【表紙】

敵戦車の速度が落ちた。この速度なら大丈夫だ。履帯に引き込まれる前に、下に潜り込めるだろう。信管を撃発させる。
(ひぃ、ふぅ、みぃ)
野中少年は、すっと身を起こし、敵戦車の前方に駆け出した。横切って伏せ、すぐに仰向けになる。二つの九九式破甲爆雷を胸と腹の上に置く。一つを両手で掲げると、そこへ、敵戦車の腹がやって来た。ひとつめが戦車に吸着する音を、野中少年はたしかに聞いた。それから、ふたつめ。
「い や さ かー」
閃光が奔り、轟音がしてソ連軍戦車が地面から浮く。そして、数秒後に大爆発を起こした。