表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/23

花冠と約束を。


セルビアが手を洗いに行ったのを見て、自分の花冠を作るのを再開した。



あと少しで完成だ、というときにイアルが話しかけてきた。



「あの、ユアン…ここなんだけど…」



少し申し訳なさそうにイアルは作りかけの花冠を差し出した。



「…イアル?これは…」



綺麗な顔をしており不器用とは想像がつかないイアルだが差し出したそれはまるで、藁で作ったただの紐。



「何度も組み替えて花が取れてしまったのね…」



思わず笑ってしまう。



「わ、笑わなくてもいいじゃないか。僕はどうもこういうのが苦手で…ユアンに教えて欲しい。」



セルビアがあんなに器用に出来ていたのに…



ついつい吹き出してしまいそうになるが必死に抑える。



「セルビアは器用だから君の助けなんかいらないのだから、ユアンはもっと僕に構うべきだって少し思ってしまったよ。」



恥ずかしそうにそういったイアルはどこが寂しそうに見えた。



「大丈夫、きっとイアルもセルビアに負けないくらいの花冠が作れるわ」



きょとん、とした顔でこちらを見るイアル



「いや…そうではなくて、あ、いや、そうでもあるのだが……」


「大丈夫よ、今は二人きりだし、あなたを一人にはしないわ。」


一人になんて、こんな大きな庭でなんて悲しすぎるもの。


それにいくら婚約者の家だからといって不安になるものね


「!!…あ、あの…コホン、1からまた作っても?」


何かを言いかけたが、違う提案をしてきたようだ。


花が取れていては悲しいので私はイアルの提案をのんだ



「ここはこうして」



丁寧に教えているはずなのだが、なかなか上手くいかない



「ここはこう…ん?こうか?」



余計なことをして混乱してしまうらしい



「イアル、こう。そうして、ここはこうよ。」



直接イアルの腕を掴み、一緒に編む。



「ゆ、ユアン…ありがとう。」



上手く出来たことが嬉しいのか、眩しいくらいの笑顔を向けてくる。



そうそう、この笑顔が素敵なのよね。



でも、やっぱ幼い…



無邪気さが残る笑顔はまだ20歳のイアンとは比べ物にならない。



「出来た!!ユアン出来た!!!」



あまりにもはしゃぐイアンが不思議で仕方ない。



こんな顔も出来るのか…



「良かった…とても綺麗に出来たわね。」



「ユアンのおかげさ!」



褒められたようで照れくさい。



「あはは…イアルはこれを誰かに差し上げるの?」


セルビアのように誰かにあげるためにここまで必死に編んだのだろう…



もしかして、セルビアのためだろうか。



「もちろん、君にだよ。ユアン…」



ふわっと頭に花冠を乗せられた。



「うん、似合うね。可愛いよ」



あーーー!!!可愛いー!!!


14歳のイアルの威力恐ろしい!!!



「え?でも、私には私が作ったものがあるわ、イアル」



きゅんときてしまった私は、嬉しいのか恥ずかしいのか分からず、作りかけの花冠をすばやく編み完成させた。



「ユアンは手先が器用なんだね。君には僕の花冠をあげたから、それを是非僕にくれないかい?」



それはナイスアイディア!!



「分かったわ、似合うといいのだけれど」



頭にかけようとイアルに近づく。



「あれ?」



頭に乗せたはずの花冠はイアルの頭をすり抜け、首周りに落ちてしまった。



「さっき慌てて作り上げたから、サイズが合わないみたいだ」


あはは、と微笑みながらイアルが言った。


ああ、可愛いイアルにときめいてしまったが故に!!!


「ごめんなさい、花冠をほしがっていたのに。」


落ち込んでしまい下を向いた。



「僕は、ユアンがくれたものなら何でも大丈夫さ。ユアンが好きなものでも何でも。」



なんて優しいのだろうか。



「私が好きなものでも?」



ふと疑問に思った事が口から出た。



「ああ、君はさっき僕が甘いものが苦手だと知っていて紅茶を頼んでくれただろう?」



バレてたか



「ええ…それが…?」



「僕は、ココアは飲めるんだ。ココアだけでなく君が好きなものなら、何でも好きになれる。」



それは克服出来たということだろうか。



でも、それは何故だろう。



それに何の意味があるのだろうか。



「僕がそれほど、君のことが好きだということだよ…たとえ、僕が苦手なものでも、君が好きなら好きになれるよ。」



こ、こわい、こわいぞ、イアル。



こんな素直なイアルを見たことがあるだろうか。



というか、ここまで話すイアルを見たことがない。



物静かなイアルはどこへやら。



「…すまない…引いてしまったようだね…」



突然、イアルはしょぼんっと耳が垂れた犬のように落ち込んだ。



「いえ!驚いただけで…とても嬉しい」



嬉しい…のか?


