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竜眼でゴブリンゲーム  作者: 空也真朋
第3章 ゴブリンの森でつかまえて
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26話  生きる者消える者

 俺達は帰還し、シオリのもとへノリミとミュンを送り届けた。

 その日から彼女らは一緒に遊び、三人仲良く過ごした。

 きらめくように笑う少女らに、終わりがくるなど嘘のような気がした。


 やがて第一ゲームの期限(リミット)

 タブレットの制限時間が0:00(ゼロ)になった瞬間、シオリとミュンは煙のように消えてしまった。

 二人の衣服と持ち物が、ノリミの別れを惜しむかのようだった。

 ただ一人残った、ノリミの迷子になったような顔はいまだ忘れられない。



 ――――その翌日。


 俺達は消滅(デリート)も見届けたことだし【はねる双魚】に帰還する。

 ノリミにはユリアさんがついているので、それ以外のメンバーに挨拶をした。


 「世話になった。特に俺のわがままを聞いてもらったことには深く感謝をする」


 俺の言葉にニキッド、グレン、シュウスイ、サンカイの四人は快く返してくれた。


 「ああ。格好良く女の子を運命から助けたんだってな。しかし冒険者がヒーローの真似事なんかしてたら命がいくつあっても足りないぜ」


 ニキッド、あんたが言うか。だったら、あんたらのあのいちいち決めるポーズは何なんだ?


 「ウワッハッハ。じゃが愚かであろうとも、男前じゃったぞい!! ユリアも本当は助けたがっておった。内心じゃ感謝しておるだろうよ」


 サンカイ。あんた、現代でもそんなしゃべり方してたのか?

 いや、ウチにもそんなやつが一人いたか。


 「それにしても消滅(デリート)か。召喚魔法らしいが、どこへ送られるやら」


 「ゲームに脱落した者の運命です。どこへ送られたにしても、多分生きてはいないでしょうね」


 まったくふざけたマネをしやがる。黒幕の奴はいずれ全てを暴いてやる。


 「それでヒロト。黒幕についてだが、ナジス公爵配下のアビスレインって奴だそうだな。公爵自身はどの程度関わっていると思う?」


 「わからん。だがアビスレインの正体は知性があり召喚魔法にも長けたゴブリンだ。そんな奴を家臣にしている以上、『何も知らない』とはいかないだろう」


 「考えてみれば、私の知る限り転移させられた者は皆公爵領の冒険者ギルドに所属しています。黒幕の勢力範囲にいるってことですね」 


 「とにかく、もうしばらくゲームを続ける。だが十分な力をつけたら、公爵家にあたってみるつもりだ」


 「俺達は他の転移者と連絡をとってみる。もし一定の連携を取れるようになったら協力できるかもしれない」


 「いちおう期待しておく。それじゃユリアさんにも挨拶してくる」


 そう言って手を振り四人と別れた。

 そしてユリアさんとノリミのいる部屋に向かった。

 部屋をノックすると、徹夜して少し憔悴したユリアさんが迎えてくれた。


 「悪かったな。ノリミちゃんを君一人に任せてしまって。ノリミちゃんは大丈夫かい?」


 「ええ、ようやく落ち着いたわ。それでどうするの、あの()?」


 「【はねる双魚(うち)】で引き取るさ。俺が助けちまったし、最後まで面倒みないとな」


 「でもあの()。ロクな技能も持っていないし、戦闘だって期待できないんでしょう? この先のゲームで生き残れるとは思えないんだけど」


 それは俺を責めているようにも聞こえた。

 厳しくなっていくであろうゲームの中、非力なあの子が生き残れる可能性は少ない。

 残酷な運命が待っていながら、助けたことは正しかったのか否か。

 それでも………


 「【はねる双魚】は元々いらない子たちの集まりのようなもんさ。それでも全員第一ゲームを生き延びた。あと一人くらいどうにかなるだろ」


 「危ういくらい甘いわね。この先のゲームは簡単じゃなくなっていくでしょうに。でも、守ってあげなさい。あなたのせいであの子は生き残ってしまったのだから」


 背中に重いものを背負ったような感覚をおぼえた。

 俺はノリミを迎えるべく部屋の奥へ入っていく。

 すると、それまで黙っていたマユが盛大なため息をついた。


 「はぁ。まったくヒロトさんはどうしようもなくアホですね。みんなに何と説明したものか」


 ああ、それもあったな。


 「そいつはマユが考えてくれ。俺が考えるよりいいアイデアが出そうだ」


 「ヒロトさん! あなたは理不尽リーダーだったんですね! これだから男ってやつは!」


 すまんな。こんな大きな気まぐれにつき合わせてしまって。

 俺は部屋の隅で小さくうずくまっているノリミに話しかけた。


 「ノリミちゃん。俺達と来るか? 君を助けたのは俺だし、君がよければ【はねる双魚】で面倒をみようと思う」


 「は、はい! ありがとうございます。どうかよろしくお願いします」


 ノリミは涙のあとの残る顔で言った。

 そして俺の肩にいるマユにも挨拶をする。というか、手を伸ばす。


 「マユちゃんもよろしくね」


 「うわぁぁ、さわらないで下さい! 女の子が人形感覚でいじると本当に怖いんですから!」


 「ちょっとだけお願い! やさしく持つから」



 マユとじゃれ合うノリミを見て思う。


 何はなくとも、この娘には生きる意思がある。


 だったら何とかやってやるさ。


 ゲームスタートの失敗で終わる者だけじゃないのだから。


次回は主人公以外の視点の話をやります。あと、連休中はできるだけ投稿を早めます。

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