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ちらりと出てきた馬鹿王子の影

全4話を2万文字以内におさめる事をひとつの目標に掲げて、途中からテンポ重視で話が進みます。

分かりつらいところがあったら、ご指摘頂けると今後の為になりますのでお時間に余裕のある方はご指摘頂けると幸いです。



 っと、前回で物語が終われば良かったのだが、まだ物語は始まっていない。

 そう、タイトルの『馬鹿王子』が登場していないし、『ざまぁ』もしていない。


 そういう訳で、今までに登場した王子様はラテスウィート王国の第1王子から第3王子の3名だけだ。厳密には元皇子もいたが今は皇帝なので除外する。


 第1王子は王太子として、先日に公爵令嬢と正式に婚姻を結んだ。

 第3王子は私だ。………私は、夢のマイホームの為に王都で人材集めと政務の為の仕事で充実した日々を過ごしている。そもそも私は『逃亡王子』であって『馬鹿王子』ではない。


 そうすると残りの1人というと………。


次兄上(あにうえ)、婚姻および次期侯爵の指名おめでとうございます」


「アルベルト。いや、ビターオレ公爵。公爵の方が爵位が高くなるのだから、もう呼び捨ては出来ないな」


 私は政務の一環として、ある人物の婚姻式に王家の者として参加していた。

 まあ、隠せてないのでぶっちゃけると、ラテスウィート王国の第2王子だった次兄は侯爵家へ婿入りして臣下に下ったのだ。


 私が4年前に逃亡した事件の直後に第2王子も侯爵家のご令嬢と婚約をした。その家は嫡男がいなかったので、その時点で実質的な婿入りが決定している。

 腹黒だった次兄は、私とは別の方法で王位から逃亡する計画を前から練っていたようだ。


 その結果、父である国王の考えた優秀な者が国を治める為の王位継承争いは、短時間で決着する事となった。


 そんな訳で『馬鹿王子』は、残念ながらまだ登場はしていないのである。





「お呼びですか? 陛下」


 その日、私は父である国王の執務室に呼ばれていた。


「ここは公の場ではない。父と呼ぶことを許す」


 私や次兄がさっさと家出をしたり城から去ってしまったので、寂しい為かそんなことを口走る。

 まあ、面倒だけど、迷惑を掛けた事も事実だからサービスくらいはしよう………。成人した男に父と呼ばれて喜ぶ変態に。


「わかりました。父上」


 そう返事を返すと、父は満足そうに頷いていた。


( 母上! この子離れできない変態の教育をしっかりとして下さい!! )


 そんな感じで、私は表情には出さず対応した親子の会話を楽しんだ父が、本題を切り出してきた。


「誰よりも今の帝国を知っているお前の意見を参考にしたい」


 『逃亡王子』である私は帝国に4年いた事に加えて、新しく皇帝となった人物と親友だ。

 まあ、奴は政務で忙しくなり、私がそれを手伝わなかったからと言って国元へ送り返やがった元凶でもあるが………。まあ、帝国についてはラテスウィート王国の外交官たちよりも詳しい自信がある。


「長年同盟国として共に歩んできたティーグラッセ公国に対しての帝国の今後の対応が知りたい」


 普通に考えれば、帝国と我が王国が停戦協定、まあ実質的には同盟協定を結んだ事を考えれば、自然と元からの同盟国であるティーグラッセ公国と帝国との関係も良くなるはずだ。

 それが、そうなっていないという事で、この質問なんだろう。


「それはティーグラッセ公国の次期大公に嫁ぐ為に公国の学園に通っている妹のオーフェリアが関わっている事でしょうか?」


「さすがに優秀だな。お前が家出をしなければ…………いや、王太子任命前にお前が戻っていれば次期国王をお前に選んだだろう」


 いや、国王の座なんて欲しくないからね。私が欲しいのはマイホームであってただのお家。まあ、お屋敷になるのだけど、欲しいのはお城じゃないからね?


「父上。そんな話をされる為に呼んだのでしたら、私はまた家出しますよ?」


「すまん。帝国との停戦協定の労やそれを成し遂げた才を目にすると、どうしても惜しくなる」 


「兄上もしっかり次期国王に相応しい仕事ぶりです。特に将来に不安はないでしょう?」


「うむ。あやつの努力を認めないわけにはいかないな。それにお前が王弟として支えてくれるのであれば、問題ない。この話はもうしないようにしよう」


 もう言わないから、家出しないでね。でもちゃんと国の為に兄を支えてねっとお願いされたようだ。

 まったく面倒な父を持ったもんだ。


「………帝国の貴族の中には各国の侵略を諦めていない者たちがおります。現在の我が王国は多少の事であれば、無理をしてまで侵略される事はございませんが、公国は違ってくるでしょう」 


