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竜眼でゴブリンゲーム  作者: 空也真朋
第2章 俺たちはゴブリンが たおせない
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18話 救いなき異世界

 あの事件はゴブリンが突然大量発生して、それに俺達は襲われたことになった。

 町中にいきなり千匹ものゴブリンの死体が現れたことは、冒険者ギルドや治安維持の騎士達をひどく驚かせた。


 それはともかくゴブリンゲームだ。

、アビスレインの襲撃を上手くいなしたことで、クリアが厳しかったオレとカルマーリアとりっちゃん。そして当然ながらもライデンのノルマは達成クリアできた。

 しかしあの場でゴブリンを殺す手段を持たかったマユは、いまだノルマを達成できていない。

 そしてあの事件で一番酷い手傷を負ったライデンは現在負傷待機している。彼が回復次第クエストに行きたいので、それまでにマユの術具を買わねばならない。

 そこで現在、マユの術具を買うための資金集めに奔走中。


 「カルマーリア、それじゃ今日もしっかり稼いでこい。準備はいいか?」


 「おう、いつでもいけるぜ。見よこの勇姿!」


 彼女は美しく着飾ったドレスの裾を持って、くるんと回る。

 無邪気なものだ。安い男に高い女は重すぎる。


 主な収入源はカルマーリアの酒場での歌。冒険者家業では四人の生活費すらままならないので、これが中心になってしまうのが泣ける所だ。(マユは土精霊(ノーム)なので食費がかからない)


 そして俺はそのマネージャーになった。

 彼女にからむ交渉事は俺がやるのだが、これがつらい。

 なにしろ有名な劇団からスカウトに来たり、やんごとない貴族や商人から愛人の勧誘がひっきりなしに来るのだ。その対応は実に神経を使う。

 一応、ギルドマスターのオバちゃんにこう頼んではいる。


 「ギルマス。カルマーリア引き抜きの話は一切取り次がないで欲しいと言っているでしょう。彼女は冒険者をやめるわけにはいかないんだから」


 「ちゃんとやっているよ。あんたにまわしているのは門前払い出来ない連中だけさ。あとめんどくさい連中。それくらいはあんたの方で上手くやっとくれ」


 つまりギルマスすら手に余る困った奴らに断りをいれるのが俺の業務。

 糞っ。これに鍛えられて帰ったら、ハイパー交渉スキルを獲得してエリートサラリーマンになれそうだぜ。


 さて、カルマーリアを無事に舞台へあげた後。

 普段は袖の方で待機しているのだが、今夜はその前にやった仕事で憂さがたまり、少し飲みたくなって客席の方へ来た。

 そこには最近そこの給仕の仕事についたりっちゃんがいた。


 「あれ、ヒロトさんにまゆゆん? ここに来たってことはお客さんですか?」


 「ヒロトさん、お疲れで飲まなきゃやってられません。さっきまでよく来る貴族のドラ息子とカルマーリアさんを巡って泥仕合ですよ。あんなクソガキにも貴族だから敬語で親切対応して話さなきゃならないんですから」


 確かにあれはキツかった。こういったことは一馬なら上手く………いや、あそこで歌っているのが一馬で、その一馬であるカルマーリアが問題なわけで………。

 いかん。だんだんワケがわからなくなってきた。

 俺は頭を振って考えるのをやめた。


 「それとりっちゃんの仕事ぶりも見たくてね。給仕の仕事は大丈夫かい?」


 「もちろんです! まかないが激マズ以外は何の問題もありません」


 そうなんだよな。店の残りのスープがまかないだが、よくあれで金が取れるものだ。それとも異世界ではあれが味のスタンダードなのか? 舌の奢りすぎた日本人には厳しい世界だ。

