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馬鹿王子を甘く見てはいけない

問題です。

主人公の嫁は誰だ!?


この話までの間に、僅かな伏線があります。これで分かった人は凄いです。

オチを読む人たちは是非考えて下さると幸いです。


 とても楽しそうにその場で思いついた計画を父に話した私は、無事に国王直々に許可を得た。


 だが、ただ1つ残念な事がある。

 それはマイホームの建設が延期になった事だ。これは私も予想外だった。


「多くの者が公国へ渡る為の金がいる。お前も少なくとも1年はまた国に戻って来ないだろう? 自分の屋敷が欲しければ、今度はしっかりと自分の足で帰って来い」


 と、夢の『庭付きお屋敷』を人質もとい屋敷質にされてしまった。

 まあ、私もただでは起きなかった。嫁の希望も聞いた屋敷にするべく、帰国後の予算増額を勝ち取った。屋敷の大きさを1.2倍に庭を2倍くらいに出来るだろうか? 夢が広がる。


「予定していた公爵への拝命式だが、こちらも見送る事にする。その方が動きやすかろう」


 確かに公国の学園に通いながら領地の経営は難しい。

 それに目を付けていた人材に、現在学生でいる者たちが数名いる。共に留学させれば丁度良いし、私自身もこの世界での学園生活は初めてだ。


 くっくっく。たっぷりと楽しませて貰おうじゃないか!

 ティーグラッセ公国よ!!


「おまえまでそんなに黒くなってしまったとは、私も教育を間違えたのか………」


 と父の嘆きの台詞が聞こえたが、私は次兄ほど黒くはないですよ?


 その後はその次兄にも相談して、計画の穴がないかを見直したり、身分を偽って学園に留学する為の書類を偽造したり等々、とても充実なお祭り準備期間を得てティーグラッセ公国へ2回目の逃亡生活が開始した。





「アルベルト兄様。お久しぶりです」


「オーフェリア様。私はただのアルとお呼び下さい。でないと私の正体がバレてしまいます」


「いーえ、アルベルト兄様。私は怒っているのです。勝手に国を出るなど、どれ程大騒ぎになったと思っているのですか?」


 余裕を持ってティーグラッセ公国へ向かった私の最初の難関は、妹であるオーフェリアであった。


「お父様は自分が父親失格でないかと落ち込んで大変だったんですからね!」


 私が家出した直後の話は、出戻った今では笑い話として当時を知る者たちから聞いて知っている。

 その1番の被害者は妹で唯一の王女であったオーフェリアだという事を。子離れできない父親って大変よね?


「すまなかった。オーフェリア」


 出戻った直後の父の鬱陶しさを知っているだけに、素直に謝るしか出来なかった。


「本当に心配したんですからね………」


 私が素直に謝ったせいか、妹の態度が軟化した。

 王族同士、しかも異性であった為、兄たち以上に接触は少なかったが、家出をするまでは、こうしてたびたび頭を撫でていた事を思い出した。


「こうしてアルベルト兄様になでられるのは久しぶりのような気がします」


「あぁ、あれからもう4年半は経っているからな」


 やはり家族というものは落ち着く。次兄と話をした時も、長兄から王位を譲る譲らないのやり取りをした時も、同じくらいには気持ちが落ち着いたものだ。


「父上からの手紙は読んだのかい?」


「はい」


 まあ、読まなければ出迎えになんて来ないから、読んだのは間違いないんだけどね。


「いざという時はアルベルト兄様と国へ帰るように………と」


「あぁ。この国は危機意識が足りていない。帝国が内乱状態になったせいで平和になったと勘違いしているのか知らないが、このままだと間違いなく滅亡する」


 まあ、滅ぼすのは私なんだけどね。


「はい………。ファン様におかれましても、その………本国へご報告が行ってるそのままの方と思われます」


 報告が来たままの人物という事は、顔は良いけど頭は悪く、勉学が嫌いで我侭、その上、根拠もにないのに自信に満ち溢れている取り扱い注意の札が貼られている壊れやすいお荷物状態という事か。

 テンプレすぎて笑えないな。


「そのファンについては心配しなくて大丈夫だ。既に手を打ってある」


「え?」


「ん? どうした? オーフェリア。そんな意外な顔をして」


「え、いえ。アルベルト兄様は先ほど国境を越えて公国へ来てすぐに(わたくし)が出迎えたはずでした。ですので、既に何かされているとは思わなかったもので………」


 何か言い訳染みた返答が返って来た。

 どうせあれだ。私の企み顔を見て次兄のようだと思ったに違いない。父もなぜか計画を話している時にそのような表情で見られた。

 私も次兄も、妹も父も血の繋がった家族なのだから似ているのは当然だろ?


