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竜眼でゴブリンゲーム  作者: 空也真朋
第2章 俺たちはゴブリンが たおせない
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09話 初のゴブリンクエスト

 初クエスト当日。

 俺たちはクエストの以来をしたテボヌ村に来て、村長に挨拶をした。

 露骨にガッカリされた顔をされたのは、まあしょうがないだろう。

 装備すらまともにないド素人冒険者が来たのだから。


 俺らの今日の目標はゴブリンの巣の場所の特定だ。

 それだけでも評価になると、宿のおっさんから聞いた。

 やたら深く広い森林地帯からゴブリンの巣を見つけるなど、相当の探索技術がいるからだ。


 さて、今現在俺たちは村の片隅でギルドのサポートメンバーを待っている。

 彼らは俺たちの審査と、万一の場合の撤退の補助をしてくれる。もっとも彼らの手を借りるようなことになれば、パーティーの評価は大きく下げられ、討伐ができなくなる。

 そしてそれを待つ間、戦闘準備に木槍作りなどをしている。みんなが拾ってきた手頃な枝をライデンが槍にしているのだ。


 「ライデン、木槍作りをそろそろ切り上げてくれ。ギルドのサポートメンバーが来たようだ」


 「そうか。んじゃ、リッカ。この木槍の束を持ってワシの後ろについて来よれよ。戦闘になって替えを求めたらすぐ渡せ」


 ライデンは幾本も作った木槍を荒縄で束ねながらりっちゃんに言った。

 今日は戦闘は避けるつもりだが、もし遭遇戦になったらライデンにまかせるしかない。りっちゃんにはその助手を任命した。


 「はい、がんばりますライデンさん!」


、俺とマユは竜眼を使ってのゴブリンの巣の探索。カルマーリアは………ただついて来るだけだな。


 「まったく、ここ数日の展開の早さには目が回りそうですよ。私はただの女子高生だったのに」


 俺の肩の上のマユがそうこぼした。


 「そうだったな。君が一番ファンタジーな見た目なんで、ただの女子高生の君を想像できないが」


 「お互い様です。私も竜の目のヒロトさんがサラリーマンとか想像できません」




 さて、来たのは男女の二人組。

 俺ははっきりと彼らの容姿を見ることはできないが、気配からかなりの剣士と感じる。

 挨拶をしようと進み出たそのときだ。

 男の方が俺を無視し、俺の隣にいるカルマーリアの方へ声をかけた。


 「やあ君。今日の担当するメンバーですか? ぼく、ギルドサポートのレイオルっていいます。よければ今夜食事でもしませんか? ぼくも冒険者家業を長くやってたし、この仕事をやっていきたいなら色々教えられることもあるし」


 「え、ええ。それより、リーダーのヒロトへ挨拶をして頂きたいのですが?」


 あらら。カルマーリアのやつ、早速ナンパされやがって。

 助けてやろうとしたときだ。

 そのギルド兄ちゃんは、「ゲイン!」と思いっきり女の方からケツを蹴り上げられた。


 「(いて)え!」


 「レイオル。サポートメンバーの規約を忘れたの? そんなあなたが何かを教えるなんて、ちゃんちゃらおかしいわね」


 その女、チラリとカルマーリアの方へ目を向けて言った。


 「一目見たときから『厄介を生む女性』と思いましたが………想像通りですね」


 そして今度は俺に向き直り、姿勢を正して言った。


 「【はねる双魚】のリーダーですね。ギルドを代表してご挨拶をいたします。サポートメンバーのブランナとレイオルです。………目をどうかされているんですか?」


 彼女は俺の目のおおいを見て聞いてきた。


 「リーダーのヒロトです。生まれつき強い光に弱くてこうしています。問題なく見えるので、ご心配なく」


 ブランナさんは俺の目の前にスッと手をだした。


 「失礼。指は何本出しています?」


 ヤベェ! まさか試しにくるとは! 

 俺の今の目の状態は、周囲に何かあるのはわかっても、はっきりとしたものまでは見えない。目の前に手があることはわかっても、その指が何本出されているかなんて細かいところまではとても……………


 …………いや、確か昨日ははっきりと見えた瞬間があったな。

 いきなりカルマーリアに腕を組まれて驚いたときだ。

 その時、確かに彼女の顔もそれを見る男たちの顔もはっきり見えた。

 あの時、俺はカルマーリアの突然の行動に周囲をはっきりと見たいと願った。

 ――もしやできるのか?


 俺は竜眼に『周囲をはっきり見たい』と集中する。


 すると、朧気ながらまわりの景色が鮮明に頭に浮かんできた。


 もっと見えろ! もっと鮮明に! 明鏡止水!


