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迫真バトロア部 生存の裏技  作者: 野生味先輩
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アンニュイ先輩

最近の例のアレつまんなすぎ


体が動かない...だるい....目が開かない...きつい.....そろそろ起きないと部活に遅れる.....


「やばい遅刻するう‼︎...あっ」


絶叫と共に起き上がってみると、そこは森の中だった。

目の前には昨日の糊口をしのいだ水を調達した池があった。

森の情景と見事に一致し、ディ○ニー映画に出てきそうなほど綺麗で風流な光景だ。

これが観光で訪れた旅館での目覚めだったら最高の旅行の思い出となるだろう。

しかし現実は非情であった。


「夢じゃないんか.....きっついわ」


普段ギリギリまで睡眠時間を削りゲームをやっているお陰で毎日起きる時は今日の目覚め

は最悪なのだが、今日の目覚めはそれ以上に最悪であった。

ああ...けたたましい目覚しの音色で目覚めたかった。

なんで小鳥のさえずりで目を覚ましてんよ!ファンタジーじゃねぇんだぞクソッタレ!

心の中でそう毒づく。

それで今の問題が解決する訳でもないが。


「あ〜くっそ、昨日はどうしたんだっけ?

いつの間に寝てたんだ俺?えっと確か...あっそうだった、気絶したんだっけ.........」


少し記憶があやふやになっていたが、目覚めて時間が経ち頭が冴えてくる。

昨夜スマホに入っていた地図を見て、怒りと不安と疲れで寝落ちしてしまったんだった。

思い出しただけでまたあの不快な思考が湧き上がってくる。

どうやって地球に帰る?帰れるの?方法は?てかそれ迄生き残れるの?

様々な不安が脳の下の方から噴き出し、自分の脳内を支配する。

今度は気を失うまでには至らなかったが、代わりに吐き気が込み上げてきた。


「うぅ...おっオォぇ....どうすりゃいいんだよぅ」


全くどうしていいか分からず涙が溢れる。

装備一式だけでこんなよくわからない所に放り出され、泣かないやつはどうかしている。

こみ上げる吐き気を必死に抑えていると何時しか、こんな事態に巻き込んだ奴への怒りが込み上げてきた。

自然現象なのか人為的なものなのか分からないが、そんなことは関係ない。

兎に角怒りたかったのだ。


「畜生!なんだってこんな所に俺はいるんだよ!フザケンナよクソッタレ!俺を家に帰しやがれえ!!ああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」

静かな森に男の心からの叫びがこだました。


さっきから大分喜怒哀楽の表現が激しいが、こんな事態に気が動転するのも無理はないと思う。


その後はもう一頻り泣いて怒って悲しんで喚き散らして睡眠で回復した僅かな体力を使い果たした。

こんな状況にスマートな振る舞いなんて出来ないし、やりたくない。

こんな時は頭の中で溜め込むのでは無く、自分の内面を全てさらけ出して少しでも精神へのストレスを軽くしないと後々本当に参ってしまう。

彼が生きてきた人生で編み出した楽に生きる解決法だ。

こうして一時間ほどもがき苦しんでいた。


筋肉痛でガチガチになった体を起こす。

内側の毒を吐き出したので心は軽い。

さっきまで泣き喚いて歪んでいた顔は今では能面のように無表情になっていた。

頭をリセットしたので今の脳内は真っ白だ。

これから自分がどうやって生き延びるかコマンドを入力していかなければならない。

地面に胡座をかきながら腕を組み眉間にしわを寄せて考える。


「まぁまずは食料っしょ、兎にも角にも」


5秒考え、結論は出た。

偏差値10くらいのアイデアだが、目下これが一番の問題だった。

現状食料となるものがエナジードリンクぐらいしかなく、固形食に至っては皆無だった。

これをなんとかしなければ明日あたりに栄養失調で動けなくなりそうだった。


「森で食べられそうな実とかきのこ取ってくるかな?でも食中毒怖いしな〜薬は有るけど無理して試すほどでもないな」


手持ち薬品を消費してしまったら次に何時手に入るか分からない為、それと避けられる危険はなるべく避けようと考えているので、敢えて危ない橋を渡る必要はないと思ったからだ。


