美女だと見惚れてしまうな!
「あれは間違いだとわかった。こんな状況だからこそ、遊びの一つもやらないと焦ってつまらん失敗をしてしまうのだ。裕人も好奇心に負けてそのザマだ」
ぐっ……確かに一理ある。大変な状況ではあるが、一度くらいはこれを使って遊んでみた方が良かったかもしれん。そうすれば下手な好奇心に負けて、こんなことにはならなかったかもしれん。
「その理屈に分があるのは認める。だが、もういいだろう。とにかく俺は竜眼一つで異世界に行かなきゃならなくなった。俺を守れる強キャラになってくれ!」
「そうだな。エルフアイドルも十分堪能したし、そろそろ真面目にやるとするか。………ありゃ、タブレットがない?」
そういえば美女エルフ一馬の手にはタブレットがない。探して見回してみると、少し離れた場所に放り出されていた。
「ああ、そういやオマエの突然の奇行に驚いた時に放り投げたかもしれん」
そう言って美女エルフ一馬はタブレットを取りに行く。
「気をつけろ。そいつはかなり大事なものだから、もう手放すなよ」
「わかってるよ。んじゃ、今度こそ真面目にキャラメイクを………ありゃ?」
タブレットを手に取ってキャラメイクしようとした美女エルフ一馬が変な声を出した。
「どうした? 何かわからないことでもあったか?」
「ああ。ちっと見てくれ。これってどういう意味なんだろうな?」
そう言って美女エルフ一馬は俺にタブレットを見せたが、画面に何も見えない。
「………………? 真っ白だな。ヤバイな。故障でもしたか?」
「え? いや、そうじゃなく………そうか! 裕人、オマエのタブレットも見せてくれ!」
俺のタブレットは竜眼を選択したあとから動かしていない。
『キャラクター作成は完了しました。次は冒険者パーティーを組んでください』の文字が写ったままだ。
それを美女エルフ一馬はマジマジ見て言った。
「………………オレの目には真っ白で何も見えん。どうやらコレは、自分のタブレットしか見えない仕様になっているらしい」
「どうやってそんなことを…………いや、こんなことを引き起こしている時点で今さらか。で、さっきの話の続きだがどうした? お前のタブレットに何が写っている?」
「ああ。さっきまであったスキル選択の画面が消えてこんな文字が出ている。
『キャラクター作成は完了しました。次は冒険者パーティーを組んでください』だと」
――――――○△☆◆◇♠♡?!!!!
「お、おい裕人、どうした!? 顔が紫色だぞ!?」
「オマエのその美貌がそのまま絶望だよ! 確定しちまっているじゃねぇか!
この暗黒大女王が!! 世界の全てを闇に沈めやがって!」
「なにぃ!? オレはまだ確定を押していない………ハッ! さっき投げ出したときに弾みで押してしまったかもしれん!?」
「ああ~~~! お終いだ! さっきさんざんスキル選択に戻せないかいじってみたが、ダメだった! 一馬、お前はそのエルフ美女のまま異世界に行ってゲームをやるしかない!」
「バ、バカな! エルフは後ろ盾がなきゃ奴隷狩りとかにあうんだろ!? こんなエルフがいたら確実にさらわれる! オレだったら絶対さらう! ヤバイ! どうしよう!?」
呆然と見つめ合う竜眼俺とエルフ美女の一馬。
供に仲良く地雷を踏んで言葉も出ない。
ちなみに一馬の選んだスキル選択は次のようなものだ。
種族:【エルフ】
才能選択:【性転換】【歌唱力】【音楽才能】【演技才能】
能力作成:【魅力UPⅠ~Ⅳ】
アイドルエルフ作りに全力投球してんじゃねぇか!
仮にも友人だったから、あえて今までは言わないでいた。
だが、今この瞬間だけは声を大にして言おう。
「こんな異世界まできて、どこまで貢いでんだ! くたばれ、腐れドルオタ!!!」
一馬までも地雷を踏む!
裕人はこのままゲーム前に終わってしまうのか?