「うむ。やはりそうか」


「それでも、あくまで問題がなければ侵略される事はございません。………………ですが、問題が起こったという事でしょうか? 父上」


「お前の予想通りだ。まだ噂の段階だが、オーフェリアの婚約者である公子の不穏な噂がある」


 学園で公子(王子と似たような立場)とその婚約者。不穏な噂。

 ここまで揃っていれば嫌な予感しかない。


「もしかして、公子が平民の女に熱を入れているとか、そういう事ですか?」


「なんだ。知っておったのか」


 当然、自分の事で忙しかった私はそこまでは知らなかった。まあ、ここまで来ればお約束だろうからなんとなく言ってみただけだ。


「いえ、初めて知りました」


「………………なるほど、相変わらず勘が鋭いようだな」


 私の返答にさらに返事を返すまでに間があった。

 どうやら、私の評価がそのせいで勝手に上がったらしい。まあ、父が考えた内容は思いつくので、あながちその評価は間違っていないのだろう。


「ティーグラッセ公国はよほど滅びたいようですね。父上」


「うむ。やはりお前は気づいたか」


 気付くも何も…………気付かない訳がない。

 同盟国からの姫であり婚約者を蔑ろにすればどうなるのか? この城で働いている者で分からない奴がいるなら、私なら即刻解雇するだろう。


「それで帝国の動向が知りたかったのですね。もしも(・・・)の話ですが、その状況になれば帝国は必ず動くでしょう」


 元々帝国はティーグラッセ公国もラテスウィート王国も侵略を狙っていたのだ。

 その狙っていた前皇帝が亡くなって、新しく私の親友(うらぎりもの)が皇帝になった為、我が王国は安泰だがティーグラッセ公国は違う。


「そのもしも(・・・)の時は、おまえなら説得して止められるか?」


 現同盟国でティーグラッセ公国が、滅んだとしても私の代でラテスウィート王国が侵略される事はないだろうが、次代は分からない。

 だからこそ、そうなった場合でも止めるのが正解なんだとは理解しているが………。


「おそらく出来ないでしょう。表立って我が王国との友好を帝国側が謳っている以上は、我が王国が侮辱される行為に静観する理由はありません」


 現皇帝は頼めば止めてくれるとは思うが、その結果、皇帝と従う貴族間の亀裂になるのは明白だ。

 大義名分もある戦争を止めれば、弱気だと見られる。そうなると帝国が他国からの侵略を受ける可能性が高まる事にも繋がる。


 それが分かっている以上、私が頼む事はないだろう。


「そうか………」


 私の返答に父は落胆の姿勢を見せた。どうやら、現在の状況はかなり悪いようだ。

 普通はティーグラッセ公国側に抗議をすれば、それで済む話であるが………そうはいかない理由があるという事だ。


「父上が前からおっしゃっていたとおり、公国を治める大公にも問題があるという事ですか?」


「あぁ。あの大公を見て、王となるべき者の大切さが分かった。お前たちに王位継承争いをさせ、その事を学ばせ、それをより理解した者に王位を継がせるつもりだった」


 なるほど、兄弟間の仲も悪くなかった私たちが王位継承権なんてものの為に争わされそうになったのは、お隣の国のせいでしたか。

 おかげで家出する事になったのだが、それは色々と経験をする機会になったので個人的に許せるが………。


「その事とオーフェリアが苦労している事は別の話でございます」


「分かっておる。オーフェリアの元へは護衛も兼ねて学園に留学させる者を追加で送る。それに公国にも、まともな貴族もおる」


 ふむ。まともな貴族が奮起する事を期待しているわけか。

 まあ、それも無駄だろう。


「国の権力の縮図とも言える学園で、公子がそのような行いをしているようでは、挽回できる貴族はおらぬのでしょう」


 ハッキリと父に期待するのは無駄だと告げる。

 帝国でも、この国でも権力に逆らわない貴族を沢山見てきた。その経験から来る勘が、動かなければ悪い事態は変わらないと告げている。


「父上に良い案がないのでしたら、その学園に送る者に私を混ぜて貰えませんか? もちろん私の身分を隠した状態で」


「何か案があるのか? だが、お前まで何かあれば、それこそ戦争になるぞ」


 会話の流れから、父が国王としてよい案を持ち合わせていない事が分かる。

 ならばここは『逃亡王子』と呼ばれるまでの逃亡劇を見せた私が動いてみせよう。


「大丈夫です。父上。伊達に『逃亡王子』と呼ばれておりません。あの監視の厳しい帝国でさえ、私の逃亡からは逃れられませんでした」


「確かに、お前がいけばオーフェリアと共に帰ってくる事は容易だろう。分かった。お前にもしもの時にはオーフェリアを連れて帰る任を与える」


 そう父さえ認める私の逃亡能力は本物だ。

 何せ貴族屋敷の隠し通路や隠し部屋の位置が、建物の外から見れば分かるまでになっているのだ。


 しかも使われたことのあるかどうかまで見分けられる程になっているのだ。

 相手が貴族や国であるならば、逃げる逃走経路も、隠れる潜伏場所も、私には自由自在だ。


 実際に帝国では権力の争いの道具として使われそうになっていた皇族たちを救出して、親友になった現皇帝を帝位に付かせる事に成功したのだ。


 ちょっとだけ説明しておくと、皇族を道具にしようとして貴族たちは、旗頭を失って急速に力を落とし、反逆者として処分された。

 実際に誘拐した皇族は、2人だけだが、それで力の天秤が傾いて後は静観していた者たちが勝手に現皇帝について、帝国の前皇帝死亡による混乱を終結させたわけだ。


 帝国の貴族の間では『逃亡王子』ではなく『誘拐王子』と呼ばれているが、気にしてはいけない。


 ちなみに助け出した皇族2人は、説得したらあっさりと協力してくれた。

 後ろ盾として利用していた貴族たちの子供と勝手に結婚させられそうになったのだから、それも無理はない。


 そんな親から育てられた子供がまともなケースなど稀なのだ。


「かしこまりました。父上。それと………」


 父は分かっていない。私という者を。

 私は自分が欲しいモノの為に、王族という立場すらあっさり捨てられるほどの度胸があるのだ。


 そして、夢のマイホームが達成できる状況になって、次に欲しいものが出来たのだ。



「嫁探しのついでに国ごとお持ち帰りしても良いですか?」



-後書き-

R18指定の内容の話は一度書いてみたいとは思っていますよ?

エロには心理描写の表現を含めた表現力を学ぶのに最適だ!っと語っていた人の話を聞いて、思わず納得したくらいですから◝( •௰• )◜

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