「やれやれ。誰かに似てるとか思われたのなら心外だな。私はあそこ(・・・)まで真っ黒なつもりはないよ?」


「あ、いえ。バラン兄様と似ている顔をされたなんて思っていません」


 うん。妹は可愛い。父が子離れ出来なくなっていた理由が分かるというものだ。


「私は誰もバラン兄上とは言っていないぞ? オーフェリア?」


「え? あぅ、その………」


 こんな簡単な誘導尋問に引っかかってあたふたする妹もある意味では元々の性格は王族としては向いていないのだろう。

 それでも、政務になれば性格が変わったように凛とした空気を纏う。子供の頃からそうだった。


 そんな(まつりごと)では公務を支え、個人の部分では精神的に支えになってくれそうな妹よりも、公子が夢中になる相手とは、どれほどの相手だろうか?

 一応、相手の性格についても予想が付いてはいるが、この辺は会ってから確認しておかないといけないだろう。


 さてさて、どうなる事やら。私の異世界学園生活ライフ。




 

「アル様はどちらのお生まれなのでしょうか?」


「そんな事をお聞きになられては、アル様をお困らせなるだけですわ」


「そんな事も分からないのだから庶民は配慮が足りないと言われるのです」


「でも、ファン様は学園では身分など関係ないとおっしゃっていたわ」


「そうですよ。男爵と言っても平民と大差ないじゃない」


「アル様。あちらの方々はおいておいて、来週に開かれる学園主催のパーティーについてご説明致しますので、向こうで2人きりでお話致しませんか?」


 さて、学園主催パーティーの説明を受ける前に、この会話の事を説明しよう。


 学園に留学と形式で入学したのだが、父へ提案したとおりに身分を隠して入学した。

 時期としては、来月に最年長学年の第3学年生が卒業を迎えるという凄く微妙な時期に、第2学年生として学園に潜り込んだ。ちなみに妹のオーフェリアと『馬鹿王子』改め、馬鹿公子ファン君は第1学年生だ。


 私が自分の為に用意した身分が、『やんごとなきお方の血筋を引いていてラテスウィート王国から身分を保証されているお方』とした。

 私が所属する事になったクラスにそのまま説明『やんごとなき~』で学園の教師に説明させて、自己紹介の時に帝国語を混ぜて挨拶をした。


 当然、学園の教師も私が『やんごとなき~』の説明しか受けておらず、帝国語を習っていない者たちにとっては完全に正体不明の高貴なお方っぽい人として潜入する事に成功した。


 まあ、いまさらな補足だが、ラテスウィート王国とティーグラッセ公国は言葉も文字も同じだが、帝国は侵略を繰り返して大きくなってきた元々は遠い国だったので言葉は違う。

 

 そんな感じで『やんごとなき高貴なお方』として学園中の生徒たちに認識されて、一部の優秀で先の読んで帝国語を学んでいた将来有望な人材たちには、帝国の関係者と認識されて学園での立ち位置を確保した。

 ちなみに、馬鹿公子ファン君との関わりはない。学年が1つ違って学ぶ内容自体も違っている為、全く会う事がないのは確認済みだ。


「ちょっと、抜け駆けしないでくださいな。アル様に最初に話しかけたのは私でしてよ?」


「あら? アル様には婚約者様はいらっしゃらないのですから、誰がお話掛けになっても問題ないはずですよ?」


「ア、アル様。私の父が商会を経営しております。一度我が家に遊びに来て頂けませんか?」


 この会話が成り立っていない状況は、分かりやすく言えば、全て別々のお嬢様方が発した言葉だ。

 そして私は今、囲まれている。人生一番のモテ期という奴に違いない。嫁探しに来た私としては選びたい放題というわけだ。学園生活万歳!


「皆様。ティーグラッセ公国では、婚約者でもない相手にむやみやたらと抱きついたり話しかけたりするのが流行っていらっしゃるのかしら?」


「オ、オーフェリア様!?」


 馬鹿公子ファン君は、学園内で会う事はないのだが、妹のオーフェリアだけは頻繁に顔を合わせる。


「アル様も、ラテスウィート王国から留学生である自覚をお持ち下さい。このような事をされていては我が国の品位が疑われる事になります。どうかご注意下さい」


 オーフェリアは久しぶりに会った時のように甘える事もなく、凛として学園内で高貴な者としての立場で振舞っている。

 当然、そんな振る舞いを見た私に群がっていたお嬢様方は、蜘蛛の子を散らすように逃げていく。


 こうした風景が、段々とこの学園での日常風景と代わっていくのにそう時間は掛からなかった………。





「ファン様。やはり、卒業記念パーティーでのオーフェリア嬢の断罪をお止めになられるのですか?」


「あぁ。せっかくオーフェリアが新しく留学してきたアルとか言う庶民に現を抜かして、それを理由に婚約破棄をして私の愛するアリアを婚約者にする計画だったが、今回は中止した方が良い」


