混沌の序曲
「よく防ぎましたね。魔族如きにそんな芸当が出来るとは思いませんでしたが」
ベルクラウトと名乗る天使は翼を数度はためかせ滞空したまま魔族たちを見下ろす。表情こそ穏やかなものだが、鋭い棘のような敵意は隠しきれていない。
クシルカレはファルタニアから貸し与えられた戦力が洞窟から出てきていない事を確認し、再びベルクラウトへ向き直る。
「随分な物言いですね」
「だって、あなた方は先の大戦で敗北したのですから。力も満足に扱えない未熟者なのでしょう?」
楔による封印の影響が未だに残る今、そうだとは思いつつもクシルカレは肯定しなかった。寧ろ、ベルクラウトの態度に呆れそうになっていた。
彼女が天使の実力を知らないように、目の前の天使もまた今の魔族の実力を知らないのだ。
「未熟者だけは認めましょう。まだまだ成長の余地はありますので」
「ああ言えばこう言う。姑息な方たちなのですね」
「その言葉、そっくりお返ししましょう」
ベルクラウトが首を傾げると、クシルカレは続ける。
「元を辿ればあなた方の力も魔力でしょうに。そこに清も濁も無いでしょう――」
クシルカレはすぐさま抜剣し、左右より迫った光弾を切り裂く。息を吐く間も無い攻防に彼女は驚きつつも、すぐに手を出す天使の姿にますます呆れた。
「身の程を知りなさい。下等生物の分際で、魔族が我らと同等な訳が無いでしょう!」
語気を荒げつつも、続いて攻撃を繰り出そうとする天使に対し、クシルカレは『純魔剣』を発動させる為、マトロクの刃に魔力を注ぎ込む。
使うは剣身を伸ばす『宵ノ路』と剣を鋸状にする『夜牙』の併用、蛇腹の剣を操る『月夜舞』。
それと同時に、彼女の動きに追随する電流を放ちつつスロンが天使の真横から迫った。
雷の速さで繰り出される拳打はクシルカレでも捉えきれない程に洗練されている。が、それの直撃を許すほど天使は甘くはない。
黄色い光を放つ球体状の結界がベルクラウトを中心に展開し、スロンの拳と衝突させ、その威力を物ともせず防ぎ切る。
しかしてスロンは動じず、寧ろ突き出した拳を押し出し結界にめり込ませようとしていた。
「当然の結果ですね。所詮は出来損ない――」
スロンを注視するも束の間。天使の死角より火の粉を振りまきつつ迫る存在が居た。
鬼の少年、グッシュデムである。少年は両手に構えるオシロビを赤熱させ、渾身の一撃を結界に叩き込んだ。
左右からの圧力に耐えきれなくなったか、天使を守っていた結界に亀裂が走る。それと同時にクシルカレは変化しつつあるマトロクを振り下ろしていた。
純魔石を繊維状にし編み込むことで整えた頑丈な芯を露出させ、無数の刃を展開する長剣が損傷した結界へと追い打ちをかけ、天使の結界は弾け飛ぶように瓦解する。
金棒を振り下ろした少年を受け止め、スロンはクシルカレの元へ瞬時に移動する。それと共にクシルカレも伸びた剣を小気味良い音を立てさせつつ元の姿に戻した。
天使は自らの動揺を隠すように俯きつつ、崩れた体勢を立て直し再び魔族達を見下ろした。
反撃に転じようとしたところで、遠方にて同じように構えを取る六足の異形であるカルバネラの存在に気づいたのか、互いを牽制しつつ天使は口を開いた。
「…少し訂正しましょう。出来損ないの集まりですね。質で我らに勝てないから、そうして群がるしか出来ないのです」
意地でも実力を認めたくないらしい目の前の天使にスロンは頬を膨らませる。クシルカレはとうとう呆れを隠さずため息を吐いた。
ここまでくれば最早手遅れ。ある意味立派だと評価すべきだろう。
クシルカレは南国の女王パルファセアから聞いた情報を思い出す。今の人間たち、その多くにとって魔族の評価というものは『弱虫ヒルト』なる書物に記されている通りだ。
