30話 ポイントを振り分けよう
タブレットの『第一ゲーム実行中』の文字が消え、『第二ゲーム実行中』に変わった。
と同時に名簿で『クリア』の文字と共に名前が青で書かれた者の名は、『ノークリア』の文字と共に赤く変わった。
『ノークリア』の文字ととも名前が赤く表示されていた者は灰色になり、『デリート』の文字がつく。
これにより8名が脱落し、52名が第二ゲームへ進むことになった。
そして現在もっとも関心のある事柄。
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【第一ゲーム終了によりキャラメイク解禁】
:これよりポイントを獲得したら何時でもキャラメイクが可能になりました。
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という文字がタブレットの連絡欄に出現し、キャラメイク画面が復活した。
そして前回と違う部分がいくつかある。
まず種族選択が消えた。
カルマーリアのエルフやノリミの有翼族のように虚弱な種族を選んだ者も、そのままで何とかしなければならない。
さらに腕力、素早さ、体力、器用さ、魔力のUPは5段階が最高だったはずだが、6段階目が現れた。これはマユの魔力UPに【魔力UPⅥ】が出たことでわかった。
そしていくつかの新スキルも追加された。もっとも、かなり高ポイントを消費するので、獲得する余裕はないが。
「それじゃキャラメイク会議を始めるぞ。俺達【はねる双魚】は当初のキャラ作成で失敗した者ばかりだ。今度こそは失敗しないよう、慎重に会議で能力を獲得する」
第一ゲームで獲得するポイントはクリアで15ポイント。それにゴブリン百匹斃すごとに5ポイントがつく。
それで獲得したポイントはそれぞれ以下の通り。
俺、りっちゃん25ポイント。
マユ20ポイント。
ノリミ15ポイント。
ライデン30ポイント。
カルマーリア30ポイント。
カルマーリアのポイントが多いのは、アビスレインの襲撃のときにあえて多めにゴブリンを殺させてポイントを稼がせたためだ。
これから必須になるであろう回復役になってもらうために。
「まずカルマーリアだ。決めた通り光魔法を覚えてくれ。あと体力も上げて、冒険者に絶望的な虚弱をマシにしてくれ」
「ああ。しかし聖女ポジなんてオンラインゲームでもやったことはないんだがな」
カルマーリア:
【光魔法才能】(10)【魔力UPⅠ、Ⅱ】(計15)【体力UPⅠ】(5)
「りっちゃんは狐人の速さを利用した戦闘スキルだ。武器才能も今使っている短剣に合わせて」
「コーンわかりました!」
リッカ:
【素早さUPⅠ、Ⅱ】(計15)【器用さUPⅠ】(5)【剣才能】(5)
「ノリミちゃんは【器用さUP】が4段階もあるので命中精度が高い。だから弓を覚えてもらう」
「弓ですか。私にできるでしょうか?」
「才能さえあれば何とかなるようになっている。種族的にも空から攻撃するのがあっているし、これがいい」
ノリミ:
【弓才能】(5)【腕力UPⅠ】(5)【素早さUPⅠ】(5)
さて、ライデンだが彼自身こう言った。
「ワシは今回ポイントは使わん。保留にする」
「何故だ? 確かに君は強いが、それでもできるだけ強化した方が良いんじゃないか?」
「うむ。どうも黒幕どもの目的がワシらを選別し強化することのようだからの。ワシは現在能力に困っていないし、もう少し連中のことがわかってからどうするか決める」
「そうか。まぁ、いつでもキャラメイクはできるし、それもいいか。貧弱な俺らは奴らの思惑がどうあれ、生き延びるためにポイントを使わざるを得ないがな」
次はマユ。彼女は最強の土魔法の能力をさらに上げる。
マユ:
【土魔法才能】(10)【素早さUPⅠ】(5)【器用さUPⅠ】(5)
「器用さUPは何のためだ? 照準は俺がやるのだが」