 俺はりっちゃんに軽めの酒とつまみを注文した。

 マユはカウンターの片隅に可愛くちょこんと座って俺と話す。


 「それで? 結局あの人の『園遊会で歌ってほしい』って話は断るんですか? けっこうなギャラでしたが」


 「行けるわけないだろう。引き受けたら数日は拘束される。それまでに期限が来て君は消滅(デリート)だ」


 「残念です。引き受けたらもうワンランク上の術具が買えたんですが」


 「欲をかいている場合じゃないだろう。ただでさえ期限はヤバくなっているのに、君はまだゴブリンを一匹も倒していない」


 「大丈夫ですよ。私の魔力は極大です。術具さえ買えば、ゴブリンの大量にいる場所で範囲魔法を使って数回で終わります」


 「いや、それなんだがな………」


 俺はマユに言うべきか迷った。しかし問題を先送りしてもしょうがないので言うことにした。


 「この辺りのゴブリンはもうほとんど狩られてしまった。ゴブリンが大量にいる場所なんて多分ない」


 「…………は? ゴブリン討伐は冒険者には人気がないと聞きましたが」


 「それがな。あの大量のゴブリン発生で、ギルドが緊急にゴブリン討伐料を上げたんだ。さらにカルマーリアが襲われたことで、義憤に駆られたファンが一斉にゴブリン討伐を慣行した。おかげでこの辺りのゴブリンは一掃されちまった」


 「…………もしかして私、ピンチです?」


 それに俺が答えようとしたとき、ふいにフードを被った女性客が俺に声をかけてきた。


 「あそこで歌っているエルフの関係者というのは君か?」


 「ああ。もし何らかのスカウトの話なら、残念だが………」


 「いや、彼女の部族名を知りたい。最近、出身がわからないエルフ(同胞)が何人か確認されている。彼女もその一人だ。いったいどこから来たのか調査している所だ」


 そう言ってフードをおろした彼女の顔は耳が長く端正な顔立ち。

 それはまごうことなき真性のエルフ!

 ヤベェ。本物(モノホン)が来ちまった。どうしよう?


 俺がなんと答えようかしどろもどろしていると、カウンターに乗っているマユが、いつの間にか来た小柄で筋肉質なオッサンにヒョイッとつまみ上げられた。


 「わあああ! 何なんですオジサン? 離してください!」


 「冒険者になった土精霊(ノーム)がいると聞いてきたが……本当じゃったか。人型になる精霊もたまにいるが、ここまで意思を持っとるモンは初めて見る。のう若いの。こいつはどこで見かけた? 冒険者などにした経緯を詳しく教えてくれんかね」


 そのオッサンは筋骨逞しく背の低い、ヒゲもじゃの面。

 このオッサン、ドワーフか? ヤベェ。マユに興味を持ちやがった。


 「そこのドワーフ。割り込みはやめてもらいたい。今、私が彼と大事な話をしている所だ。その土精霊(ノーム)を持ってどこへなりと消えるがいい」


 「彼女は俺の仲間だ! 勝手に持っていかせるな!」


 「ふん、儂もこの土精霊(ノーム)については聞かせてもらわねばならん。この若僧、エルフなんぞに渡す気はないぞ!」


 「俺までモノ扱いかよ。どっちもお断りなんだが」


 ああ糞っ。この二人、いきなりヤベェ質問持ち込んで来たと思ったら、ケンカはじめやがった。

 こんなことならおとなしく待合室で待ってりゃ良かった。

 まったく次から次へとトラブルばかりで救いがない。


 ああ。こんなとき日本にいたなら、ドルオタ活動して推しの応援でもしてれば、少しは気が晴れるのに……………今は仕事がアイドル絡みだった。

 だったら、異世界転生してチート能力貰って無双して好き勝手生きるアホ小説でも読めば、少しは癒やされるのに………………。

 あ、ここが異世界で能力ももらっているんだった。


 救いがまったくねぇーーー!!!






 

次回より新章開始!

最後に残ったマユのノルマ達成のために遠出を。

そして他の転移者パーティーと接触します。

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