「となると...あれしかないな」


視線を枕代わりにしていたバックに向ける。

そして一緒に立て掛けてある黒光りした長物を手に取る。

相変わらず重い、重いが昨日よりかは重いと感じない。

きっと体がこの重さに慣れてしまったのだろう。


「使い方よくわからないんだよなぁ... 」


映画やゲームなどで見ている分には良いが、いざ自分が使ってみるとなると立ち竦んでしまう。

昨日色々弄り回したおかげで大体の構造は把握したが、今一不安が残る。

取り敢えず立ち上がりセーフティをロックしてある状態から解放し、いつでも撃てる状態にする。


「あれ、AKって一番下が連射だっけ?まぁ単射でいいよね」


セーフティを安全な一番上から真ん中にして銃を構える。

そして銃床を肩の付け根の部分に密着させ頬と挟んで固定する。

右手は引き金に、左手は銃前方のハンドガードをしっかり握る。

ゲーム等の受け売りだが、正式な銃の構え方なんて学んでいる筈も無いのでこれはしょうがないと思う。

そしてその姿勢を維持し、50m程離れた池の反対側の木の幹を狙ってみる。

リアサイトの調節の仕方がまだよくわかっていないが、まあこの距離なら外さないと思う。

と、ここまでは順調なのだが、いざ引き金を引くとなると躊躇してしまう。

心の中にあった言葉では説明できないような茫漠とした罪悪感を銃を操作する事によって誤魔化していたが、それも限界に達した。


「やっぱ怖いわ、てかここで撃ったらせっかく寄ってきた獲物が逃げちまうよな」


そう言い訳のように独り言を呟くと、射撃姿勢を崩し、銃を胸元のところで構え森の中へ入っていった。

少し離れた場所で練習しようと思ったからだ。

池には10分おきぐらいに肉食草食問わず様々な動物が訪れていた。

狩猟をするにはもってこいの場所だ。

だが、獲物を狩る訳でも無いのに発砲したら動物が驚いて逃げてしまう。

そのままこの水場に寄り付かなくなってしまうかもしれない。

1発目で仕留められればいいのだか、流石に人生で初の試みなので練習しておきたかった。

それに生き物を殺すという事への罪悪感がよりはっきりとしてきたので、その思いから少しでも逃れたかったのだ。


「大丈夫やで、何時も屠殺された肉食ってたじゃん。ザリガニだって踏んづけて潰しちゃった事もある。それと同じ事するだけやから大丈夫、きっといける」


そう自分に言い聞かせるように何度もブツブツと呟く。

これまで生きてきた中で哺乳類を殺めた事は一度も無い。

小さい頃にザリガニを誤って踏み潰してしまったぐらいだ。

その時も幼いながら罪悪感に囚われ、何日もその事で悪夢を見てしまう程だ。

多分これから己と同じぐらいの大きさの動物を撃ち殺すのだろう。

それが怖くてたまらなかった。

だがそうしないと自分の生命が危ない。

葛藤しながら暫く歩くと木が疎らな場所を発見した。

ここなら50mくらいの射程は確保出来そうだった。


「ここでいいかな、周り広いし」


円形になっている広場のような場所の端に立つと、深呼吸をして気分を落ち着かせてから先程と同じ動作を繰り返し銃を構えた。

そして引き金に指をかけて銃がぶれないよう、力を調節して引いた。


カチッ


「あれっ?なんで?」


予想に反して弾は発射されなかった。

反動に備えて強張っていた肩から力が抜ける。

もしかしたらこの銃は最初から、若しくはこれまでの間に破損してしまったのかもしれない。

もしそうなら食料をどうやって確保するかもう一度考え直さなくては。

不安が募る。

それと同時に奇妙な安心感も感じていた。

生き物を殺めなくてもいい、そんな事を考えていた。

だがその安心感はすぐに霧散する事になる。


「薬室に弾装填するの忘れてたンゴ」


単純なミスだった。

恥ずかしい。

気分を入れ替え、力いっぱいボルトハンドルを引きチャンバーに銃弾を装填する。

そして今度こそと思い射撃姿勢を作る。

リアサイトとフロントサイトの線上に的が収まる。

そして引き金を引いた。


パパパパパァン!


ボルトにケツを叩かれ弾倉内から銃弾達が連続して高熱のガスと共に飛び出す。

ライフリングのおかげで銃弾に回転する力が加わり、それが安定した弾道を描く。

僅かに山なりの弾道を描いたそれは的としていた木の幹のど真ん中に命中し、あるものは木の端を擦り、あるものは奥の木の根元に着弾した。

事前に予想していたより多くの傷を木々に負わせた。


「あっぶね〜、フルオートとセミオート間違えてたわ、怖っわ」


彼が所持しているAKMのセーフティは三つに分かれており、一番上は安全、つまりロックが掛かった状態、二番目の真ん中はフルオート、引き金を引けば引いている間だけ弾が発射される。

そして一番下がセミオート、引き金を1発ごとに引く構造になっている。

勘違いをして真ん中がセミオート、下がフルオートだと思っていた。

落ち着いてセーフティのセレクターを一番下にセットする。

これでセミオートになる。

一回発砲したからかさっきまでの罪悪感はとうに立ち消え、代わりにこの銃で獲物を仕留めたいという欲望がここの中に生じていた。

考えてみれば味噌汁用のアサリを生きたままお湯の中に入れる方が残酷ではなかろうか?

若しくは生きたまま体をバラバラにされ、そして食べられる魚の活け作りの方が残酷ではないのか?

そのレベルにまでさっきまでの考えは低下していた。


「うん、倫理的な問題とかメンドクセ。

シー○ェパードじゃないんだからそんなこと考えてたら頭おかしなるで。

てか銃撃つの楽し杉内」


疲労も空腹も何故か今は余り感じない。

そしてもう一回構え、的に狙いを絞る。

今度は1発だけ発射され、目標のやや下に着弾した。

更にもう1発撃ち、今度は真ん中に見事命中だ


「Foo↑〜肩痛った!取れるわボケ!左手もちょっと痺れたし耳もキーンとするぅ」


さっきまでの暗い気分は吹っ飛び、ニコニコしながら大声を出せるまでには元気になった。

早く野営場所まで戻って狩猟をしようと自然と早歩きになる。


「よっしゃこれならいける!お昼は肉食うぞ!」


とりあえずは食料不足を解決する目処が立ったので気分は上々だ

これで暫くはやっていけると思う。


スランプ

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