 「……………………三本です。ハーハー、ゼイゼイ」


 「見えてはいるようですね。ずいぶん時間はかかりましたが。それに息を切らしていません?」


 「いえ、まったく! それより今日の仕事について話しましょう!」


 少し魔力を消費してコツを掴んだら、安定して景色が見られるようになった。

 ブランナさんの方は茶髪でよく使い込まれた皮鎧を着ている。

 男のレイオルはまだ十代くらいの少年で金髪。ちょいと軽そうな雰囲気とは裏腹に、プレートアーマーを着てこれまたかなりの剣士に見える。


 「そうですね。今日のクエストについて話しましょう。

 サポートメンバーの我々二人が同行しますが、冒険中なにもなければ我々はあなた方に話しかけません。あなた方も我々に話かけず、我々はいないものと思って行動してください」


 「相方はチラチラとこちらのメンバーを見て、話しかけたそうですが?」


 「無視してください。規約を破って話しかけられたなら、蹴飛ばしてかまいません」


 「その役はライデンでも?」


 「けっこうです」


 レイオル君は「ヒィィーーー!」と悲痛な叫び声をあげた。

 これでクエスト中、カルマーリアに余計なことはしないだろう。


 「今日は装備などが不十分ですので、探索にとどめます。ゴブリンの巣を見つけるだけでも評価になるのですよね?」


 「ええ。半分の達成として認められます。ですが探索にも技術はいりますし、襲撃の危険もあります。そのあたり、大丈夫ですか?」


 「問題ありません。では、今からクエストを開始します」


 「あ、最後に聞かせてください。とても戦闘向きに思えない華奢なエルフ女性の方がおられますが、何か特殊な技能でもお持ちですか? エルフなので魔法が得意とか」


 「使えません。あいつは歌って踊れる無能エルフです」


 ブランナさんの怒気がかすかに感じられた。

 確かに荒事に向かない女を荒事のクエストに連れ回すなど、ちょっとした悪党の所業だろう。

 とはいえ、それを気にしてもしょうがない。

 俺は皆を集めて監視役の二人に聞こえないように言った。


 「それじゃ、ゴブリンの巣を竜眼で探しながら行く。みんな俺の言う通り進んでくれ。カルマーリアは俺の後ろで二人に竜眼が見えないよう壁になってくれ」


 こうして【はねる双魚】は初クエストに出発した。





 さて、俺はもう竜眼でゴブリンの巣を見つけて真っ直ぐ進んでいるのだが、当然端から見ればてきとうに歩いているだけのように見える。

 後ろからついてくる二人からこんな話声が聞こえてきた。


 「ブランナさん。連中ずんずん歩いていくけど、探索とかしてるんですかね? ゴブリンの痕跡なんかを探しているようには見えませんが」


 「デタラメに歩いているだけです。端から見ても完璧な素人ですね。何の成果もあがらず終わるだけです」


 「じゃ、あんま奥へ行かないでくれ。帰りがキツくなる………いや、もっと歩き回っていいや。カルマーリアさんの背中サイコー!」


 「うるさいですよ。仕事に集中しなさい。ちゃんと目印もつけていくのですよ。連中、それすらやっていないようですから」


 …………ふむ。確かに探索時には目印くらいはつけるべきだったか。

 俺が無事なら必要はない。が、逆にいえば俺が意識不明などの状態になったら帰れなくなる。

 後ろの二人がかなり大きな声で会話しているのでつい聞いてしまったが、けっこう反省点も気がつく。

 まぁ今回は今さらだし、そろそろ着くころだ。準備しよう。

 俺はりっちゃんに近づき、小声で言った。


 「りっちゃん。ゴブリンの巣はこの先50メートルだ。君が巣を見つけたことにして演技してくれ。後ろの二人には竜眼のことを知られたくないからな」


 「わかりました。演技ならおまかせコーン!」


 ゴブリンの巣の前にくると、りっちゃんは声をあげた。


 「みんな! ゴブリンの巣をみつけたコーン! 気をつけるコーン!」


 「ええっ、まさか!?」

 「おいおい嘘だろ!? 素人のバカヅキにも程があるだろう!?」


 うむ、サポートメンバーの二人はいい感じに驚いているな。

 ゴブリンの巣は洞窟で、そこには数匹もの緑色のサルみたいな生き物が屯していた。手には木槍やら石斧などの原始的な武器を持っている。

 さて、適当に見つけた理由を言って帰るか。………と思ったのだが。


 「あっ! ライデンさん!」


 ライデンは電光石火でゴブリンの巣に突入した。

 そして木槍を次々に繰り出し、周囲のゴブリンを貫いて倒していった。

 ゴブリンを全滅させると、今度はさっさと巣穴へ入ってしまった。


 ああもう、今日は探索だけで帰るつもりだったのに! どうしよう?





 7話で主人公がまわりの景色が見えない設定にしてしまいましたが、一人称小説では致命的だと遅ればせながら気づいてしまいました。

 なんと周囲の描写ができない!

 なので今回から見えるよう設定を変更しました。

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