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竜眼でゴブリンゲーム  作者: 空也真朋
第2章 俺たちはゴブリンが たおせない
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11話 明日への決意

 討伐終了後の夜。

 俺たち【はねる双魚】は冒険者ギルドに併設された酒場にいる。

 冒険者が仕事の報告を終えて報酬を受け取ったあと、ここで派手に使ってくれるというシステムか。なるほど、上手くできている。


 さて、たしかに今回の討伐報酬は相当もらった。

 『見守るだけのギルド職員がクエストに乱入した』という不始末の謝罪分も含めて。

 だが、俺たちがここにいるのは打ち上げのためではない。

 今日の反省のためなのだが、それどころでない問題が起こっている。

 カルマーリアが男にからまれているのだ。


 「なぁカルマーリア、こっち来なよ。ちょいと手こずったレッドアイベアを討伐したときの話をしてぇんだ。そんな装備さえ揃えられないお遊びパーティーなんかにいないでさ」


 「え、ええ。お誘いはありがたいですが、私も自分のパーティーの話し合いがあります。どうか私の仕事を邪魔しないでください」


 カルマーリアに話かけているこのニヤケ男。軽薄そうな性格とは裏腹に、かなり戦歴がありそうなパーティーの一員なのだ。

 装備も実戦用のものでかため、身のこなしも隙が無い。

 竜眼を閉じているので正確にはわからないが、多分かなり強いだろう。


 だが厄介なことに、コイツはカルマーリアにかなりご執心なのだ。

 さっきから何度も断っているのに、しつこくカルマーリアに誘いをかけている。

 とうとうライデンが口を出した。


 「うるさい奴じゃのう。ええから向こうへ行っちょれ。ワシら、これから討伐終了後の話し合いじゃ。それともその硬そうな鎧、へこませてやろうか?」


 「ハン。少々強く生まれて、”本物”ってやつを知らないようだな。

 やってみな。コイツはロックリザードの一撃すらビクともしない逸品だぜ。人間の力じゃどうにもなんねぇんだよ」


 「お、おいライデン。その鎧、本当に硬いぞ」


 密かに竜眼を開けて調べてみた。その鎧は対モンスター用の確かな逸品だ。


 「心配いらん。少し黙らせてくるわい」


 ライデンは立ち上がると、男の前で構えをとった。

 そして拳ではなく、掌底で鎧をうつ!


 ――――ドンッ!……… 


 そんな音を響かせたが、鎧には何の傷跡も残せなかった。


 「確かに硬いの。お前さんの言う通りじゃったわい」


 そう言ってライデンは席に戻った。

 その瞬間だ。ニヤケ男はガクッっと膝をついた。

 打たれた場所をおさえ、苦しそうに震えている。


 「お、おいラズィ、大丈夫か!?」

 「てめぇ! 仲間に何しやがった!?」


 「さっき打った場所を見てみぃ。鎧はどうにもなっておらんじゃろ。大方、さっきのショックで古傷でも疼いたんじゃろう。今夜はお開きにして寝かせてやることじゃな」


 その古参っぽい冒険者連中は、ニヤケ男を連れて行ってしまった。


 「お、おいどうやったんだ? まさか本当に古傷とかじゃないよな?」


 「浸透脛(しんとうけい)じゃ。鎧を壊すのではなく押し込むことにより、そのまま鎧を己の拳に変えて打つ。古武術には対装甲用の技もいくつかあるわい」



 「さすがですねライデンさん。ですが装備の一件だけはあのパーティーの言う通りですよ。慢心せず装備を揃えてからクエストを行ってください」


 ふと、横合いから女の声がした。

 それは今日俺たちのクエストに同行したギルド職員のブランナさんだった。


 「【はねる双魚】のみなさん。さっきはライデンさんの実力を見たくて、成り行きにまかせてしまいました。申し訳ありません」


 「あ、ああ別にいいよ。それよりなにか話がありそうだな。なら座って話さないか?」


 「はい。では遠慮なく」


 ブランナさんは席に座ると、カルマーリアに向かって言った。 


 「カルマーリアさん。余計なお世話かもしれませんが、同じ女性として忠告させてください。あなたは普段、フードで顔を隠すぐらいのことはした方がいいと思いますよ。あなたは魅力的すぎます」


