新世界にて
こんにちは、すらいむ[N]です。
今週から冬休みということもあって、余裕をもって書けそうです。
それでは新世界第一話をどうぞ。
ここはどこだろうか?
城・・・なのだろう。だがこの形の城は見たことがない。特徴のある城壁に高い見張り塔、城下には少ないものの人々が生活している。
この国は治安が良いんだな。
俺は思う。豊かではないが、貧しい人の姿が見えない。笑顔ばかりではないが、泣き顔がない。
俺の母国とは違う。羨ましいな。
俺の住んでいた世界とは大違いだ。
こんな世界に居たかった。
もやが晴れるように頭が冴えていく。これは夢か。
もう目が覚める・・・、まだ少し、もう少しこの国を見ていたい・・・
さ 鳥の声が聞こえる。
体が重い。俺は横になったまま目を開けた。空は青い。視界の端に木の枝の先端が映る。どうやら森の中のようだ。
ゆっくりと体を起こす。回りを見渡すと一面木で、森の開けた場所にポツンと俺だけがいる。
所持品は剣と盾、服と鎧のみだ。金はおろか、食べ物すらない。
『この上に世界にお前の故郷がある』
ふと精霊の言葉を思い出す。あの精霊は「精霊」と呼ぶには程遠い存在だった。
だが精霊の残した言葉が一番確かだろう。
俺はとりあえずこの森を抜けることにした。
10分も歩くと、森を抜けることができた。俺は小高い丘に登り、周りを見渡した。
どこまでも広がる大地、高く険しそうな山々。自然が溢れ、世界が元気そうだ。
そしてどうやらこの森は高所にあるようで、この森の麓に小さな村が見えた。
旅人たるもの村を見つければそこへ行くものだ。だがそれよりも、今は食料が目当てだ。俺は麓に見える村へと行くことに決めた。
村へと下る道は緩やかな山道だった。
山道は一本道で歩きやすく、迷うこともなく俺は旅なれた足で進んでいく。
人間はいるのか、魔物はいるのか、新天地には、なにもわからない不安という名の恐怖がある。
以前の世界は長年住んでいたからかそれはなかった。
俺の故郷・・・ここは俺の生まれた場所なのだろうか。
それなら何か感じるはずだ。少しばかりの緊張を張りながら歩く。
ふと分かれ道に出た。
村の道はわかる。左だ。村へ行くのなら左へいけば良い。だがわかるだろうか。冒険者なら未知の場所を探検したいという欲求が、この先に何があるのかという探求心がある。そして、俺の腰と背にあるのは最強と云われてきた剣と盾だ。
俺は自信と心に動かされ、明らかに怪しい雰囲気を漂わせている右の道へと歩みを進める。
進めば進むほど暗く、道も険しくなる。
分かれ道から歩いて数十分、第六感が危険だと告げたときには既に後ろに道はなかった。
「グルルルルル!ガァァアァア!!!」
地響きとも思えるような雄叫びが俺の耳を突き抜ける。
とっさに剣と盾を構え、周りを見渡す。
グオッ!
右から力強い風を感じ俺は左へと転がった。
ズドォン!
さっきまで俺の立っていた地面には、木の幹ほどもある拳の後が深々とついている。
姿は見えないが、かなり大きな怪物だ。
俺は再び剣と盾を構え直す。
左、右、右、左、見えない拳が襲ってくる。風圧の方が早いおかげで間一髪で避けることができた。
この怪物は大きいどころか動きが早い。
反撃どころか次の攻撃を避けられるかどうかもわからない。
どうすれば良いのか、ゆっくり考える暇すらない。
前!
一歩後退する。
ドッ!
木の幹に背中をぶつける。これでは避けることがっ・・・!
バキッ、ズザァァァ!
「ぐっ・・・!」
木が折れ、数メートル飛んで地面に転がる。
立ち上がれない、息をするのも難しい。
「ゴガァァァァアァァア!」
先程より大きい雄叫びが聞こえる。
そして、はるか上から来る風を感じたところで俺の意識は途絶えた。
剣も、盾も、使う暇すらなかった。
俺は最後に自分の不甲斐なさを、悔いた。
いかがでしたか?
それではまた!




