城へ。
「…様…ユアンお嬢様…」
サリテルがユアンを呼ぶ声で覚めた。
目を開けるとそこは見慣れた場所。
「もう着いたのね、帰りはあっという間だわ。」
馬車から降り、サリテルと共に玄関へ向かう。
城の様子は、旅行へ出発する前となんら変わっていることは無いけれど、なんだか空気が重い。
「ただいま。」
城の扉を開けてもらい中へ入る。
どよんとした空気の中、1人の執事と目が合った。
「ユアンお嬢様!!よくぞお戻りになられました!おかえりなさいませ」
覇気がなかったように見えたが、一瞬でそんなものは消え仕事スイッチが入ったようだ。
執事に続き、その他の人らもユアンを迎えてくれた。
「お姉様っ!!!!!!!」
遠くからセルビアの声が聞こえた。
「セルビア!」
久しぶりに会うこととなるので、2人はともに抱きしめあった。
「ああ、お姉様!帰ってきてくださったのですね!」
セルビアは、何かを期待せるかのような目でユアンを見つめる。
「ええ、久しぶりね。手紙は読ませてもらったわ。わざわざ、ありがとう。」
はいっ!とやり切ったような顔をしているセルビアはまるで犬のようだった。
「いくつか気になる点があるわ。聞いても良いかしら…。」
イアルとのことを聞き出さなくちゃ。
そう思った矢先。
「ユアンお嬢様!お帰りになられたのですね!どうか…どうかあなた様のお力をお貸しください!」
お話中申し訳ないとイアルの遣いが姿を見せた。
ずいぶんと慌てている。
イアルの城から来たのだろうか、いつからここにいたのだろうと疑問に思った。
それに随分とやつれており疲れているのをうかがえる。
「あら…ええ、私に出来ることがあるのなら。」
「イアル様はこのお屋敷のお部屋をお借りして、ユアン様の帰りをずっとお待ちしています。」
彼はなぜ私のことなど待っているのだろう、疑問が増えていくばかりだが、とりあえず顔を見せなければと思った。
イアルの部屋へと行こうとすると、セルビアに止められた。
「お姉様に会わせる気?!姿も見せやしないで、部屋で重い流行り病などにかかっていたらお姉様にうつってしまうわ!それにあの人はお姉様には」
ユアンは随分と興奮気味に話すセルビアを慌てて止めた。
「セルビア、みっともないわ。私が留守の間に何があったの?城の皆も様子が変だし、セルビア、あなたもおかしいわ。正直に話してちょうだい。」
イアルの遣いにも事情を聞くため残ってもらった。
「まず、お姉様、私は貴女様を愛しています。」
私だってと言いかけたところ、そういうのではないとセルビアに止められた。
「私は姉としてではなく、ユアンというなの方として愛しているのです。それなのに、お姉様はイアル様にぞっこんで…どうにか仲を壊そうとしたけれどダメで…お姉様がイアル様への想いが弱まったと思ったら婚約破棄までは良いものの私の旦那になれというご提案を出されたわ…」
セルビアはとんでもないことを口にしている。
実の姉であるユアンが好きだと言われ、ユアン本人は困惑していた。
それにユアンが好きすぎてイアルを除け者にしようとしたことまでは理解出来た。
「私…私…ユアンお姉様が大好きですが、イアル様の事はどちらかというと生理的に無理なのです。一瞬、お姉様の話題で盛り上がる時期もございました。ですが、私よりも優位な立場に立っているイアル様に嫉妬をしてしまう。私はどんなに大好きな貴女のいうことでもイアル様との結婚はできません。」
直訳するとこうだ。セルビアはイアルが嫌い。
そうなると私は今まで生きていた事が台無しになる。誤解をしてしまっていたということだろうか。
前の人生では2人はうまく付き合っていたと思っていたのだけれど、それも私の勘違いなのか。
「あと、私はお姉様がお出かけになって以来イアル様とは会っていません。事情が分からないのでこの遣いにお話を聞いてください。」
セルビアは自分の想いを伝えたらそれで満足のようだ。
「待って、セルビア。貴女は私の中ではずっと今まで通り妹のままよ。貴女のそれに恋愛感情が含まれているか分からないけれど、私は貴女に対して恋愛感情を抱く事は無い。昔も今も、もちろんこれからも。」
ユアンがセルビアに告げると、セルビアは切なそうな表情をつくった。
「私は家族が大好きよ。家族としてセルビアはとても自慢できる妹よ。それに妹だからこそ貴方にだけ見せる表情や感情もあるわ。私は貴女を家族として、妹として愛しているわ。私に囚われていないで、前へ進みなさい。」
言い終わると涙目ながらにセルビアは言う。
「私は今はまだ気持ちは変わりません。ただ、そう言って下さるお姉様に感謝します。どんなに想い続けても叶うものではありませんが、この想いは大切にしたいと思います。ありがとうございます。」
セルビアは涙がこぼれる寸前でこらえ、失礼しますと自室へ戻った。
どこで教育を間違えたのかしら。
んーと途方に暮れていると存在を消していたイアルの遣いのことを思い出した。
「そうだった、あなたは?イアルは今どうしているの?」
遣いは気まずそうに口を開きユアンが知っているイアルからは想像できないことだった。
「イアル様は、ユアン様がお出かけになられてから部屋から1歩も出てこないのです。」