また、天使は魔族が追い込まれるようになってから本格的に加勢したと聞く。詰まるところ、500年前、それも弱っていた魔族しか知らないのだ。
楔による封印の影響を受け、ここ最近まで表向きの活動をしてこなかった魔族ならば、その弱っていた魔族より弱いと受け取られても仕方がない。
人間も天使も、今となっては魔族の真の実力を知る由もない。また『弱虫ヒルト』が間違った情報の書物であることも。
「思い込みも過ぎると、毒になるのね…」
ベルクラウトという存在が哀れにすら思えてくる。それが今のクシルカレの天使に対する評価だった。
次の手を打とうとする前に、エルナーテが一同の前に出た。
「皆さん、ここは私に任せて下さい」
エルナーテが自らベルクラウトの相手をすると進言する。少しの不安があるものの、スロンとグッシュデムの二人は何も言わなかった。
「分かった。必ず生き延びなさい」
エルナーテの首肯と共に、クシルカレ達はベルクラウトを尻目に移動を開始する。
当然、とばかりに天使は遠ざかる魔族へと攻撃を開始する。無防備な背中へと大量に放たれた白い光弾が複数炸裂した時、天使は鼻で笑う。
が、その笑みはすぐに驚きへと歪んだ。光弾が当たった魔族の肉体が崩れると同時に、放った光弾と同じものが天使の元へ飛んできたからだ。
何が起きたのか理解出来ないらしく、天使はもう一度離脱を始めた魔族達を見る。すると、先程光弾を受けたはずの魔族達は既に姿を消していた。
更には洞窟の人気も少なくなっている事に気づいたらしい。エルナーテは表情を変えずに自身の行動が上手くいった事を悟った。
エルナーテが操る能力、『鏡魔法』には大まかに分けて2つの性質がある。
一つは相手の視界を欺き、実体と似た感触を持つ虚像を見せる『幻影』。天使が攻撃したのはエルナーテが生み出した偽物である。
もう一つは相手の攻撃を威力を引き上げて跳ね返す『反射』。エルナーテはその偽物に攻撃を跳ね返す性質を加えていた。
魔族の若造に出し抜かれた事にようやく気づいたか、天使は跳ね返された光弾を捌きつつエルナーテを視界に捉える。
「やってくれましたね、出来損ないの分際で……!」
「500年もの年月。私たちはのうのうと生きてきた訳ではありませんよ」
目元を覆っていた十字の布を解き、外す。布が鏡面に包まれて消えると同時に、彩度の異なる1対の眼が露わになった。
実力を見せつけ、叩きのめす。それが大事に育ててくれた恩師への恩返しだと考える少女の眼差しは、目前の天使を見据えていた。
「――かかってきなさい」
クシルカレは後方を確認し、鳥人と翼人の混成部隊を連れつつ、ベルクラウトを無事に撒いた事を知る。続いて魔族の仲間たちを見渡すが、誰一人として振り向く者は居なかった。
懸念事項こそ残ってはいるものの、エルナーテの実力はこの場に居る魔族の全員が知っている。それに、これから遭遇するであろう勢力との衝突に比べれば大した問題では無い。
(暴れなさいエルナーテ。貴方の好きなように)
荒野をある程度進んだところで魔族は各方角の楔へ向けて散開し進軍する。
北をスロン、西をカルバネラ、南をクシルカレ、東をグッシュデムが担当し、それぞれに班分けされた翼人達が同行する。
これといった障害も無く思うように進める事に各々が驚きつつも、目的地に近づく度に重圧が強まるのを感じ取る。
警戒を強めるのは必定と言わんばかりのそれは、この先は一筋縄では行かないと思い知らせるには十分だった。
荒野の西。カルバネラはその多脚捌きで地上を滑るように走り、借り受けた現地部隊と共に突き進む。
十数キロ程は進んだであろう頃合いに、遠目に光を放つ人工物らしき物体を確認する。カルバネラは前に破壊した楔の姿形と照らし合わせ、それが楔だと確信した。
