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私は逃亡王子様

前作で自分が書きたかったざまぁの方向性が分かった。

それを踏まえて、再度ざまぁの練習の為に書きました。



「『兄上たちと王位継承争いをしたくないので、錬金術師になる為に旅に出ます。探さないで下さい』と書置きを残して出て行ったにも関わらず、よくぞ戻った」


 皆様、はじめまして。

 私、アルベルト。………………自転車じゃないよ?


 フルネームはアルベルト=フォン=ラテスウィート。

 王位継承に絡んだ争いから逃れる為に、家出したラテスウィート王国の第3王子。

 失踪した当時は、物凄く大騒ぎになったのを遠くまで逃亡した後に噂で聞いたのは良い思い出です。


 そんな家出という逃亡をした逃亡者な私が、国王である父の前にいるという事は………つまりは、そういう事だ。

 私はお(うち)に帰ってきた訳だ。


 お出迎えにやってきた騎士や兵たちは200名以上。内装は綺麗だが、無駄にしっかりと外からカギが掛かる馬車でお出迎えだったから、抵抗も再逃亡も許されずに連行されたわけさ。


 本当に逃亡生活というのは突然終わるものだった。まさか親友に裏切られるとは思いもよらなかったよ。


「父上、4年ぶりでございます。ご健勝で何よりでございます」


 そんな逃亡者の帰国という名の帰宅である。


「うむ。お前の活躍ぶりは聞いておる。だが、戻ったからにはこれまでと同じように行くとは思わぬ事だ。お前は王族の一員(・・・・・)なのだからな」


 『逃亡王子』なんて廃嫡にでもしてくれれば良いものを、父は私をこれ以上逃亡させる気はないようだ。

 ちなみに『逃亡王子』は私のあだ名だ。今では近隣諸国の貴族たちの間では、その名前を知らない者がいないほど有名になった。


 お城へ帰宅するまでに立ち寄った街では『逃亡王子』がようやく捕まったかという街の人たちの話し声が聞こえてくる程だから、間違いなくラテスウィート国では私は有名だろう。良い意味でも悪い意味でも。





 これだけでは分からない事が多いので、少しだけ私の事を語ろう。

 

 逃亡当時は、『錬金術師』になる予定であった。

 そして、自己紹介で分かったとおり、私は転生者だ。

 

 大学受験を控えた頃に愛車の自転車に乗って、気分転換に各地にある建物を見学する小旅行中に事故にあって亡くなったところまで覚えている。

 まあ、死因はさして問題ではない。


 私の前世の夢は『庭付きの一軒家』だった。

 それもただの一軒家ではない。自分で設計した(・・・・・・)一軒家だ。


 なぜ『錬金術師』の話で、前世の夢である『庭付きの一軒家』の話をしたかというと………………。

 この世界の建築素材を作るのに『錬金術師』になる必要があったからだ。


 子供の頃に、第3王子という立場に転生した事に気付いた私は狂喜乱舞したさ! 人生勝ち組ヒャッホーってね!!

 大きくなったら、臣下に下って適当な領地でも貰って前世の夢だった『庭付きの一軒家』もとい『庭付きお屋敷』の夢を叶えられると喜んだものだ。


 だが、現実は儚く。まずは前世の知識の建築技術がこの世界では一般的ではなかった。

 壁を作るにはレンガみたいなものは当然存在するとして、材料は土であるのは間違いないが、製法が違った!


 錬金術で作るのだ!

 まあ、耐久性などが土で作る製法のレンガよりも優れていたので、これは納得だ。


 だがそのせいで、私の理想の『庭付きお屋敷』にするには、設計を行なう段階で素材を知るところから始めなければいけなくなった訳だ。


 第3王子という事だったが、王子教育は忙しく、子供の頃は錬金術を学ぶ時間の余裕すら与えられない程だった。

 ようやく、時間に余裕が出来た頃には「錬金術など庶民のする事です! 王族の方が行なうような事ではありません!!」と注意を受けて、私が反論してその注意した侍女が解雇されそうになったりとの騒ぎが起こったりで結局まともな勉強が出来なかった。

 ちなみにその侍女は、ちゃんとクビにならずに済んだよ。私の説得と父である国王が、諌める者は貴重だと認めて私の監視役になったから。


 まあ、そんなこんなで、ようやく独学で錬金術を学び始める事が出来たのは家出をする直前だったという訳だ。


 そして、夢には何事も障害は付き物だったね。

 成人前とはいえ、王族であった私はコツコツと割り振られた政務をこなしつつ、錬金術の勉強と王都にある貴族のお屋敷を参考にする為に、各家との交流を深めていったのが不味かった。


「お前たちは全ての教育係から、それぞれが優秀であると報告が上がっている。私はお前たちの中で1番優秀な者を次期王位に就けるつもりだ。今後も精進せよ」


 そんな事をしていたから、父である国王から呼び出されてこんな事を言われたわけだ。

 第3王子である私には2人の兄がいる。王族として一般国民のような兄弟付き合いは少ないが、互いの性格が分かる程度の付き合いはあった。


 第1王子は王宮に住まう者たちからの期待を一身に受けて、その身分に恥じない程の優秀さを示している。いたって真面目な性格であるが、その分、下に立つ者の気持ちが分からない為、そこだけが心配だ。


 第2王子も最初は予備として育てられただけあって、多少性格が曲がっているが優秀さについては文句の付けようがない。その性格は分かりやすく言えば腹黒だ。そして、私と同じく王位については全く興味がない。


 第3王子である私の評価は「下の者の気持ちを理解した優しい方」「貴族たちとも友好な関係を築くほど社交性に優れる」などで、長男と次男の欠点を見事にカバーする評価だ。

 下の者の気持ちを理解するのは前世のおかげだし、貴族たちの件は理想の『庭付きお屋敷』の参考の為の交流だったので、正当な評価ではない。


 父である国王から、王位継承争いをせよとの実質的な命であっては、逆らう事は出来ない。

 だが私が欲しいのは理想の『庭付きお屋敷』であって、このただ広いだけお城ではない。お城なんて簡単に改築も出来ないからね! 私は要らないよ!!


