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次の日の朝、イアルはふと目を覚ました。



何が悪い夢を見ていたような感覚に陥った。



すると腕のあたりに重みに気づいた。



腕へ目をやるとユアンがこちらに体重をかけ眠っている。



結局朝までずっといてくれたのか。



ほっと安堵し再びユアンに目をやる。



すやすやと眠るその顔は、幼い少女そのものであるがどこか大人びて見えた。



イアルは壊れ物のように優しく、ユアンの髪に触れた。



サラッと綺麗な髪は触り心地がよく、安心感を覚える。



ユアンが隣で寝ている現実に優越感と幸福感を抱いた。



いつもユアンに目を向けると、とても愛おしいと感じるのに何故だか遠くへ行ってしまうのではないだろうかという不安が頭をよぎる。



しかし、今は不安等は一切ない



この穏やかな朝とこの幸せの一時のおかげだろうか。



そう考えていると、愛おしい人の声が聞こえた。



「…いある…?」



眩しいのか目を細めこちらを見る。



「すまない、起こしてしまったか。」



昨日の夜が嘘のように、泣いて喚いて弱っていたとは思えないイアルに対しユアンは優しく述べた。



「体調は大丈夫?痛いところはない?」



そっとイアルの頬に手を添えると、少しばかり体がびくっと揺れる。



しかし、すぐに幸せそうな顔へと変わる。



「ああ、うん。大丈夫。ユアンこそ疲れてないかい?」



ユアンの前である時とそうでない時の口調が違うということに気付かれていたのか、と思ったイアルは恥ずかしそうにはにかむ。



「ええ、私は全然大丈夫よ。元気になってよかった。」



優しくイアルに微笑むユアンと、ユアンを優しい目で見守るイアルは夫婦のよいだ。



2人だけの世界へ入り込んでいた彼らにコホンッと咳払いが聞こえ、初めてそこに誰かがいると認識した。



「お嬢様、イアル様おはようございます。」



ノックをしているのになぜ気付かないとでもいうかのような表情を浮かべ立っているのはサリテルである。



「仲がよろしいのはとても素晴らしいことだとは思いますが、周りにも配慮してください。」



イアルはサリテルを勝手にライバル視していたことから、その口調がやけに気に触った。



「僕達はまた婚約者へと戻る。悪く思わないでくれ。」



イアルの口から出た言葉に、ユアンは驚愕した。



「また婚約者へと戻れるの?」



驚愕したとともにそんな事は可能なのか。



「戻れないとしても俺がどうにかする。」



サリテルを見つめながら、ユアンの問いかけに答えた。



その態度が気に入らなかったユアンは、無理矢理イアルをユアンの顔の方向へと向けた。



「あなたが話したいのはサリテル?それとも私?あなたが何故そこまでサリテルに敵意を示しているか分からない。…あと」



戻れるのならば戻りたい。



恋愛感情などなかったはずだったが、やはり恋に落ちたことは少しばかり生まれ変わりの自分にも影響してくるようで前よりずっとイアルの言動や行動に胸が高なった。



もし戻れるとするのであれば、ユアンはつだけ気になることがあった。



「あと…なんだい?」



無理矢理顔を動かしたことに動揺したが、ユアンの顔が近くにあるという事実が嬉しいようで微笑むかのように問いかけた。



「あと……その、たまに口調や第一人称が変わるのやめてくれない?混乱するわ。」



イアルは目を見開いた。



つい嬉しさのあまり気付かないうちに、ユアンのタイプでない方を出してしまっていたらしい。



まるでサリテルのような人が好みであるユアンに、そのような人物とは真逆な自分の1面を見せてしまったことに絶望した。



今までの努力がすべて水の泡だ…



まるで世界が終わるかのような顔をして意識が遠のいていうかのような感覚に陥る。



「イアル?大丈夫??」



心配そうにイアルの顔をのぞき込むユアンはまるで天使のようだ。



「あ、ああ…」



かろうじて返事はできるが、これからユアンの口から出てくる言葉が怖くてならない。



聞く前に逃げてしまおう、でもどこに?



そう考えているうちにユアンはこういった。



「あなたが良かったらだけど、できればあなたの本当の話し方で話して欲しいの。話し方だけじゃなくて、行動やその他のこともあなたはあなたらしく、いて欲しいの。」



あなたには幻滅した、と言われると思い込んでいたイアルはその言葉を聞いて驚いた。



「え…?…自分らしく?なぜ?…ユアンはサリテルのような男性が好きで、僕はそれを演じてて…?え?…」



混乱しているイアルはうまく言葉を返せない。



「私の好きな男性?それがサリテル?何を言ってるの。」



イアルはユアンが次の言葉を述べようとして口を開けたのを見て目を塞いだ。



そんなの当たり前じゃない。そう言われるのではないかと思い、怖くなったのだ。



目を塞いだところでどうにもならないのだが、それまでに焦っていたのだ。



「私が好きな男性は、今も昔もあなた、イアルだけよ?」



思いもしなかった言葉に目を開け、ぱあっと輝いた表情を浮かべた瞬間嬉しさのあまりイアルは1粒の涙を流した。



イアルの目から1粒また1粒と次から次へと出てくる涙に、ユアンは驚きすぐさま駆け寄る。



なかなか涙が止まらないことに戸惑い。



ユアンはイアルを抱きしめた。




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