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人外達の歩み  作者: 葛城 大河
プロローグ
1/13

それぞれのプロローグ

小説を書くのは、これが始めてです。よろしくお願いします。

「……暇だな」



街の中心で、茶髪黒眼の青年が気怠げにそう呟いた。赤を基調とした外套を羽織り、青年は空を見あげながら続けた。



「なんか、隕石とか落ちねぇかな。それか、魔人や精霊、魔導士とかが、戦ってくれねぇかな」



なにか危ない発言を言って、彼は溜息をついた。この発言で分かった通り、彼が今居る世界は、俗に言う魔導士、魔人、精霊、幻獣などが存在するファンタジーな世界である。そもそも彼―――上田うえだマークは、この世界の住人ではない。別の世界から来た異世界人である。そんな異世界の存在である、マークが何故、この世界に居るのか? それは先程も言ったように暇だったのだ。変わる事のない日常に彼は飽きていた。それだけではなく、マークが持つ力は強大過ぎて、化け物扱いもされていた。異質にして、異端。それは間違いなく世界すら簡単に破壊し得る力だった。それ故に、マークは世界の人々から人外と恐れられ拒絶されたのだ。



だが、人外であるマークは、それを受け流していた。なんと言われようと、自分より弱い存在の戯言など気にしない。ただ、マークは本当に暇だったのだ。と、そこである事を彼は思いついた。暇なら、自ら暇を潰せる場所を探せば良い。この世界は見飽きた、なら別の世界なら如何だ? マークが持つ力の一端なら、平行世界だろうが異世界だろうが、簡単に行けるのだから。異世界に行けば、楽しい事が待っているだろう。そう思ったマークは、すぐに力を使い異世界に渡ったのだ。異世界に渡った彼は、魔人、精霊、魔導士、幻獣などが居て最初はどれも新鮮だった。のだが、その世界に住むにつれ数年で飽きてしまった。だから、彼はここでも前に自分が居た世界で言っていた言葉を呟く。



「本当に暇だな」



こうして、何時ものようにマークは、暇を持て余していた。



だが、マークはまだ知らない。この世界には、自分と同じ人外が二人居る事に……







◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇







「はぁ~あ、寝みぃな。だけど腹も減ってんだよな」



黒髪黒眼の青年が、欠伸をしながら髪を掻いてお腹の上に手を置いて言った。この青年が今、居る場所は【科学都市】と呼ばれた都市である。名前の通り、科学が発達した都市だ。その都市の中に、明らかな異質な塔の天辺に青年は居た。



「ん~腹減ったから、なんか作るか」



そう言って献立を考えながら青年―――南波裕二なんばゆうじは塔の上から離れた。怠そうにしながらも、裕二は動く。そして、行き成り話が変わるが、この自然豊かな【科学都市】で明らかに似つかわしくない、全てを黒で塗りつぶしたかのような異質な塔。これは、ここ【科学都市】に住んでいる住人が、裕二を恐れ崇め奉る為に作った物である。何故、裕二は恐れ崇められているのか? それはこの世界で、裕二は異質だったのだ。人間を超えた強靭な肉体を有し、軽く人間の倍以上を生きた正真正銘の人外。それが、南波裕二である。だが、裕二の事を恐れていない人間も、少なからず確かに存在した。その人間は、反対に崇めているのだ。それは裕二の数々の行動の所為である。



簡単に言えば、彼は娯楽主義者だ。自分の娯楽の為なら、裕二はなんでもやった。自分の持つ力を使い、簡単に人間を殺し、生き返らせたのだ。その力は【生と死を司る能力】だ。生きてる生物を死に追いやり、死んだ生物を生き返らせる。正しく神の所業のような力である。そして崇めている者達は、全員が全員裕二の娯楽の為に助かった者達だったのだ。だが、忘れてはいけない。裕二は人外だ。その神と言うべき所業の力も、裕二の幾つもある一つに過ぎない。それ程まで彼は、他と比べようのない化け物なのだ。



「おっ、来た来た。これは大物の予感だな」



そう言いながら、彼は手に持っている釣り竿を握り、笑みを浮かべた。現在、裕二は【科学都市】の南に位置する綺麗な湖の畔に来ていた。裕二がここに居る理由は、お腹が空いたので魚を食べようとして来たのだ。



「こいつ、意外に抵抗するな。だけど、俺に捕まったのが運の尽きだっ」



引っかかった魚が抵抗するが、関係なく裕二は釣り竿を思いっきり振り上げた。すると、水柱を盛大に巻き上げて魚が上空に昇った。



「よっしゃー、取ったどぉ‼ やっぱ大物だったな」



元気良く叫び、裕二は意外に満喫していた。釣り上げた魚はゆうに五メートルを超える巨大魚だった。恐らくこの湖に住んでいる主だろうか。と、そんな事を考えていると裕二の腹の虫が鳴った。



「よし、この魚を捌いて刺身で食うとするか」



そう言って彼は、ぴちぴちと跳ねている魚に近づき動かないように抑えて、刃物などを使わずに素手で鱗を剥ぎ取り、手を手刀にして魚の腹を簡単に切り裂いて行く。裕二の手刀は、業物の剣を上回る切れ味を誇っていた。もしも近くに人が居れば、口をポカンとだらしなく開けていた事だろう。



「んじゃ、いただきますっと」



捌き終えた魚を刺身にして、食べる挨拶を行い何時の間にか・・・・・・・手に持って居る箸で刺身を掴み、また何時の間にか・・・・・・・ある醤油に付けて、そのまま口に持っていき咀嚼した。魚の素材としての旨味が口内に広がり、裕二は頬を綻ばせる。