今のイアルはかっこいい?


いや


断然可愛い。



いかんいかん、これは、どうにかしなければ



このまま好きだと言われて間に受けていたら、可愛いと思い続けてしまっていたら、いつしか兄妹のような関係になって結婚を破棄されてしまうわ!!!



だめよ!!!あと6年待って!!!20歳のイアルに会わせて!!!



「ユアン?具合でも悪いの??」



ぐぬぬと頭を抱え悩んでいた姿が、イアルに不安を感じさせてしまったようだ。



「イアル…お願いがあるの…」



私はある提案を思いついた。



「お願い?」



何が嬉しいのかそわそわしだす、イアル



ああ、可愛い。



このままでは可愛いで終わってしまうわ。



その前に…20歳のイアルを…



「イアルが20歳になるまでの期間だけ私と会う日をなくしてほしいの。」



「…………え?…」


ぽかんと口を明け愕然としているイアル。


そうだ、セルビアについても一応浮気されないように釘を刺さねば、と冷静に考えをまとめた。



「イアルが20歳になって、まだ私のことを好きなら…好きでいてくれるなら…」



「もちろん!好きだよ!!絶対に好きだ!!」



私の言葉を遮りそう叫ぶ


絶対などと簡単に口にすべきではないのに…



「でも、なぜ??何か僕がした?理由だけでもいいから…」


特に彼が私にしたことなどないのだけれど、恋愛対象として見れるのかが不安なのである。



「理由…それは特にないわ。」



「理由がないのに、僕と会う日をなくすのかい?」



少ししつこいなと思う時に丁度セルビアが帰ってきた。



「お姉様!お飲み物ですわ!あと、サリテルが暇そうにしていたから連れてきた!」


きゃっきゃと楽しそうに戻ってきた。


サリテルは決して暇ではないのだけれど、休憩していたところを捕まったのだろう。



「サリテル、大丈夫?」


おそらく長い付き合いであるので、このくらいの短文で伝わるだろう。


記憶の中でもサリテルは最も自慢できる護衛だったし…と懐かしくなる


「はい、お嬢様。お気遣い、ありがとうございます。」


お互いに顔を合わせ笑い合う。



「お姉様ったら、イアル様がいるのに、サリテルと恋人のようですわ!」



修羅場?きゃーっとはしゃぐ彼女を見て、こいつは一体どのポジションなのだと混乱してきた。


「まあね、サリテルとは長い付き合いだもの。」



本音を言った時にサリテルが言った。


「ですが、私とお嬢様には恋人という関係はいつでも有り得ませんよね。」


と呆れたように言う


「それはどうだろうか。昔では使用人と娘が結ばれたことはよくあったそうだよ。」


不機嫌そうにイアルが口を開いた。


「君のさっきの理由、なんとなくわかった気がするよ。サリテル、君には絶対に負けないさ。」


一瞬こちらを寂しそうな笑顔で見たかと思えば、サリテルを鋭い目で睨み威嚇をしているかのようにそういった。



「僕はそろそろ帰るよ。ユアン、6年後を楽しみにしておいておくれ。僕はきっと君の期待に応えるよ。」


私の髪を人束掴みキスを落とす。



ませすぎですね。好きです。



可愛いながらも、ときめいたわ。


用意した紅茶を一気に飲み、すたすたと帰ってしまった。



「イアル様は何もしなくとも、私よりも地位も皆からの信頼もあると思いますが…」


サリテルは不思議そうに、門に歩いていくイアルの背に呟いた。


「そうね、でも、お姉様との信頼はイアル様よりも…妹の私よりもなんだか強いものを感じますわ…私も負けませんよ!サリテル!!」


「っな!…セルビアお嬢様まで…ふう…」



たわいもないような会話を交わす横で、ユアンは20歳のイアルを思い浮かべ、6年後の再会を楽しみにしていた。


「私ももっといい女に、ならなきゃいけないわね!」



どの人生よりも女性らしさを!

そして、イアルにもっと好いてもらえるように、頑張らねば!!



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