 正直、それは俺も同感だ。いまもあちこちチラチラと、カルマーリアの顔姿を見ようと男たちの視線が集まってきているのだ。

 反省会がやりにくくってありゃしない。


 「そしてそんな女性はしばしば厄介事を引き寄せるタネになります。特にここは荒事仕事を請け負う冒険者ギルドの酒場。そこにあなたがいたなら……言わないでもわかりますね?」


 「…………できん」


 「はっ?」


 「それだけはできんのだ。ブランナさんよ」


 「な……泣いている!? あの、どうしたんですカルマーリアさん? 口調も変ですよ!?」


 「オレにはわかる! 彼らの憧れる女を一目見たいという気持ちが! 聞こえる! そのためならいくら貢ごうとも悔いは無いという男の魂が!」


 カルマーリアの奴、心が一馬に戻ってやがる! 腐れアイドルおたく一馬に!


 「オレは絶対にファンから逃げて顔を隠したりしない! たとえ艱難辛苦が来ようとも! その果てに死が待ち受けようとも!」


 「え……エルフの宗教か何かですか!? 死をも恐れないって!」


 こんな体になっても、腐れドルオタの精神だけは亡くさないか。

 そんな無駄な執念はいらん。


 「よくわかりませんが、わかりました。そういうことなら口は出さないでおきましょう。ではもう一つ、ギルドより連絡です」


 こっちの話の方が本命みたいだな。ブランナさん、ギルド職員としての真剣な顔になっている。


 「『はねる双魚』はクエストは達成したので、規則によりこれからも討伐依頼を受けることはできます。ですがやはりちゃんとした装備がなければ、今後は討伐の依頼をまわさないことになりました」


 「うん? そういう理由なら、どうして今回はまわしたんだ?」


 「ギルマスは、正直何の成果もあげられずに失敗すると見越して出しました。冒険者という仕事を舐めてかかる連中への、現実を教えるお仕置きですね」


 「でも俺たちは達成した。まぁ、そちらの職員さんも大分手伝ってくれたから、実力とは言い難いが」


 「レイオルくんの件については謝罪します。もっともカルマーリアさんとリッカさんをクエストに連れて戦わせた貴方に、私も思う所はありますが。

 それにこの成果はライデンさんの圧倒的武力あってのもの」


 そうなんだよな。結局ライデン以外のメンバーは一匹もゴブリンを倒せなかった。


 「探索技能が素晴らしいことだけは認めます。ですがライデンさん以外のメンバーは一時冒険者からは身を引き、実績ある師の元で鍛え直してから仕事に就くことをおすすめします。このまま冒険者を続ければ、あなたたち皆死にます」


 「ううっ」

 「あうんっ」

 「コ、コーン……」


 ブランナさんは席を立って酒場より出て行った。この先はパーティー内の話だとわかるあたり、優秀なギルド職員だ。


 「ギルド職員の言葉だけに重いですね。ヒロトさん、これからどうします?」


 「ブランナさんの忠告をきくのは論外だ。二ヶ月すれば消滅(デリート)とやらの死が待っている。ライデン。これから俺たちを大光院流とやらで鍛えるとして、ゴブリンと戦えるようになるか?」


 「無理じゃ。体が細すぎて、技を教える段階の功夫(クンフー)になるまでに3年はかかるわい。二ヶ月以内にゴブリン一人80匹となると、探し出す時間もかかる。鍛える時間などないのう」


 「この第一ゲーム、戦闘力をかなりあげないと厳しいものだったな。マユ、君の魔法の方はどうだ? 使ってみて、練習すれば何とか武器にできそうか?」


 「ダメです。最高の魔力を持っていれば強力な魔法を使えるかと思ったんですが、魔力を魔法にするのに時間がかかりすぎるし、狙うことができません。誰か魔法の師匠でも探して習わないと」


 「やはりこっちもダメか………」


 「ヒロト。スキル選択でしくじった私たちに未来はないのかな………」


 「ヒロトさん………」




 正直、あきらめてしまいたい気持ちはある。


 それでも、逃げ出しちゃいけない気持ちの方が大きい。


 俺はリーダーだ。こんなにすがって見るみんなに『諦めよう』なんて言えないだろう?


 「俺はあきらめない。取りあえず金は手に入ったし、明日は武器屋や道具屋を見ていこう。自分に実力がないなら、武器や道具の力で何とかするんだ」


 そう。子供だって銃を使えば屈強な大人を殺せる。

 ここに銃は無いが、魔法はある異世界。

 実力のない俺たちでも、ゴブリンと戦える魔法道具がきっとあるはずだ。


 

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