「【眠る白羊】のみなさんから聞いたんですが、【器用さ】は照準だけじゃなく、魔法の術式を覚えるのにも影響あるそうです。術の応用なんかもできるようになるとか」
さて俺だが、少々意外な選択をした。
【空間魔法才能】(15)【魔力UPⅠ】(5)【器用さUPⅠ】(5)
空間魔法はけっこうな格の高さらしく、普通の魔法才能がコスト10に対し、コスト15。
加速、減速、加重、減重などの魔法が使える。
高レベルになれば空間を広げたり、別地点へワープしたりできるらしい。
「………? どういうことだヒロト。マユとコンビを組んでいるから、魔法使いを目指すのはいい。しかし空間魔法?」
「目的は空間魔法の【加速術】だよ。マユの土魔法をいち早く撃ち出すためにこれにしたんだ」
「ふむ? なら何故【素早さUP】に使わなかったんじゃ。魔法で速度を上げるのは魔力の点からも効率が悪かろう」
「なに、【加速術】を使うことは魔力の消費が多くなってもメリットがあるのさ。実はこの会議以前から、マユと何の能力を獲得するかを話し合ったんだ」
「やはり私の土魔法では、これからのゲームでみんなを生き残らせるのに足りませんからね。私の魔法をさらに進化させるため、ヒロトさんに空間魔法を覚えてもらいました」
「コーン? まゆゆんの魔法はすごい威力ですよ。十分だと思いますけど?」
「問題は距離なんです。攻撃土魔法は威力が高い分、射程が短い。弓の一斉射撃にでもあったら対処できません」
「距離か。確かにアビスレインの襲撃も、弓が一番厄介じゃったのう。それでどういう結論になったんじゃ?」
「そこでクリアポイントでヒロトさんに空間魔法才能を獲得してもらいました。これで念願の長距離攻撃ができるのです」
翌日、アレク坊ちゃんがくれた賭け金で、全員にランクの高い装備を買った。
高い防御力を持つ装備で第二ゲームに臨めるのは幸運だ。
そして俺は空間魔法に属する【加速の腕輪】を買った。本来は自分にかけるために腕輪の形になっているそうだが、無論自分以外にもかけられる。
これからマユの考え通りになるか、ためしてみるのだ。
そのまま郊外の開けた場所に移動し、手頃な岩を見つけると、千メートルほど離れる。
みんなは俺の後ろで見守る。
「よし、やってみろ。本当にモノになればよいのう」
「やってやるさ。マユ、いけ!」
「はい。では………召喚!」
マユは俺が持つ杖で、ロックバレットの術式を作動させる。
ただし、召喚した岩は10個程度。
獲得した【土魔法才能】と【器用さ】で、【ロックバレット】の術式をかきかえ、召喚する岩の数を少なくする代わりに高威力で射出させることが出来るようにした。
「疾く速さを与えん。かの岩につらなる疾風迅雷の加護を与えよ!」
俺も腕輪で【加速術】を起動。
その術を自分にではなく、召喚された岩にをかける。
高威力で射出される岩をさらに加速させることで、長距離土魔法を可能にするのだ。
「しかし俺は魔法使うなんて初めてなのに、合体技とか」
「主力武器にしたいので頑張ってください。照準お願いします。ではいきます!」
俺は杖をかかげ、竜眼で目標の岩に照準を合わせる。
マユは【ロックバレット】を撃ち出した。
――――ガガガガガガガ!
目標の岩にロックバレットが次々と刺さり、穴を開けた。
「すげぇ! 千メートルも先なのにこの威力! これなら弓より遠くから攻撃できる」
「一応成功ですね。あとは発動するまでが長いので、杖を構えた瞬間、射出できるようにしましょうか」
「そんなことできるのか?」
「ええ。土魔法才能で基礎の術式はだいたいわかるようになりましたし、その応用で土魔法以外にも術式はわかると思います。やはり術式まで操れるようになってこそ、本物の魔法使いですから」
すげぇな。ノームは『地中に潜み研鑽する賢者』とも言われているが、マユは正にそうだ。
とにかくこれで念願の長距離攻撃は可能になった。
いつでも来い、第二ゲーム!