 皆さん、こんにちは。

 現在『逃走王子』から盗聴王子にジョブチェンジした私アルベルトが、学園にあるとある(・・・)部屋のとある(・・・)隠し部屋からとある(・・・)方々の会話を盗み聞きしております。


 学園の建物は古くて趣と格式のある立派な建物が多い為、予想通り偉い方々がいざという時にお隠れになったり逃亡する為の隠し通路や隠し部屋が、わんさかございました。

 数々の異名を持つ私に掛かれば、このような隠し部屋を発見するなど、造作もないことです。


 そんな訳で、さてさて、今日はどんなお話が聞けるか楽しみですね? 皆様。


「それはどうしてでしょうか? ファン様」


「私の側近ともあろうものがそんな事も分からないのでは困るぞ。まあ、今日は私も気分が良いから教えてやろう」


「はっ! ありがとうございます」


「来年からは帝国の者が我が学園に留学してくるのだ」


「それは本当でございますか?」


「あぁ、父よりのこの手紙にそう書いてあった」

 

 ようやく、この馬鹿にもこの話が伝わったか。

 こいつらが勝手に婚約破棄で自爆して、私の計画が早々に崩れる所だった。

 自分の父親からの手紙くらい毎回ちゃんと読みやがれ。身分を偽って留学する為の根回しより、お前に手紙を読ませるための根回しの方が大変だったぞ!

 

「そこで私はこの幸運に感謝した。帝国が我が国に恐れをなした事もそうだが、帝国に私が如何に偉大かを知らしめる良い機会になると思ったのだ」


「それはどういう事でしょうか?」


 本当にどういう事でしょうか? 手紙はちゃんと読んだよね? っていうか手に持っていらっしゃるよね? もう一度見直して? ね?

 

「婚約破棄はその帝国の者が来た時に、行った方が効果的だと気付かんのか?」


 それは、まったく気付きませんね。

 ………おかしいな。手紙には妹のオーフェリアとの婚約を一度白紙にする旨が記されていたのは確認したのに。


「はっ! まったく気付きませんでした。ファン様の慧眼恐れ入ります。そうすれば、帝国にもファン様の偉大さが伝わるという事ですね」


 上司が上司なら、部下も部下だ。いや、部下というより太鼓持ちか?

 そいつの目は慧眼じゃなくって節穴で、偉大じゃなくって肥大としか思われんぞ?


「そうだ。だから、卒業記念パーティーでオーフェリアを断罪するのは見送ってやろうという訳だ。奴も少しの間、命拾いしたな。ハッハッハッ!」


 そう笑いながら、部屋を出て行く。

 寮で時々廊下から響いていた笑い声はこいつの声か………。あれは時々安眠妨害をするからイラっと来ていたんだよな。


 まあ、笑い声についての恨みは置いておき、隠し部屋から先ほどまで馬鹿たちが密談していた部屋へと入る。

 そして、取り残された手紙を再度確認した。


『来年より帝国から留学生がやってくる。これも我が国の外交努力の賜物だ。その留学生は婚約者を探している高貴なご令嬢との事だ。帝国との絆を強める為に、一度お前の婚約を白紙に戻して帝国の者との婚約を結びなおすように話を進める。お前は学園でその者と身近になるように精進せよ』


 うん。やっぱりちゃんと書いてあるな。

 ラテスウィート王国側もちゃんと外交官を通して、この婚約破棄を了承していた。表向きは偽った身分の私をオーフェリアが案内役として傍にいる機会が増える事になるので、外聞の為に渋々了承という根回しまでしたのに、色々と徒労に終わっている気がする。


 ようやく今回、私が考えていた計画へと誘導できると思っていたが、馬鹿公子ファン君の馬鹿っぷりが常識の範囲を超えすぎていた。

 元々の計画は、私が卒業する約1年後に帝国の者を含めて、この国の貴族達を味方につけ、ティーグラッセ公国の元首ごと断罪する予定だったのだ。


 帝国の皇帝(しんゆう)にお願いまでして人を派遣してもらったのに………。

 どうして! こうなった!?


-後書き-

R18指定のお話はこの作品を書きながら、考えています。

第1案が『メリーの冒険』。第2案が『メリーの生態観察日記』


この後書きの内容は、分かる方だけに送るメッセージです。

意味の分からない方は、引き返せる方々です。この事は忘れて日常生活に戻りましょうヾ(・ω・ )

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