対面
「さっきからぼーっとして、どうかした?」
イアルが問いかける。
「い、いえ大丈夫です!なんでもありません。」
は〜今、私は8歳だからイアルは14歳
同級生か〜。ん〜、何故だかときめかない。
前の人生ではイアルは私に好意を伝えてくれたけど、いつから私のことを好きだったのかしら。
まさか、ロリコン??
いやでも、好きだという気持ちは嘘で言葉にするのは簡単なのかもしれない。
いつもなら14歳の時に思い出して11年間の想いを糧とし、のめり込んで行くはずなんだけど…
まだ5年間の想いだけ…
同級生のイアルはとても魅力的だけれど…
20歳のイアルほど大人らしさはなく、不思議な印象だ。
私は見た目は8歳なのに、14歳の頃の感覚で、記憶は21歳までのものを持っているが…
これ本当にイアル?
「あの……見すぎでは?」
じっと見つめて考え込んでいたのか、イアルが痺れを切らし注意を促した。
「す、すいません!」
いえいえ、と優しく微笑むイアルは…可愛い?
ん〜かっこいいとは程遠いような。
「突然なんだけど、あの…」
イアルが口ごもっている。
珍しい光景だ。というか前の記憶の中を辿ってもこんな表情初めて見た。
「ユアンの、タイプをもし良かったら聞きたい…。」
少しハニカミながらこちらに質問を投げかける。
「タイプ?……」
20歳を超えた頃の物静かなイアルが思い浮かんだ。
「物静かな人……かな」
ついつい、私が大好きな大人なイアルを思い浮かべてしまう。
敬語も抜けていることに気付き慌てて訂正をした。
「いえいえ、大丈夫。むしろ、これからは敬語でないほうがユアンに近づけて嬉しいよ」
そんなことを言われたら普通の8歳の私は部屋へ篭るだろう。
が、しかし、今は精神年齢14、記憶年齢21
見た目は歳でも14際のイアルにはときめかない。
いや、きゅんとはするのでときめいているのか?
がしかし、20歳のイアルほどの色気はない。
「ありがとう」
ませてるな、14歳イアル。と心の中で思いつつ割かし落ち着いた声でイアルにお礼を言う。
「…!……ユアン…その…君のタイプの物静かな人って………」
「お姉様!イアル様!!」
イアルが何かを言おうとしたとき、
妹のセルビアが登場した。
この子は悪気はないんだけど少し空気が読めないのよね
天然というかバカというか…
まあ悪い子ではないんだけれど……
「セルビア…どうかしたの?」
どんな人生でも、どんなわたしでも
変わらず私のことを考え可愛いそんな妹が微笑ましく思えた。
いつかイアルに恋に落ち、取られてしまうのだけれど…
「お姉様が見えたんですもの!!あと、イアル様も!!!」
いつもさりげなくアピールを欠かさない妹のセルビアには関心する
「あら、私なんかじゃなくてイアルのために走ってきたんじゃないの〜??」
ついつい、いつもより小さい歳の妹が可愛くて最後に息絶える寸前に生まれたであろう人格で話しかけてしまった
「ま、まさか!!!!!!私はお姉さまが!!!!!!」
必死になって弁解しようとしてるセルビアがおかしくて笑いそうになっていると、イアルが口を開いた
「わあ、僕のために?嬉しいな。」
優しい微笑みでセルビアに言う。
「イアル様ったら冗談を!!!」
顔を真っ赤にさせて狼狽えている妹が何故かいつもの人生よりもうんと可愛く見える。
間違えて記憶を取り戻すのもありね。
あれ、でもまだセルビアがイアルを好きになるのは先のはず…まあ、今回は前の人生と色々違う部分があるからあまり驚きはしないわね
そんなことを考えていたらイアルの言葉が耳に入った。
「でも、僕の許嫁はユアンだから。ユアンも、許嫁ならそんな冗談だめだよ。」
一瞬笑顔が消えたような気がしたけどすぐにいつもの笑顔に戻る。
そんなにセルビアに気持ちがバレたくないのかしら。それとも私に?
大丈夫よ。今のあなたに魅力なんてないわ。
あ、若いのだけが魅力かしら。
ああ、早く20歳を迎えてイアル〜と我ながらどうかと思うような文句を心の中で呟いた。
本当にイアルを好きなのかと自分を自分で疑ってしまう。
けれど、今のはむしろ妹の気持ちを馬鹿にされたようで少しムカついてしまった。
8歳の心いと狭きものなり。
「あら、面白いですわね、イアル」
わざと、分からないふりをしながらセルビアの手をとる
「イアル、少しそこで見ていて。セルビアと花冠を作りますわ」
花冠など作る知識は入っていないだろうイアルにわざとそういい、少し距離をとった。
「え、お姉様大丈夫ですわ、どうかお二人で」
若干声が明るいのは私たちの邪魔を出来たからかしら。
悪女ね。素敵だわ、その調子よセルビア
なぜだかセルビアを応援してしまっている私に驚く。
ああ、こんなんじゃ20歳になる前に婚約を破棄されてしまうわ。
「え、あの…僕も、混ぜて…」
いつもべったりだった私とそれを剥がそうとするセルビアが側にいないため、一人になってしまったイアルが言う。
「とんでもないですわ!イアル様のお手が汚れてしまいます。」
ほら、こんなふうに、と土で汚れた手をイアルに見せるセルビア。
あらあら、セルビアは本当にイアルが好きなの?と疑うような女性らしさが欠ける行為をした。
「…っ…お…ぼ、僕も花冠くらいきっと作れるよ。手も汚さないよ。」
俺っていいかけましたね
一人になるのが嫌なようで、捨てられた子犬のような顔でこちらに訴えてくる。
最後に息絶えた時のあの必死な顔をしたイアルの面影を感じてしまい、何故だか居た堪らない気持ちになった。
「イアル。じゃあ、一緒に花冠作る?」
流石にイアルをいじめているようになってしまうのは嫌なのでこちらに誘う
「…っ!!…ユアンの隣に座っても?」
私の隣は右側にセルビアがいて左側はあいているが、せっかくならセルビアの隣に座ればいいのにと、またセルビアの、応援をしてしまった。
「お姉様の隣は私がいますわ!」
ここでも、必死に私とイアルを一緒にさせまいと意識的なのかはたまた無意識なのかはわからないけどセルビアが口を挟む。
「なっ!もう片側は空いているじゃないかっ…!」
イアル様は私の隣という言葉ではなかったのが嫌だったのか、イアルはムキになってしまって少し口調が強くなった
ふっ、子供ね。
「ご、ごめん、ユアンは物静かな人がタイプだったよね…大人しくセルビアの隣に座らせてもらうよ」
何を思ったのかそんな言葉を述べてきた。
「物静か???…サリテルみたいな?」
首をかしげ妹が問う。
「サリテル?まあ、そうね、彼も物静かな方だものね…ふふ」
ついつい優しく胸を貸してくれた彼が懐かしく口角があがってしまう。
「さあ、セルビア、素敵な花冠を作りましょうね」
隣にいるセルビアに声をかける。
サリテルの事を話で口角をあげる彼女をじっと見つめている彼に、彼女は気づかない。
「…。…ぼ、僕も素敵な花冠を作れるよう頑張るね。わからない所があったら聞いてもいいかな?」
そうだ、イアルも居たんだったと思い出し、焦っているのを必死に隠し彼女は答えた。
「もちろん」
ユアンの声に優しく微笑んだイアルの想いはまだユアンには届かない。