その束の間、空中より日光に隠すようにして無数の光弾が降り注ぐ。何かしらの抵抗をしてくるだろうと踏んでいたカルバネラは即座に迎撃に転じる。
浮遊する両手の中に生成した結晶体を、光弾へと矢継ぎ早に投げ飛ばす。それはカルバネラの目論見通り、光弾に衝突する。
結晶は破裂し、すぐさまその形を六角形の板へと変えた。その板はそれぞれが近くの光弾を吸い込み、無力化させ消滅させる。
それはカルバネラに目覚めた能力、「沈黙」の変容『結晶魔法』の一つであった。
この力で生み出される結晶体は、「沈黙」にて可能であった魔素をせき止める効果を含め、魔素の吸収とその放出が可能となっている。
吸収及び放出の範囲と出力はカルバネラが調整出来る他、カルバネラ自身がその対象を選ぶ事が出来る。
予め、敵対勢力の使う魔法と用いられる魔素のみに対象を限定していたカルバネラに続く形で、現地部隊は風の刃をある一方へ向け繰り出す。
カルバネラが稼いだ僅かな時間で、敵側の魔法使いが何処に居るのかを特定していたようだった。
風の刃が弾かれる音が聞こえ、音の正体が結界だと把握したカルバネラは再び生成した結晶を結界に向け投じる。
それを察したらしく、舌打ちと共に結界は解かれ、その使用者らしき人影が空中へ向け飛び上がった。
「てめぇか。変な気配の正体は」
刈り上げた赤髪を持つ、白を主体とした制服に身を包んだ大男が空中で静止し、腕を組みつつカルバネラ達を見下ろす。
その者の後ろには、金の装飾が施された白い外套に身を包んだ背の低い者が立っている。両者共に、発光する輪を頭の上に、純白の翼を背に備えていた。
「此処に居る翼人種共々さっきので死ねばよぉ、苦しまずに逝けたのによ」
「道半ばで死ねるほど、半端に生きておらんわ」
すると、赤髪の大男の顔が不敵に歪む。
「言うねぇ? だったら示してみろよ」
その次の瞬間、大地が大きく波打ち始める。しかし、カルバネラは動じず次に使う結晶を持って構える。
少しの静寂の後、何かが迫るのを感じ取り、巨体を大きく跳躍させた。
カルバネラの居た場所から轟音と共に大地を割って飛び出したのは彼の体格を優に超える巨大な怪物。その怪物は飛び上がったカルバネラを呑み込もうと大口を開け彼へと迫っていた。
気配の正体をその目に捉えたカルバネラはその体を真下へ傾け、手にする結晶を怪物へと投げ込む。
怪物の腹が満たされる筈も、ましてやそのままでは有効打にもなり得ることのない小粒の結晶だが、怪物の体内へ入り込んだ途端、凄まじい爆裂音と共に怪物の体を爆散させた。
破片が飛び散り砂埃が舞い上がるも束の間、赤白い光と共に赤髪の男がゆっくりと降下するカルバネラへと迫り来る。
「だらぁっ!」
男の渾身の左拳が繰り出されると共に、カルバネラも掲げるように開いた右の手を握り締め、その手に結晶を纏わせ、押し潰すべくぶつけた。
両者の激しいまでに強い力が衝突する。生じる奔流に圧されつつも、カルバネラの援護をすべく現地部隊は風の魔力を再度練り上げた。
荒野の北。予め楔が複数存在する地帯だと把握していたスロンは自前の翼と雷を帯びる肉体を用いた凄まじい速度で楔へと見渡しながら進む。
スロンのみが先行する形となっているが、これはスロンが発案した作戦によるものだった。
天高く登る陽の光を反射する水晶のような物体を遠方より見つけ、急いで接近しようとするが、彼女は横から聞こえた衝突音に気づき、振り向いた。
すると、巨大な物影が迫ってきていた。スロンは雷の速度で物体を回避し、飛んできた物体が岩壁に叩きつけられた所でその物体を確認する。
そして、その物体を見て目を見開いた。
(あれって、荒野に来る時に見た……!)