 そんな訳で、私は逃亡したのである。書置きを残して。

 それが『逃亡王子』のあだ名が付くようになるなんて当時は思っても見なかった。





「次期王太子は第1王子のクリフォードと決まった。これでお前はもう逃亡する理由はなくなったはずだ。これで王族の一員(・・・・・)として働くのに問題はなかろう?」


 逃亡した私に対する父の説教は続いている。

 ラテスウィート国の次期国王は長男に決まっている。これは既に大々的にお披露目して、公爵令嬢の婚約者とも婚姻間近だ。………………王太子である兄は既に学園を卒業しているし、婚約破棄騒動なんてなかったよ。期待したみんな残念だったね!


「お前が逃亡の際に使った城の隠し通路は全て塞いだ。お前は今やこの国の王族でいてもらわねばならない理由も出来た。もう逃亡を許すつもりはないから覚悟せよ」

 

 私が転生して役に立った前世の記憶はこの隠し通路にまつわる事だけだ。

 王子教育で忙しかった当時の私に出来た建築関係の勉強は、お城自体を見ることだった。そして、子供の私にはお城は広く、探検するにはもってこいの場所だった。


 探検をした結果、部屋の数と広さと外から眺めた窓の数の違いなどから気付いてしまったのだ。

 隠し部屋や隠し通路がある事を。


 このお城の歴史は長かった為、父である国王も知らない隠し通路を使い、家出した訳さ。

 一応、隠し通路の存在は置手紙と一緒に見つけた箇所は全部知らせておいた為、不要な通路は塞がれてしまったのだろう。


 その後は、当時皇帝が亡くなって相続争いをしていた混乱の渦中にあった帝国に身を潜めて、実際の建築現場で独学した錬金術を使って生活した。

 そして、とあるお貴族様のお屋敷の改築工事に従事した時に『逃亡王子』にあだ名が付く事になるとある事件(・・・・・)が始まるのだが、長くなるといけないので割愛しよう。


「帝位についた新皇帝よりも、休戦協定の条件としてお前の王族としての活躍が盛り込まれた書状を預かっておる」


 そのとある事件(・・・・・)で知り合い、助けた事で親友になって、最後には私を裏切ってラテスウィート王国へ売り渡したのが帝国の新皇帝だ。


 この辺の話は本当に長くなる。聞くも涙な話だが、割愛しよう。

 親友に裏切られた私の心が今は涙でいっぱいで語れないのさ。察してくれ。


「お前の事を親友と呼ぶ新皇帝よりの言葉も預かっておる『俺だけが皇族として苦労するのは許さん。お前も王族として働け』との事だ。本当に親友思いの良い皇帝じゃないか? なあ、アルベルト?」


 元々帝国とラテスウィート王国は侵略する側と侵略される側の関係であった。だが、今は帝国は権力争いで戦力が低下して他国の侵略を受ける側に回っていた。

 そこで、そんな関係を改善する為に帝国と祖国に選ばれた生贄が、私であっただけだ………………。そこには友情もない。ただただ悲しい涙の物語しかないというわけさ。


「お前には帝国との停戦協定を纏め上げた功績を認め、公爵の位と直轄地だったビターオレの地を与える。これからは王弟としてアルベルト=フォン=ビターオレと名乗り国を支えよ」


 物理的に逃がさないだけではなく、爵位を与えて権力的にも拘束されてしまった。父はとことん私を逃がさないつもりらしい。

 だが私も『逃亡王子』と呼ばれた身。いくつか秘策がある。


「領地経営の支度金の他に、新たな屋敷を建築する為の準備金も出す」


( なんですと!? )


 思わず心の中で叫んでしまう。


「これでお前の夢が叶うのだろう? どうじゃ? この命を受けるか?」


 そんな条件を出された私の答えは1つしかないだろう。元々、当初の予定は適当な領地を貰ってマイホームの建設だったのだ。この提案は願ったり叶ったりじゃないか。


「アルベルト=フォン=ビターオレ。謹んで拝命いたします」


「うむ。正式な式典は後日となる。その間に必要となる家臣等の選別など忙しくなるが精進せよ」


 家臣選びに関わる人付き合いなど、色々と忙しくなる事が決まってしまったが、理想の『庭付きお屋敷』の為を思えば苦労のうちにも入らない。

 こうして『逃亡王子』であった私は、ビターオレ公爵として新たな人生を送る事となりました。

 

 めでたしめでたし。



-後書き-

前作が4万文字を3日で書き上げて………。

今作を1日で8千文字書いた。


どれだけ年末年始で書けなかった欲求が貯まっているのか分かりません!

欲求不満すぎて、危なくこの作品がR18指定な内容になるところでした(嘘ですけどね)◞( •௰• )◟


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