「美味いけど、量が物足りないな」



五メートルの巨大魚に、裕二は足りないと言った。普通の成人した人でも食べ切れない量のだが、裕二にとっては少な過ぎた。刺身を完食して裕二は食後の挨拶をする。



「暇になったな。なんか面白い事でも、起きねぇかな。それでこそ、別世界に行くみた……ん?」



快晴の青空を眺めながら、裕二は言葉を紡いで行くと、ふと止まった。別世界? その言葉に首を傾げそしてハッとなって行き良い良く立ち上がった。



「そうだっ‼ 暇なら、別の世界に行けば良いじゃねぇか。なんで思いつかなかったんだ、俺は」



盲点だったと言わんばかりに、彼は頭を抱えて叫んだ。別世界に行く。他人が聞けば、荒唐無稽な話だが、裕二がやると成れば話が変わってくる。この人外は、別世界に行くと言う荒唐無稽な事を軽くやってのけるのだ。そうと決まれば、即断即決と裕二は、目の前の空間に右手を突き出した。すると、眼前に一本の線が入った。そして、徐々に上から線が裂けて行き広がる。次元の裂け目を作り出した。中は薄暗く、何処に繋がっているのか分からない。



この裂け目の中に入れば、世界を渡る事が可能になった。人が見てれば唖然とする光景である。それに彼は、新たな世界に思いを馳せて、口角を吊り上げ一歩踏み出した。裂け目の中に入る前に、裕二は立ち止まり後ろを振り返る。なんだかんだで、この世界には、世話になったなと思い出した。だからこそ、彼は最後の別れを告げた。



「……じゃあな」



裂け目の中に、足を踏み入れて入って行った。次元の裂け目は、裕二が入って行って役目を終えたかのように上から閉じていった。こうして、この世界から一人の人外が消えた。



そして別の世界で、裕二は二人の人外に出会う事になる。







◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇







春。別れと出会いが訪れる季節。学園のチャイムが鳴り響き、体育館から、制服を着た生徒達が出て来る。そんな中、一人の黒髪黒眼の青年が、背を伸ばした。



「やっと終わったな」



今日は青年の卒業式だった。少し長引いた卒業式に、彼はやっと終わった事に嬉しそうにした。学園の校門前を歩きながら、卒業証書が入った筒を、肩に担いでこれからの事を考える。



「卒業したが、如何すっかな」



進路など決まってない。寧ろ彼は、就職や進学などに興味の欠片が全然なかった。変わり映えしない日常に彼は、飽きていた。来る日も来る日も、同じ毎日。それが如何しようもなく、つまらない。それは、ひとえに彼が強大な力を持ってた所為でもあった。この世界では、常軌を逸した力。世界から外れた人外の力。その力を持ってるが故に、彼は毎日がつまらなかった。



「お~い‼ 陸っ」



そんな時、彼の背後から声がかかった。後ろを振り向くと、赤茶の髪に黒眼の青年、兵藤雅也ひょうどうまさやが居た。それに彼―――奈良陸ならりくは、振り向いた状態で聞いた。



「……なんだ?」


「陸、今日暇か」


「なんでそんな事を聞くんだよ」


「いや、今日は俺達の卒業式だろ? だからさ、最後は皆でパァ~と、カラオケやボーリングで遊ぼうぜってなってよ‼ 陸も来ないか」



そこで陸は考えた。はっきり言って、クラスに知り合いは居なく、この目の前の男もただ席が隣同士だと言うだけで、何故か名前呼びをしているだけなのだ。高校生活は、これと言った思い出もなく、非常につまらない毎日だった。それに今更、カラオケやボーリング程度じゃ楽しくもない。



「行かねぇ」


「えぇ、来ないのかよ!?」


「あぁ。そう言う事だから」



そこまでクラスメイトと仲が良い訳ではない。故に彼は、断る事にした。雅也は断られるとは思っていなかったのか驚いた。陸としては、何故、驚いたのか分からない。雅也の事は友達とは思っておらず、ただの隣同士だと思っていた。雅也の場合、思っているらしいが。諦めず誘い続ける雅也は、頑なに断る陸に諦める事にした。



「はぁ、分かったよ陸。じゃあここでお別れだな。何処かで、会おうぜっ‼」


「じゃあな」



一方的に言葉を紡いだ雅也は、正門の前で待っているクラス全員の元に走って行った。陸はそれを眺める。そして、再び歩き出した。正門から出て、河原を通る。周りには、そんなに人が居らず、静けさがあった。陸は、これから如何するかを、未だに考えていた。漫画の展開では、暇を持て余した主人公が、なにかの事件に巻き込まれる物を読んだ事がある。俺も巻き込まれたいな、と呟く。それか異世界に召喚されるかだ。



「ん? 異世界。……その手があったか‼」



名案が浮かんだと言わんばかりに彼は叫んだ。数人の男女が、行き成り叫んだ陸に変な眼で見るが、そんなのは気にしない。両眼をキラキラさせて、彼は興奮する。異世界。そこは、どんな所だろう。考えれば、考えるだけワクワクが止まらない。すると、陸の周りの空間が突如、揺らいだ。キィィィィィィィッ‼ と耳鳴り音を鳴らし、空間が捻じ曲がっていき遂にはバキバキと空間が砕けた・・・・・・。砕けた空間内は、暗く異空間が広がっていた。それに陸は、なんの抵抗もなく足を踏み入れた。



そして陸の通った砕けた空間は、ひとりでに元に戻っていく。こうして、一人の人外が消える。異世界で陸は、自分と同じ人外に出会う事になる。
















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