『機甲兵』こと王国の鉄の怪鳥が、巨大な翼を広げた状態で岩壁にめり込んでいた。驚くのも束の間、大量の光弾がスロン目掛けて降り注ぐ。
翼を用いた軽やかな動きで光弾を躱していくが、光弾の雨は軌道上の岩を砕きながらスロンを追いかけてくる。埒が明かないと踏んだスロンは彼女の持つ武器の名を呼んだ。
「おいで、『バクサル』!」
青い宝石のような透明な球体、青玉『バクサル』は彼女の頭上に出現し、降下を始める。それを目視で捉えたスロンは、光弾を避けつつ、バクサルに近づき逆さまの体勢に変わる。
そして、落ちてくるバクサルを右足で蹴り上げた。
「暴れちゃおうか!」
バクサルは大きく打ち上がり、勢いが止まった所で空中にて静止、その直後に辺り一帯を覆うほどの青い輝きを放った。
閃光に慣れているスロンは一切の防御態勢を取らず、閃光が放たれた事でスロンを狙っていた光弾の一切が消え失せ、攻撃が中断されたのを目の当たりにする。
一時的に余裕が確保出来た事で、スロンは落ちてきたバクサルを今度は両手で受けとめ、それから目を閉じる。
それらの行動は、バクサルが閃光を放つと同時に放出、拡散した魔素の流れを確認する為であった。
魔族という種族は生まれつき、自らの根源となる魔素と密接な関係にあり、それ故か自らの力となる魔素を放出出来、魔素を探知する事が出来る。
探知可能な範囲には個体差が生じるが、ウィーキンズ姉弟のように探知に長けた者も居る。また、探知能力は外部の助力によって一時的に強化する事も可能である。
探知能力の強化は主に純魔石を用いて行われる。青玉『バクサル』もその一例であった。
突然の閃光に目が眩んでいるのか、動きが無い。スロンは静寂に溶け込むようにじっと待機する。
天使の魔法には必ず特徴がある。ヒルトの教えを元に、彼女は変化を待っていた。
そして、近くの岩場の陰の魔素が別のものに切り替わっていく瞬間を捉え、彼女はバクサルを片手に持ち替え、岩場目掛けて拳を放った。
稲妻を放ちながら迫っていく彼女の速さはまさに光速。風属性の応用である雷の力に変わっていく魔素は、光の槍のような軌道を描いた。
雷纏う拳は岩場を貫くが、手応えがまるで無い。躱されたと考える途端、彼女に襲いかかる人影を察知した。
それが得物を振り下ろすより速く、彼女は迫る得物へ振り薙いだ脚を叩き込む。金属のような音が生じ先程見た結界に阻まれ、一撃は人影を弾いて後ろに下がらせた。
「速さだけは一級品のようですね、魔族の残党」
「そういう貴方は、天使なんだね」
柄の双方より刃が伸びている、剣とも槍ともとれる独特な武器を持つ、白衣に身を包んだ青髪の青年は不敵に笑う。
例に漏れず頭上に光の輪、背中に白き翼を持ち、天使だと見抜くのは時間の問題だった。
「何を目論んでいようと、打ち砕いて差し上げます」
得物を再度振るう青年に、スロンはバクサルを蹴ってぶつける。相対する2つの力が大気を乱して迸る。
それと同時に、鉄の怪鳥は再び動き出そうとしていた。
同刻、荒野の南。クシルカレは彼女を庇うように立ち回る現地部隊と共に大量に放たれ迫る光の矢を捌いていた。
南の楔近辺には既に5体もの天使が待ち構えていた。次から次へと放たれていく光の矢は彼らが繰り出す魔法だ。
撃ち出される光の矢は時間と共に威力が上がっているらしく、少しずつ消耗を強いられる現地部隊を見て、直ちに今置かれている状況を打開する手段が必要だと彼女は考える。
