決意
こんばんは、すらいむ[N]です。
第八話目です。
どうぞ。
真っ暗だ。何度も経験したことのあるふわふわとした空間。上も下も右も左もわからない。
そうだ、俺は死んだんだ。
あの怪物に、俺は言葉通り手も足も出なかった。
そうか、これで俺の人生も終わりか。
呆気ない最期だったな、数多くの人間を惨殺した罪か。悪の末路は大抵そんなもんだ。
このままこの空間に沈めば俺の罪は流れるのか。それもいいな、と思ってしまう。
『このまま死にたいか。』
どこからか深く、重い声が聞こえる。
『本当にこのまま死んでも良いのか、悔いはないのか?』
清廉された透き通る声だ。
「お前は誰だ。」
『ははは、お前は賢い。心のどこかでは私が誰かわかっているのではないか?』
「精霊か・・・」
『そうだ。まぁお前が以前見たのと同じだ。』
「そんなはずはない、アイツは俺が倒したはずだ。」
『面白いことを言うのだな、お前は。人間をひとつの種族に言うように、我ら精霊もひとつの種族なのだ。ひとつの世界に一人しかいないのでお前が見た精霊と会ったことはないがな。』
「そうか、お前はこの世界の守り手か。」
『そうだ。我にはこの世界を平和に導く役割がある。お前が下の世界と同じようにするのならここで消滅させる。』
「なぜ俺が下の世界を破滅させたって知ってるんだ?」
『それぐらいはわかるさ。世界がひとつ消えるんだ、誰がそうしたのかは知っておいた方がいいだろう。』
「でもあの精霊は俺を殺せなかったぞ?お前は俺を殺せるのか?」
『ふふふ、お前は口が悪いな。少し慎め。そしてあの程度の怪物に勝てないようでは我に勝てるはずがないだろう。』
「なに!?あの程度だと!」
『ふむ、この世界であれは中の下というところか。熟練の戦士なら簡単に倒してしまうだろう。』
「ふざけるな!俺は仮にも勇者だぞ、戦士なんかに遅れをとるはずが・・・」
そこから俺は言葉がでなかった。
『お前は勇者の力に頼りすぎではないのか?今までどんな世界で生きてきたのか詳しく知らないが、[勇者]とは生まれながらになるものではない。勇気ある偉業を達成して初めて[勇者]と呼ばれるのだ。血を引いているだけでは勇者とは呼ばない。』
「くっ・・・」
俺は今まで勇者という肩書きにすがって生きてきたんだなと初めて気付く。勇者の血を引いているだけで。
『確かにお前の魔法の中には勇者にしか使えないものがある。だがどうだ、怪物との戦いでそれが使えたか?伝説の剣や盾は役に立ったか?』
そうだ。俺は剣や盾を使う余裕さえなかった。ましてや魔力を多く消費する雷撃の呪文など唱えられるはずがなかった。
『お前はまだまだ未熟だ。今のままではどの道この世界では生きていけなかっただろう。』
「もういいんだ。俺は死んだ。俺の人生は終わったんだ。」
『それで本当にいいのか?悔しくはないのか、もう一度この世界で生きてみたいと思わないのか?』
「思わないはずがない。だが俺は人を殺しすぎた。この罪はそう簡単に消えるものではないんだ。だから俺は死んで罪を償おうと思う。」
『情けない、逃げるのか?現在、この世界にも魔王の脅威が迫っている。倒しに行くのなら私が生き返らせてやるが、どうする。』
「行きたいし、もっと生きたい!俺はもっと強くなりたいし、もっとこの世界を知りたい!!」
『それならば生き返らせよう。』
「だけど!俺の罪はどうすればいい、俺の中にある魔物の力はどうすればいい?」
『背負えばいいのだ。誰でも罪は持っている。だが、皆前を向いて生きているのだ。魔物の力に頼らねばならないときも来るだろう。必要な時には使え、だが飲まれるな。強い意思を常に心に持っておけ。さすればどうということはない。』
「・・・わかった。」
『お前はこれからもっと強くなる。お前の成長が楽しみだ。お前ならばあの方にも・・・いや、何でもない。・・・では行ってこい』
精霊の声が空間に響くと凄い早さで体が上がっていく。意識が遠のく。
ガバッ!
「迷える子羊よ、再び旅に戻るのです。」
そこは教会だった。俺は力尽きたあと、教会へ運ばれ安置されていたところを復活したらしい。しかも傷ひとつ消えてだ。
教会に戻るのか。俺のこれからの旅ではこうなるらしい。
教会を出るとそこは俺が向かおうとしていた村だった。見上げると小高い丘と大きな森が見える。
俺は罪を背負い、魔物の力を受け入れ、冒険すると決めた。
未知の世界で俺の新しい旅が今始まる。
いかがでしたか?
ではまた。




