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竜眼でゴブリンゲーム  作者: 空也真朋
プロローグ
1/39

ゴブリンを狩るルーキーパーティーたち

 『爆音の幼女ギタリストと伏魔の奇面』が運営に削除されてしまいました。

 修正があまりに大変だったので、これの掲載は断念することにいたしました。

 代わりに新作の『竜眼でゴブリンゲーム』をはじめることにしました。

 前作を応援して下さった方々。これも応援よろしくお願いいたします。

 「すまねぇな。もうおたくら『白羊』にはゴブリン退治はまわせねぇ」


 「何故です?【眠る白羊(うち)】のパーティーが何か問題でも?」


 ここはとある冒険者ギルド。冒険者とは、村や町に被害を与えるモンスターや犯罪者の討伐。及び難所にある鉱物や植物の採取を請け負う者の総称だ。冒険者ギルドとはその仕事を依頼者から受け、冒険者に振り分ける機関である。

 さて、そのギルド支部の奥にある小部屋。

 ここでこの支部のギルドマスターと、ここに所属して一月ほどの新冒険者パーティー【眠る白羊】の女リーダーが二人で話をしている。

 

 「いいや、問題なんてあるもんかね。【眠る白羊】。ここに来てまだ一月だというのに、他の実力者パーティーに遜色ない実力。メンバーはみんな礼儀正しく、荒くれ冒険者につきもののモメ事も一切ない」


 「では、どうして? こちらもゴブリン退治を請け負わねば困るのですが」


 「この辺りの大規模なゴブリンの巣はもう殆どが潰れちまったのよ。眠る白羊(おたくら)と隣の支部に所属している【猛る金牛】ってパーティーにな」


 この辺りは自分らが来たとき、相当のゴブリン被害のあった場所であったはず。

 それがほとんど潰れたとなると、あの【猛る金牛】というのは思った以上に実力者のパーティーだったらしい。

 やっかいな連中とかち合ってしまったものだ。


 「【猛る金牛】ですか。さすが優秀ですね。(ノルマも全員とっくに終わっているでしょうに)」


 「おや、知っているのかい?」


 「話したことはなく、本当にただ見ただけですが。全員が相当の強者ぞろいのようでしたね」


 「そこで、じゃ。ここからが『白羊』のリーダーであるアンタをここに呼んだ理由だがね。あんたら、ゴブリン退治は離れてしばらくワシの言う通りに動いてみんかね?」


 「…………ゴブリン退治を離れて?」


 「ああ。確かにゴブリンは厄介な魔物(モンスター)じゃが、数を大きく減らした以上、討伐ポイントは下げざるを得ん。付加価値の高い素材は何もないし、数がいなければそれほど脅威でもない魔物じゃからからのう」


 「ええ。おまけにかなり不快な連中ですね。悪知恵が働いて評価より大分厄介なのも困りものです」


 「実に割りに合わん仕事じゃが、もうそれはせんでよろしい。これからはその他高ポイントのつく仕事を眠る白羊(おまえさんがた)に回してやろう。報酬も多くなるし、パーティーのランクもすぐにアップする。

 ゆくゆくはこのギルドの看板パーティーになってクランを作ってくれんかね。お前さんもかなりの美人さんだし、看板として実に申し分がない」


 嬉しそうに未来図を話すギルマスを見て、女は心の中でため息をついた。


 (魅力値なんて上げなきゃ良かったわ。こんな未開の野蛮人みたいな異世界人相手にモテてもしょうがないし、厄介なことを考える連中が後をたたないし)


 「どうかね? あんたらにとっても随分といい話だと思うが」


 女は黙って数枚の銀貨をテーブルに置いた。


 「うん? 何じゃこの金は?」


 「別ギルド移転の紹介状をお願いします。近日中に我が【眠る白羊】は当ギルドを離れ、ゴブリン被害の多い地域へ移るつもりです」


 「………それが返事か。惜しいのう。お前さん方なら上を狙えるというに」


 「お互い残念ですが、こちらの方針ですので」


 「【寄りそう双児】【鉄壁の巨蟹】【咆吼する獅子】【笑う乙女】これらのパーティーに聞き覚えは?」


 それらはみな、事のはじめの日に聞いたことのあるパーティー。

 女はこのギルマスが何がしらの情報を得ようとしていることに気がついた。

 なら正直に答えるわけにもいかない。


 「さあ? 聞いたことがある気もしますが、今は思い出せませんね」


 「”秘密”か。実はそいつらは『金牛』も含め相当にやるルーキーだそうだが、ゴブリン退治以外はやらないそうだ。そいつら担当のギルマスがぼやいていたよ」


 「まぁ。『眠る白羊(ウチ)』と方針が似ていますね。困った偶然ですこと」


 「………まぁいい。お前さん方は本当によくやってくれた。快く送り出してやるよ」


 そう言ってギルマスは紹介状を書いてくれた。

 正直、彼の提案を拒むのは心が痛む。

 下心アリとはいえ、このギルマスには本当に世話になったのだ。

 しかし情に流されてゴブリンのいなくなったこの地へ留まるわけにはいかない。

 まだノルマを達成してないメンバーが二人もいるのだから。


 「ほら、紹介状じゃ。最後に話してくれんかね。いったい何が起きている? 

 確かにゴブリン共の被害は大きかったが、他のモンスターも同じように被害がある。お前さんや他のルーキーどもは何故ゴブリンだけ狩るんだね?」


 そう聞かれても答えようがない。自分も何故異世界に連れてこられて、ゴブリン退治などをやらせられるのかわからないのだから。

 故に返事はこう返す。


 「お世話になりましたギルドマスター。お互いの幸あらんことを」


 そう言って素っ気なく出て行く。

 答えようのない質問を答えようとするのは時間の無駄でしかない。

 ギルドを出ると、女は天を仰いでため息混じりにつぶやく。


 「本当に何なのかしらね。”ゴブリンゲーム”って」





 ギルマスと話していたお姉さんは主人公ではありません。

 次回より謎の『ゴブリンゲーム』の始まった経緯から物語がはじまります。

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