(数が多いわね…各個撃破が望ましいのだけれど)
ヒルトの忠告、そして荒野に存在する楔の本数から複数体の天使が攻めてくるとは想定していたが、1箇所に此処まで密集してくると骨が折れる。
クシルカレの持つ魔力の性質上、複数を一度に相手取る事は寧ろ得意分野であるのだが、天使を相手に何処まで通用するのか些か不安が募った。
2、3体までなら彼女は淀みなく対処しようと考えただろう。5体も居るとなれば、より確実に制圧出来る手段を講じる他ない。
「あいつが魔族だね」
「報告では複数居るって聞いたけど」
「分散してるんじゃないかな。此処の楔は四方にある」
「まあ、どれだけ居ようと強かろうと」
「僕らテンブレン5兄弟に敵う相手じゃない」
早速とばかりに言動による連携を見せる、制服に身を包んだ、それぞれ比率の異なる赤と緑髪の天使の5兄弟は翼人の部隊への対処をそこそこにクシルカレを優先して攻撃する。
2人が長物を持って迫り、2人が接近する彼らへ手を翳し、もう1人が拡散する光弾をクシルカレへ放つ。
近接攻撃と補助魔法、そして遠方からの魔法攻撃で、クシルカレは対応を余儀なくされた。
クシルカレは迫る猛威に対し、おもむろに得物を構え直す。呼吸を整え、荒野の吹き流れる風を一身に感じ取る。
剣に宿すは疾き力。それを現実にするのは彼女にとって容易であった。
「――はぁっ!」
瞬間、彼女の姿は天使の目前から姿を消し、次に姿を表したのは天使の背後であった。
直後風の刃が天使に対し展開され、長物も、防御結界も、光弾も何もかもを弾いた。
結界が瓦解し、光弾が消し飛び、天使の5人は生じた突風と共に散らばるように吹き飛んだ。
「くぅっ!」
「1人でもやるね」
「何、何が起きたのさ!?」
「剣に魔法を掛けたんだ。それもとびきり強い風属性」
「お姉さんは風の剣士なんだね」
彼女が使ったのは、風の純黒剣『烏刃羽』。風属性の性質を肉体に付与し、風の刃を生み出す。
しかし、天使に大したダメージは与えられていない。天使は体勢を立て直すと、次の行動に移ろうとしたがその寸前何かを感じ取ったらしく動きを止める。
同じくクシルカレもまた動きを止め、天使の向く方向と同じ方へと目を向けていた。
翡翠色に輝く小粒の宝石をあしらえた金の首飾りを小刻みに揺らし、歩み寄る影が一つ。
白き祭服に身を包んだ金髪の女性は純白の手袋をしたその手に2つの鎚鉾を握っていた。
顔を顰める現地部隊の様子と、『聖魔の鏡』で見た光景から、荒野を襲撃した人物の1人だと確信する。
「ご機嫌よう皆さん。王国より参じました、シャルディ・メーゼルと申します」
「楽しそうなことしてんなぁ」
四方の楔の内三方にて激闘が繰り広げられると同刻、荒野の東。
大地に突き刺さる楔を背景に既に天使と交戦状態にあったグッシュデムと現地部隊は、天使共々その言葉を耳にし動きを止める。
「あいつは、此処を襲撃した…!」
現地部隊に含まれるハーピーの1人が漏らした一言から、グッシュデムは目の前の黒髪の女性が王国より来た人物なのだと把握する。
女性は口元の歪みを一層強め、片手で担いでいた黒き戦斧を風を切るように振り下ろす。
「アタシも混ぜてくれよ」
グッシュデムは迸る威圧感を肌に感じ取り、天使は眉間に皺を寄せた。




